TRAIN SUITE 四季島を支える想い TRAIN SUITE 四季島を支える想い

Vol.12:「鈴善」蒔絵師
中村 光彩の想い

素朴ながらも武家の豪奢さを受け継いできた会津漆器。
旅の思い出とともにお持ち帰りいただきたい。

福島県会津若松市で天保3(1832)年の創業以来、会津漆器をつくり続けている老舗、鈴善。
「TRAIN SUITE 四季島」の1泊2日(春〜夏)コースでは、漆器の見学や蒔絵(まきえ)を体験する時間が設けられている。

中村光彩(こうさい)さんは会津若松に生まれ育った、この道40年のベテランの蒔絵師。
体験教室でも伝統の技術を丁寧に指導してくれる。

会津漆器は会津の歴史が育んだ大切な文化

安土桃山時代の武将、蒲生氏郷(うじさと)公が「会津に新しい産業を」という人びとに対する想いから、会津の漆器の歴史が始まりました。会津は木材も漆も豊富に採れたことで、漆器づくりにはうってつけの土地だったのです。
トチやブナの木を歪みが出ないように何年も寝かせて乾燥させることから漆器づくりは始まります。漆は下塗り、中塗り、上塗りと重ねて塗ります。実は漆自体には艶(つや)はありません。油を加えることで艶が出ます。塗りを重ねるほど、上質な漆器に仕上がるのです。蒔絵は漆で文様を描いた後、金粉や銀粉、色粉を蒔くことで、鮮やかな色が生まれます。
会津の漆器づくりは、木地師(きじし)、塗り師、蒔絵師などによる分業で行います。冬は豪雪に見舞われるこの土地で、皆に仕事が回るよう、氏郷公が分業化してくれたおかげです。戦前は住民の10人に1人は、会津漆器の関係者だったといいます。漆器づくりは漆が乾くのを待つなど、待つ工程が多い仕事です。仕事の合間に一杯やろうと町に繰り出す職人が、当時はたくさんいたものです。私も会津で生まれ、21歳で弟子入りし、今年でこの仕事を始めてもう40年になりました。

暮らしの中で使う、旅の思い出

今、「TRAIN SUITE 四季島」のお客さまにご参加いただいている蒔絵の体験では、木地から職人が手づくりした漆器を特別にご用意しています。飯椀、フリーカップ、カレースプーンの3種類から選んでいただき、会津の歴史もご説明しながら、絵付けを楽しんでいただいています。
ご自身で蒔絵を描かれた漆器は、お持ち帰りいただきます。きっと素晴らしい旅の思い出になるでしょう。そのお手伝いをさせていただけるのは、本当に嬉しいことです。

会津での体験を一生の思い出に

ときどき「綺麗だから、飾っておくよ」とおっしゃるお客さまがいます。
私は「いえいえ、ぜひ使ってください」と申し上げています。

会津漆器は生活漆器です。会津の武士たちに愛され、そしてお客さま用のおもてなしの食器として、どの家庭にも一式はあるものでした。
実際に使うことで、その美しさや良さを感じていただきたい。

そして、旅のあとも会津のことを思い出していただけたら光栄ですね。

「鈴善」蒔絵師
中村 光彩

[ 文=野村麻里 写真=新居明子 ]