2024/7/25

Vol.44
オリジナルステーショナリーボックス
~時を経ても変わらない魅力~

「TRAIN SUITE 四季島」客室の棚の中には、オリジナルステーショナリーボックスがございます。上蓋には上品で優美な印象を与えてくれる甲州印伝が施されており、近くで見ると「卍」を菱形にゆがめた文様が目に留まります。この文様は紗綾形(さやがた)と呼ばれ、文字同士を迷路のように繋ぎ、字がどこまでも途切れず繋がっていることから、かつては家の繁栄や長寿を願う不断長久の縁起文様として扱われていたそうです。一見するとシンプルに感じられるボックス表面の文様は、見る角度によって異なる美しさを感じさせてくれます。棚の中にひっそりと置かれた、しかし存在感のあるステーショナリーボックスは、甲州印伝の奥深い歴史や魅力が詰まった逸品です。
甲州印伝は、甲州(山梨)で江戸時代からはじまり400年余りの伝統を誇る伝統工芸品です。柔らかな感触が人肌に最も近いとされる鹿革をなめして染色を施し漆で模様を描いた品々は、長い間地域で愛され続けてきました。軽く丈夫なことから、長く生活の道具や武具などに使用されており、戦国武将の武田信玄も武具の装飾に使用をしていました。伝統を受け継ぐだけでなく技を磨き発展を続け、現代においても多くの人々が気軽に使えるバッグや財布などの素材としても活用されています。

  • 運行開始から変わらない客室備品の一つであるステーショナリーボックス。私たちは、今後も手入れをしながら丁寧に設えお客さまにご紹介していくことで、職人たちの想いを未来へと繋ぎ、さらには日本の伝統工芸を守っていくことの一助になりたいと願っています。
  • 「TRAIN SUITE 四季島」の旅は、その地へ訪れるだけでなく、車内には、このステーショナリーボックスのように一つひとつが手作りされた、東日本各地の風土と歴史を映し出す逸品を数多く設えております。旅の中で、車内の備品からも“深遊 探訪”をお感じいただければ幸いです。
運行サポートグループ 今津 千裕