カーボンニュートラル
環境パフォーマンスデータの保証対象について
当ウェブサイトに掲載している環境パフォーマンスデータは、その信頼性を担保するため、KPMGあずさサステナビリティ(株)による限定的保証を受けています。なお、保証対象となっている情報を明確にするため、保証対象とした情報については「☆」を付しています。
CO2排出量削減目標とロードマップ
JR東日本グループは、2020年に環境長期目標「ゼロカーボン・チャレンジ2050」を策定し、2050年度のカーボンニュートラルの実現に向けた取組みを進めています。これに加え、2035年度にCO2排出量を2013年度比で60%削減、2040年度には73%削減という中間目標を2025年6月に新たに設定しました。
2024年度のCO2排出量は218万トンとなりました。LED化・空調設備の高効率化や、オフサイト型コーポレートPPA導入により、前年度と比較して4%減少しました。また、再生可能エネルギー開発については、福島県の「かわうち鬼太郎山風力発電所」が2025年2月に営業運転を開始しました(年間約93,400MWh/年)。
「Science Based Targets(SBT)」については、2023年8月に取得に向けてコミットし、具体的な削減目標を検討しましたが、この間の詳細な調査により当社グループの事業にかかわるサプライヤーは非常に広範囲に及ぶことが判明したこと等から、2025年6月に申請を見合わせることとしました。
2030年度のカーボンハーフ及び新たに設定した削減目標を確実に達成するとともに、2050年度までの「実質ゼロ」の実現に向けて「ゼロカーボン・チャレンジ2050」にグループの総力を挙げて取り組んでいます。
JR東日本グループの削減目標

ロードマップ

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JR東日本グループ全体のCO2排出量とエネルギー使用量
CO2排出量

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集計範囲について
エネルギー使用量及びCO2排出量の集計範囲は、原則としてJR東日本単体及び国内連結子会社としています。
算出方法について
CO2排出量については、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)に基づき算定していますが、外部から供給される電力に起因するCO2排出量は、鉄道輸送に用いる電力分も含めて電力会社別の基礎排出係数(非化石電源調整済)により算定しています。
エネルギー使用量

- ※1電力:インプットされた電力については、自営発電所で発電し、当社内で使用した電力と、電力会社から購入している電力の双方を含んでいます。なお、電力の詳細については、以下のエネルギーフローマップに記載しています。
- ※2燃料:天然ガス、その他燃料について、自営火力発電所で発電用に使用している燃料は含まれていません。
- ※3外部から供給している電力に起因するCO2排出量は、電力会社別の基礎排出係数(非化石電源調整済)により算定しています。
エネルギーフローマップ☆
当社における、エネルギーのインプットから消費までの流れを示しています。自営の発電所と電力会社から供給された電力は、電車の走行や駅・オフィスの照明・空調に使用しています。また、軽油や灯油等を気動車の走行や駅・オフィスの空調に使用しています。

