TRAIN SUITE 四季島を支える想い TRAIN SUITE 四季島を支える想い

Vol.11:「秋田木工」社長
瀬戸 伸正の想い

木工職人たちの心意気と技術の限りを尽くした挑戦。

秋田県湯沢市で明治以来、「曲木(まげき)」の家具を作り続けている秋田木工。「TRAIN SUITE 四季島」の車内には、秋田木工が特別に製作した、美しい曲線の椅子とテーブルが配されている。
驚くほどスタイリッシュで、東北の優しい木漏れ日のなかにいるような車内。そんな特別な空間を生み出すために、木工職人たちの心意気と技術の限りを尽くした挑戦があった。

木が木で立っていたときよりも美しく

秋田木工は、地元のブナやナラの木を使って西洋家具を作ろうと、明治に創業した会社です。19世紀半ばにドイツのモダンデザインの巨匠、ミヒャエル・トーネットが考案した曲木家具の技術が日本に紹介され、素材が豊富にある秋田で作ろうということになったのです。

ブナは木材としては水分を多く含むため、完成後に「くるい」が生じやすく、薪にするしかないとされていました。しかし、その性質は曲木には向いていたのです。曲木の家具を作るにはまず木材を乾燥させた後に、高温の蒸気で蒸し、「治具(じぐ)」という鉄製の型に合わせて曲げていきます。これで真っ直ぐだった木が曲線状になり、この曲木を鉋で削って滑らかに磨きあげて組み立てていきます。

曲線美で構成される優雅な佇まいが曲木家具の持ち味であり、「木が木で立っていたときよりも美しく」というのが、私たちが持ち続けてきた美意識です。

力の限り技術を尽くして

「TRAIN SUITE 四季島」車内の家具を作る仕事には、約3年前から関わってきました。車両のデザインをされた奥山清行さんが車内のインテリアデザインも担当し、「TRAIN SUITE 四季島」の旅先となる東北の家具メーカーにその製作を依頼したいと、私たちを指名しました。ラウンジ、ダイニング、客室の椅子とテーブル、計13種類を作りました。

作った家具はすべてオリジナルデザインです。一つ一つ新しく図面を起こし、金属の型や試作品も多数作りました。
また曲面の削り具合などは、図面だけでは表現できない微妙な加減が必要とされます。そこで、デザイナーに現場で指示をもらいながら、その場で削り出しの作業を行うなど、力の限り、「TRAIN SUITE 四季島」のデザインを生み出すことにわれわれの技術と魂を傾けました。
たとえば、ラウンジの特別仕様の椅子の背もたれのデザインなどは、技術的にも難しく苦労しましたが、東北の豊かな樹木のような特別な椅子になったのではないでしょうか。お客さまにはぜひこの椅子で寛いでいただけたらと思います。

本当にやりがいのある仕事をさせていただきました

「TRAIN SUITE 四季島」の運行開始前、実際に家具を車内に搬入するとき、東京・尾久のJR東日本の車両センターにうかがいました。そして、完成された「TRAIN SUITE 四季島」の車内を見て、「ああ、これは列車というより高級ホテルだ」と、心底感動したのを覚えています。改めて、大変な仕事だったけれど、本当にやりがいのある仕事をさせていただけたと感謝しています。
今年の夏には、〈2泊3日コース〉で「TRAIN SUITE 四季島」が湯沢の駅にやってきます。西馬音内の盆踊りに向かうため、バスに乗換えするわずかな降車時間ですが、地元では、沿線や駅で歓迎の心を伝えるお出迎えをしようと、今から皆さまの到着を楽しみにしています。

「秋田木工」社長
瀬戸 伸正

[ 文=鈴木 伸子 写真=名取和久 ]