TCFD・TNFD提言に基づく情報開示

気候変動・自然関連課題への統合的アプローチ

気候変動、生物多様性の損失といった地球規模の環境問題は年々深刻化しており、人々の生活を脅かしているだけでなく、JR東日本グループの事業活動にさまざまな影響を及ぼす可能性があると認識しています。気候変動の進行や自然災害の激甚化が懸念される昨今、事業基盤を安定させ持続的な成長を実現するためには、地球環境の保全に取り組むことが不可欠であり、環境との調和は企業の責任でもあります。JR東日本グループでは、「豊かな地球環境のために」をマテリアリティとして、カーボンニュートラル、ネイチャーポジティブ、サーキュラーエコノミーの実現といった観点から、2020年よりTCFD提言に基づく気候変動に関する情報開示、2024年よりTNFD提言に基づく自然関連課題に関する情報開示を進めており、これらの環境課題に対して統合的に取り組み、JR東日本グループの持続的成長と環境価値の創造の実現をめざしています。気候変動と自然資本はお互いに独立した概念ではなく、密接に関連しているため、包括的な対応が必要と考えております。そのため、共通内容の「ガバナンス」「リスク管理」は統合的に、「戦略」「指標と目標」はTCFD・TNFDそれぞれの内容と対応を個別に記載しています。

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開示項目 TCFD提言に基づく気候関連開示 TNFD提言に基づく自然関連開示
ガバナンス

サステナビリティ推進体制として、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ戦略委員会」を設置し、気候変動・自然関連課題等に関する目標の設定や進捗、リスク・機会等に関する監督と意思決定を行っています。同委員会の委員は副社長・常務取締役等で構成され、年2回程度開催しています(推進体制図P26)。取締役会は、これらの審議や報告を通じてサステナビリティマネジメントの有効性を確認しています。また、「JR東日本グループ人権方針」のもと、事業活動の影響を受けるステークホルダーとの活動の状況等について監督しています。

リスク管理

各部門において把握した気候変動の影響を受けるリスクについて具体的な回避・低減策を講じています。気候変動の緩和に関しては、半年に1回以上、各事業に係るエネルギー使用量、CO2排出量、フロン漏洩量等を取りまとめ、法令改正等の重要な外部環境の変化を踏まえて、リスクの洗い出し・特定・評価を行っています。気候変動への適応に関しては、急性・慢性の気象災害について、主要事業における物理的リスクの低減に向けた取組みを推進しています。自然関連リスクに関しては自然・生態系に影響を与えうるリスクの特定、具体的な低減策を講じています。LEAPアプローチに基づいた分析・評価を通じて、自然関連のリスク・機会の優先順位を明確化し、気候変動の緩和策と共に、資源循環、化学物質管理、鉄道沿線環境保全等の施策を推進しています。これらのリスク・機会の管理をサステナビリティ戦略委員会でモニタリングしています。

鉄道事業での取組みのめざす領域

地球環境の保全には、環境課題を統合的に捉え気候変動・自然資本の相互関連性を考慮した対応策が求められています。JR東日本グループのカーボンニュートラル、ネイチャーポジティブに向けた鉄道事業の取組みが、気候・自然にそれぞれどのような影響を及ぼすかをまとめました。
気候変動・自然資本ともにプラスの効果を与える取組みとして、例えば、沿線の鉄道林の維持管理は、自然災害を防止する機能により安全・安心な鉄道輸送を支えるだけでなく、GHGを吸収して気候変動を緩和する役割を果たしています。また、水力発電所における魚道の整備等の生態系保全活動は、地域社会との共生において重要な役割を果たすとともに、グリーン電力の安定供給を通じてJR東日本グループのカーボンニュートラルに向けた活動を支えています。
JR東日本グループでは、今後も、トレードオフによる負荷を最小限にとどめつつ、気候・自然ともにプラスの効果を与えるシナジーの高い取組みをめざす領域と定め推進していきます。