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集計範囲について
エネルギー使用量及びCO2排出量の集計範囲は、原則としてJR東日本単体としていますが、当社が駅業務等を委託している会社の当該業務に係るエネルギー使用量も集計範囲に含めています。一方、グループ会社等が運営する駅構内店舗等のエネルギー使用量は、集計範囲に含めていません。JR東日本の事業全体に係るエネルギー使用量は、エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)の輸送及び工場等の集計範囲と整合させています。
算出方法について
エネルギー使用量は、「省エネ法」に定める方法で算定しています。また、外部から供給している電力に起因するCO2排出量は電力会社別の調整後排出係数により算定しています。なお、電力の熱量換算係数は3.6MJ/kWhを使用しております。
JR東日本グループ全体のサプライチェーン排出量
GHGプロトコル基準では、「ゼロカーボン・チャレンジ2050」と比べて電力の他社供給分や、JR東日本グループの事業活動に関連した他社の排出分(スコープ3)が新たに含まれるなど、求められるCO2削減量がさらに増加します。また、JR東日本グループは火力発電所を有していることから、スコープ1の割合が高いことが特徴です。さらに、自前のエネルギーネットワークをはじめとした鉄道アセットを多数保有していることから、スコープ3排出量の中でカテゴリ2排出量が最も大きな割合を占めています。
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項目 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | 算出基準 |
---|---|---|---|---|
スコープ1排出量 | 152 |
161 |
161☆ |
気動車の運転や自営火力発電所の稼働を含めグループが使用したすべての燃料の燃焼に伴い直接的に排出される温室効果ガス(GHG)排出量。エネルギー起源GHG排出量が対象。 |
スコープ2排出量 | 127 |
119 |
113☆ |
電力会社等から購入している電力・熱等の使用に伴い、間接的に排出されるGHG排出量。 |
スコープ3排出量 | 316 |
316 |
290 |
事業活動に関連して他社から排出されるGHG排出量。端数処理の関係で、各カテゴリの合計と一致しない場合がある。 |
カテゴリ1 購入した製品・サービス | 72 |
59 |
43 |
グループ外から購入した製品・サービスの購入金額に排出原単位(※2)を乗じて算定。 |
カテゴリ2 資本財 | 94 |
114 |
95 |
グループ外取引による設備投資金額に排出原単位(※2)を乗じて算定。 |
カテゴリ3 スコープ1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 | 53 |
55 |
54 |
購入した燃料、電力及び熱の使用量にエネルギー種別の使用量当たりの排出原単位(※2)を乗じて算定。 |
カテゴリ4 輸送、配送(上流) | 9 |
7 |
4 |
上流の物流については製品・サービスの購入金額に排出原単位(※3)を乗じて算定。自社が負担する下流の物流については物流コストに排出原単位(※4)を乗じて算定。 |
カテゴリ5 事業から出る廃棄物 | 26 |
17 |
20 |
廃棄物処理量・リサイクル量・廃棄処理金額に排出原単位(※5)を乗じて算定。排水については排水量・排水処理金額に排出原単位(※6)を乗じて算定。 |
カテゴリ6 出張 | 1 |
1 |
1 |
常時使用する従業員数に排出原単位(※2)を乗じて算定。 |
カテゴリ7 雇用者の通勤 | 3 |
3 |
3 |
従業員営業日数に排出原単位(※2)を乗じて算定。 |
カテゴリ8 リース資産(上流) | <1 |
<1 |
<1 |
賃借する資産のエネルギー使用量に排出係数(※7)を乗じて算定。 |
カテゴリ9 輸送、配送(下流) | <1 |
<1 |
<1 |
カーボンフットプリント算定・表示試行事業「広範囲PCR(エネルギー非使用型製品)」における製品等の流通(輸送・販売)シナリオを適用し、製品出荷量に排出原単位(※2)を乗じて算定。 |
カテゴリ10 販売した製品の加工 | 1 |
1 |
1 |
販売した中間製品の売上高に対し、自社データより算出した加工段階の排出原単位を乗じて算定。 |
カテゴリ11 販売した製品の使用 | 43 |
47 |
52 |
販売した製品の販売数量と標準的な使用シナリオ等に基づく使用時のエネルギー使用量に排出原単位を乗じて算定。 |
カテゴリ12 販売した製品の廃棄 | 4 |
3 |
3 |
販売した製品の廃棄時の廃棄物処理量・リサイクル量・廃棄処理金額に排出原単位(※5)を乗じて算定。 |
カテゴリ13 リース資産(下流) | 11 |
9 |
10 |
グループ外へ賃貸したリース資産のエネルギー使用量または延床面積に排出原単位(※8)を乗じて算定。 |
カテゴリ14 フランチャイズ | <1 |
<1 |
<1 |
フランチャイズ加盟店の延床面積に排出原単位(※9)を乗じて算定。 |
カテゴリ15 投資 | 1 |
2 |
1 |
出資先の企業・プロジェクトの排出量(※10)に保有比率を乗じて算定。純投資目的以外の投資及び当社グループ内への投資は対象外とする。 |
- ※1温室効果ガス排出量の定量化は、活動量データの測定、及び排出係数の決定に関する不確実性並びに地球温暖化係数の決定に関する科学的不確実性にさらされております。
- ※2環境省サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.3.5)の排出原単位を採用。
- ※3CDPデータ及び各社のサステナビリティレポートより算出した、セクター別の売上高当たりの排出量に物流コスト比率を乗じたものを排出原単位として採用。
- ※4CDPデータ及び各社のサステナビリティレポートより算出した、サプライヤ輸送事業種別毎の排出原単位を採用。
- ※5廃棄処理金額は独立行政法人国立環境研究所「産業連関表によるグローバルサプライチェーンを考慮した環境負荷原単位」の原単位データを採用。リサイクル量は「排出原単位DB」の原単位データを採用。廃棄物処理量は環境省「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」(以下、「SHK制度における排出係数」)の排出係数データより原単位を算出して採用。
- ※6排水量は「SHK制度における排出係数」の排出係数データより原単位を算出して採用。廃水処理金額は「産業連関表によるグローバルサプライチェーンを考慮した環境負荷原単位」の排出係数を算出して採用。
- ※7電力以外のエネルギーは「SHK制度における排出係数」の排出係数データを採用。電力は小売電気事業者の契約メニュー別の調整後排出係数を採用。
- ※8電力以外のエネルギーは「SHK制度における排出係数」の排出係数データを採用。電力は小売電気事業者の契約メニュー別の調整後排出係数を採用。延床面積は「排出原単位DB」の原単位データを採用し、複合施設の建物に適用する原単位は、最も使用割合が大きい用途の原単位を代表値として採用。
- ※9延床面積は「排出原単位DB」の原単位データを採用し、複合施設の建物に適用する原単位は、最も使用割合が大きい用途の原単位を代表値として採用。
- ※10出資先のGHG排出量が把握できる場合はその数値を採用。または、出資先の会社情報、資源エネルギー庁「エネルギー消費統計調査」のデータ、及び「SHK制度における排出係数」の排出係数データを用いて出資先の排出量を推計。
オゾン層破壊物質削減・代替
「オゾン層保護法」に基づき、特定物質とされている物質について、削減や代替に努めています。「フロン排出抑制法」に基づくJR東日本グループの2024年度の漏えい量は、0.5万t-CO2e☆でした。
六フッ化硫黄の排出抑制
「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づくJR東日本グループの2024年度のSF6の排出量は0.2万t-CO2e☆でした。
輸送量当たりCO2排出量(旅客)(2023年度)

