TRAIN SUITE 四季島を支える想い

Vol.282018/12/20

世嬉の一酒造 代表取締役社長 佐藤 航の想い

歴史的建造物の酒蔵で、つきたてのもちとお酒、そしてかがり火で
一関のおもてなしの心をお伝えしたい

「TRAIN SUITE 四季島」冬の2泊3日のコースで、2日目の最後に向かうのは岩手県、一関にある「世嬉の一(せきのいち)酒造」。大正7年創業のこの酒蔵の敷地には、東日本大震災も耐え抜いた土蔵や石蔵などの歴史的建築物が現在も残る。
もちをつき、ふるまう、この土地の最高のもてなしとともに供されるのは、奥羽山脈の地下水と地元の米を使った日本酒とクラフトビール。蔵人の心づくしのもてなしが、冬の旅人の心を温める。

武家社会から生まれた一関のもち文化

一関は江戸時代、仙台藩のお膝元だった頃から交通の要所として栄えた町です。海からも山からも近く、三陸の上質な食材が集まります。
仙台藩有数の米どころでもあった一関ですが、藩の命で、毎月一日と十五日にもちをつき、神前に供えていたのが一関のもち食文化の始まりです。
つきたての生もちを、さまざまな味つけでいただくのが一関のもちの食べ方ですが、これはよい米は藩に献上するため、庶民が食べるのは雑穀で、そのまま食べると味が悪いから、と始まった文化です。
さらに、武士文化から生まれたのが「もち本膳」。もとは武士の儀礼食で、専用の塗りの食器を使い、食べ方にも作法があります。私たち一関の人間にとって、もちはなくてはならないもの。今でも祝いのとき、法事のとき、人をもてなすときにはもちをつきます。もちは、一関では最高のおもてなしなのです。

歴史的建造物の中で夜のひと時を過ごす愉しさ

  • 「TRAIN SUITE 四季島」のお客さまへのおもてなしも、まずはもちつきから始まります。
    お客さまが到着されるのは夜ですから、かがり火を焚き、室内も十分温めて、皆さまをお迎えしています。私ども世嬉の一酒造は大正7年創業。もちをつく石蔵は以前、精米所として使っていた場所です。この建物をはじめ、お酒の試飲をしていただく「café徳蔵」など、当店の蔵はすべて東京駅を設計した辰野金吾の弟子の一人、小原友輔の設計です。
  • 一関は昔から吟醸酒造りがうまい杜氏(とうじ)が多いといわれた土地です。ぜひ召し上がっていただきたいのが原酒の生酒。加熱殺菌も加水調整もしていない原酒の馥郁(ふくいく)とした香りと味わいは、酒蔵ならではのものではないでしょうか。また地元産の山椒を使った「ジャパニーズスパイスエール山椒」など、ちょっと珍しいクラフトビールもご用意しております。

一夜限りで終わらない人と人との繋がりが喜びに

「TRAIN SUITE 四季島」のお客さまがここで過ごされるのは1時間半ほどの短い時間ですが、寒い中でのかがり火でのおもてなしには皆さまほっとされるようで、「寒い中遅くまで待っていてくれてありがとう」など温かい言葉をいただくこともあります。旅が終わった後に訪ねてくださる方もいらっしゃるほか、催事などで各地を訪ねた際に「『TRAIN SUITE 四季島』で行ったよ」と声をかけていただくことも増えました。一度限りではなく、お客さまとのご縁が続いていくのは、私たちにとっては本当に嬉しいことです。

さらに遠くからのお客さまをお迎えするために

今後は海外のお客さまも大勢いらっしゃるということで、売店では消費税と酒税の免税に対応したレジを導入しました。
もちは食べたことがないという方もいらっしゃると思いますが、そんなお客さまにもぜひ、一関の豊かな自然やおもてなしの文化を楽しんでいただきたい、とスタッフ一同、期待に胸を膨らませて、準備をしているところです。
冬の一関は雪景色も見どころです。是非、この地の風土と歴史に結びついたもちと酒をゆったりと味わい、日本の冬の旅ならではの思い出にしていただけたらと願っております。
世嬉の一酒造 代表取締役社長 佐藤 航 [ 文=野村麻里 撮影=的野弘路 ]