JR東日本グループ取組みの気候変動・自然資本の相互作用の整理

環境価値の創造
~「気候×自然×安全・安定輸送」を通じた持続可能な企業価値向上~

気候と自然は互いに密接に関連しています。カーボンニュートラル、ネイチャーポジティブに向けた取組みは、自然災害の発生や被害の減少につながり、JR東日本グループの安全で安定した鉄道サービスの提供を可能にします。環境に優しい交通手段である鉄道をお客さまに安全・安心にご利用いただけることは、将来の豊かな地球環境の実現につながります。この「気候×自然×安全・安定輸送」の好循環が、持続可能な企業価値の向上をもたらすと考えています。

田沢湖線 刺巻1号林(ふぶき防止林)

TCFD提言に基づく情報開示※2

リスク・機会の特定

2020年度に特定した運輸事業における気候関連のリスク及び機会について再識別・再評価を行いました。また運輸事業の気候関連のリスク及び機会と、2025年度までに実施した不動産・ホテル事業、流通・サービス事業の気候関連のリスク及び機会について情報を整理し、3事業を統合した一覧表を作成しました。
さらに、重要性が高いと判断した移行リスク「炭素価格等のGHG排出規制強化」について、詳細なシナリオ分析を実施し、JR東日本グループの戦略やビジネスモデルへの影響を定量的に評価しました。
ここでは、多くのリスク・機会を特定していますが、特に重要と考えるものを抜粋します。

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リスク
/機会
領域 要因 事業影響 運輸事業 不動産・
ホテル事業
流通・
サービス事業
発現・
実現時期
財務的影響/発現・実現可能性
移行
リスク

規制

炭素価格等のGHG排出規制強化

操業に関わる排出量に応じた対応コストの増加

大/高

大/高

大/高

短期~長期

物理的
リスク

急性

風水災等の気象災害の増加・激甚化

施設の被災に伴う復旧コストの増加、及び営業停止に伴う売上の減少

大/高

中/高

小/高

短期

機会

製品及びサービス

顧客行動の変化

環境優位性の高さを意識した利用者の増加による運賃収入・料金の増加、集客数の増加及び売上の増加

大/
中~高

大/中

中/中

中期~長期

  • ※移行リスク・機会については最も顕在化する2030年前後、物理的リスクについては2050年前後における財務的影響額の推計に基づき評価しています。
財務的影響

収益 小:10億円未満、中:10~100億円未満、大:100億円以上
費用 小:1億円未満、中:1~10億円未満、大:10億円以上

発現・実現可能性

高:「要因」の確度が高く、「事業影響」・「財務的影響」が顕在化する確度も高い
中:「要因」、「事業影響」・「財務的影響」のいずれかの確度が低い
低:「要因」、「事業影響」・「財務的影響」の確度がいずれも低い

発現・実現時期

短期1年、中期2-5年、長期6-10年

移行リスク:カーボンプライシングの導入による費用・収益への影響分析

GHG排出量に応じて企業に財務的負担を求めるカーボンプライシング関連制度の導入が検討され、特に2026年度からは、排出量取引制度として、JR東日本(単体)も義務的参加対象となるGX-ETS(第2フェーズ)が開始されます。また、2028年度からは化石燃料の輸入事業者等に燃料毎のGHG排出量に応じた負担を求める化石燃料賦課金の導入が予定されています。
そのため、JR東日本グループにおいてGHG排出量や化石燃料使用量を削減できなければ、排出枠の購入に伴う負担額の発生・増加や燃料コストの上昇などの財務的な影響を受ける可能性があります。
そこで本分析では、GX-ETS及び化石燃料賦課金による財務的影響を、3つのシナリオに基づき試算しました。

  • ※10万tを超える事業者は、JR東日本グループではJR東日本(単体)のみである。

分析の対象事業

全事業(ただし、GX-ETSについてはJR東日本(単体)のみが義務的な適用対象となることから、JR東日本(単体)のみを分析対象とし、その結果をグループ全体への影響額とみなしています。)

分析の対象年度

2026年度~2050年度(GX-ETS)
2028年度~2050年度(化石燃料賦課金)