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自営発電所
自営の火力発電所(神奈川県川崎市)は総出力80.9万kWであり、燃料には都市ガス及び天然ガスを使用しています。今後もCO2排出量削減に向けて、発電設備の高効率化を推進するとともに、水素発電やCCUS※技術の活用を検討していきます。自営の水力発電所(新潟県十日町市・小千谷市)は総出力44.8万kWであり、CO2が発生しないクリーンなエネルギー電源として当社の鉄道輸送を支えています。また、魚道の整備やサケの稚魚放流活動などを通じ、河川環境との調和や地域との共生をめざしています。自営火力発電所の2024年度発電効率は、43.1%☆。CO2排出係数は、0.426kg-CO2/kWh☆となりました。2025年6月信濃川発電所における水利使用の更新許可書を受領しました。引き続き、法令等を遵守し、厳格に放流量・取水量を管理することはもとより、河川環境と水利使用の調和、地域との共生に着実に取り組んでいきます。
- ※Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage:火力発電所や工場から排出されたCO2を分離・回収し、貯蓄または有効利用する技術
駅舎における国内初のZEB認証取得
駅における省エネルギー化の取組みの一環として、東海道本線大船・藤沢間にて工事等を進めている村岡新駅(仮称)にて、2024年12月ZEB Ready※認証を取得しました。今回国内で初めての「駅舎」でのZEBカテゴリー取得となります。LED照明や床断熱の採用、自然換気や自然採光を取り入れることで空調負荷の低減を図り省エネルギ―化を実現します。さらに両毛線山前駅の建替えにおいても2025年1月ZEB Ready認証を取得しました。今後も地域の玄関口となる駅において環境負荷の低い環境づくりに貢献していきます。
- ※ZEB Ready:高断熱化や省エネ設備等の導入により、従来の建物で必要なエネルギーの50%以下まで削減した建築物

再生可能エネルギー由来の水素活用
「TAKANAWA GATEWAY CITY」において100年先の心豊かなくらしを実現するために、「水素・GX」を軸の1つとして、再生可能エネルギー由来の水素を活用した純水素燃料電池を導入しています。小型モビリティへの電力供給や非常時の電源としても活用し、環境負荷の少ないエネルギー利用の実証を進めています。

水素ハイブリッド電車の開発
水素を燃料とする水素ハイブリッド電車「HYBARI」の実証試験を2022年3月より鶴見線及び南武線で実施し、技術的課題について検証しています。引き続き将来の営業投入に向けた開発を継続していきます。

鉄道建設プロジェクトによるCO2排出量の削減効果
私たち建設部門は、駅の改良やまちづくり、新駅・新線の整備、地域と連携した高架化事業など、さまざまなプロジェクトを推進しています。これらの取組みを通じて、利便性の向上だけでなく、サステナブルな環境づくりにも貢献していく必要があると考えています。鉄道は、自家用車と比べて輸送量あたりのCO2排出量が約6分の1と少なく、モーダルシフトによる環境効果が期待されます。現在工事を進めている「羽田空港アクセス線(仮称)」では、自動車やバスから鉄道への転換によって、年間約6,000t-CO2の削減が見込まれます※1。この削減量は、杉の木を約680ヘクタール(東京ドーム約145個分の広さ)植樹した場合のCO2吸収量に相当します※2。また、このCO2削減量を当社の社内炭素価格(5,000円/t-CO2)を用いて換算すると、約3,000万円相当の低減効果が期待できることが分かりました。また、その他の建設工事において、工事自体の環境負荷低減のため低炭素建材の活用にも取り組んでいます。たとえば鉄骨工事では、製造時のCO2排出が少ない「電炉材」※3の採用を設計段階から検討し、高炉材を使用する場合と比べ数百トン規模のCO2削減効果を得た事例もあります。また、内装工事では木材の活用により、炭素を貯蔵する効果を活かした環境配慮を進めています。今後も、建設プロジェクトを通じた、持続可能な社会の実現に向けた取組みを推進していきます。

- ※1自動車、バスからのCO2排出量の計算には全国道路・街路交通情勢調査や、国総研資料(第671号)の二酸化炭素排出係数を用いて当社で試算しています。
- ※2杉人工林(40年生)は、1ha(1,000本の立木)あたり1年間に約8.8tのCO2を吸収しているとして換算しました。(出典:林野庁HP「森林はどのぐらいの量の二酸化炭素を吸収しているの?」)
- ※3主にスクラップから電気炉で製造されるCO2排出量が少ない環境配慮型の鋼材
CO2排出量削減効果の試算結果

- ※1杉人工林(40年生)は、1ha(1,000本の立木)あたり1年間に約8.8tのCO2を吸収しているとして換算
- ※2当社社内炭素価格5,000 円/t-CO2で換算