「TRAIN SUITE 四季島」を支える想い

Vol.92017/05/18

「TRAIN SUITE 四季島」施設・設計施工 北山 大輔の想い

上野駅は、これから幕を開ける、旅の始まりの舞台。
日常から非日常へのエレガントな序章を奏でる――。

出発と到着の舞台「PROLOGUE 四季島」

「TRAIN SUITE 四季島」の出発と到着の舞台となる上野駅のラウンジ「PROLOGUE 四季島」。
東日本への玄関口である、上野駅地平ホームの一角に設けられたこの場所は、お客さまにとって、新たな旅立ちへの期待と、旅の余韻を振り返るための特別な空間となる。

ブラックを基調としたシックな外観。
エントランスに灯る優しい灯り。
そして、その先に広がる、シックでエレガントなラウンジ。

その「特別な場所」の設計施工を担当した、JR東日本東京支社施設部の北山大輔が、その舞台づくりを語る――。

ラウンジ内のインテリアは、まさしく「TRAIN SUITE 四季島」の世界

「PROLOGUE 四季島」の外観や内装デザインは、車両デザインをされた、KEN OKUYAMA DESIGN代表の奥山清行さんです。
私が担当したのは、奥山さんがイメージする世界を実現していくための様々な調整や、実際の現場の設計施工・管理の仕事でした。

ラウンジ内のインテリアは、まさしく「TRAIN SUITE 四季島」の世界です。
たとえば壁面は、車窓から見える、太平洋や日本海をイメージした、白い波模様。日本建築らしい、切妻(きりづま)屋根型の折り上げ天井。さらに、壁面には、貴重な神代(じんだい)杉を使った組子(くみこ)細工の装飾。椅子やテーブルなどの調度品もKEN OKUYAMA DESIGNの特注品です。
床には大理石を使い、今までの鉄道駅内にはあり得なかった、おもわず息を呑むような、美しくエレガントな場所に仕上がりました。

「新たな旅立ちの13.5番線」

「TRAIN SUITE 四季島」のプロジェクトには、社内でも比較的早い段階から関わってきました。
当初は、列車の出発する駅がまだ決まっていない状況でした。それが上野駅に決まり、そしてお客さまをお迎えするラウンジをその傍らに作るということ、さらにかつて荷物用のホームだった場所を変えて、専用ホームも設けられることになったのです。
 その専用ホームは、13番線と14番線の間にあるからということで、現場では便宜的に、13.5番線と呼んでいました。みんなが親しみを込めて呼んでいたら、専用ホームの正式名称が「新たな旅立ちの13.5番線」になりました。
改めて、「13・5番線」って、なかなかいいネーミングですね(笑)
「PROLOGUE 四季島」は、通常は宇都宮線や高崎線が発着する13番線ホームに面しています。
多くのお客さまが利用されている、ごく普通の場所。その日常性のなかに、非日常のものを作らなければならないのが、一番難しいところでした。
ふだんは、目立たないように、その存在を消しているのですが、「TRAIN SUITE 四季島」の運行がある時だけ、「PROLOGUE 四季島」と専用ホームは、柔らかな照明に照らし出されて、その姿を浮かびあがらせる……。そんな演出になっています。

「PROLOGUE 四季島」の真上には列車が発着するホームがあるので、ラウンジには、それを支える太い柱が並んでいます。そうした条件下で、どのような設計プランにすればいいのか、大変苦心しました。 ただ、その立ち並ぶ柱のおかげで、かえってお客さまの席の距離感がほどよい、居心地のよい空間ができたと思います。 また、時折、天井からはガタンゴトンという電車の走行音もしますが、これも鉄道駅の中にあるラウンジの特徴として旅情をかき立てる演出になっているのではないでしょうか。
「PROLOGUE 四季島」は、心をこめてお客さまをお見送りし、そしてお出迎えする、大切な場所です。
かけがえのない旅の思い出の場所のひとつにしていただければと願っています。
TRAIN SUITE 四季島
施設・設計施工
北山 大輔
[ 写真=名取和久、文=鈴木 伸子 ]