シナリオ分析に用いたシナリオとその世界観

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温度別
シナリオ
GHG排出量削減の取組み シナリオの世界観 使用する外部シナリオ
実施 未実施

1.5℃
シナリオ

シナリオ
①

シナリオ
②

2050年までにネットゼロ排出を達成するためのシナリオで、2100年時点での世界気温上昇が約1.5℃にとどまることが見込まれる。
排出量取引制度や化石燃料賦課金が厳格化されるほか、それに伴って炭素排出枠の需要が増加して取引価格が上昇する。

  • IEA, NZE
    (World Energy Outlook, 2025)
  • 日本版SSP, SSP1

2.5℃
シナリオ

シナリオ
③

現在導入されている、または公表されている政策とその実施状況を踏まえたシナリオで、2100年時点での世界平均気温上昇が約2.5℃上昇することが見込まれる。また、本シナリオにおいてはJR東日本グループの営業地域における人口減少が1.5℃シナリオよりも著しいと見込まれる。
排出量取引制度や化石燃料賦課金は緩やかなまま制度が運用され、そのため炭素排出枠の取引価格は上昇幅が小さい。

  • IEA, STEPS
    (World Energy Outlook, 2025)
  • 日本版SSP, SSP3

シナリオ分析結果

試算の結果、1.5℃シナリオでJR東日本グループ目標に沿った排出削減の取組みを実施した場合、2035年度まではGX-ETS制度に基づく排出枠の取引(売却)による利益が化石燃料賦課金による燃料コストの上昇を上回るため、年間の影響総額としては利益が生じます。しかし、2036年度から2049年度にかけて最大で年間40億円程度の財務負担が生じると見込まれます。
一方、同シナリオで十分な排出削減の取組みを実施しない場合、2032年度までは総額として利益が上回ると見込まれますが、2033年度以降は負担が生じます。特に2035年度以降は、GX-ETSによる負担を中心として年間100億円以上の財務負担が生じ、2050年度に向けてその負担額は増加し続けると見込まれます。
2.5℃シナリオでは、脱炭素社会への移行が遅いため、排出削減の取組みを実施しなくても、2049年度までは総額として利益が上回る状態が継続すると見込まれます。

JR東日本グループにおける戦略と指標・目標

JR東日本グループは、2020年に環境長期目標「ゼロカーボン・チャレンジ2050」を策定し、2050年度のカーボンニュートラルの実現に向けた取組みを進めています。また、同目標の達成に向けた中間目標を2025年6月に新たに設定したほか、自営火力発電所における水素発電の検討や、水素ハイブリッド電車の開発などを含む取組みのロードマップを策定しています。

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シナリオ名 各年度時点における年間の財務負担額(億円)
2030年度 2040年度 2050年度

シナリオ
①

GX-ETS

▲62.1

34.1

0

化石燃料賦課金

2.2

4.7

0

シナリオ
②

GX-ETS

▲5.4

243.4

351.1

化石燃料賦課金

2.6

10.2

15.5

シナリオ
③

GX-ETS

▲1.9

▲8.6

15.2

化石燃料賦課金

1.2

3.5

4.8

  • ※表中のマイナスは、排出枠の売却による利益分を示す

TNFD提言に基づく戦略と指標・目標

指標と目標に関連する信濃川発電所事業における具体的な取組み

LEAPアプローチに基づいて自然関連課題の分析に着手し、詳細な検討を進めるべき優先地域として信濃川発電所を選定し、これまで分析を進めてきました。
LEAPアプローチに基づく評価、シナリオ分析等の結果を踏まえて、JR東日本グループでは、生息・生育環境が劣化して生態系保全が危ぶまれ、ステークホルダーからの信頼が低下するリスクが特に重要であると考えています。このリスクを低減するため、「信濃川中流域の環境調査の継続的な実施」、及び「地元自治体や有識者等を集めたステークホルダーとの対話の場である検討会の継続的な開催」を管理指標として設定しています。

指標 目標

信濃川中流域の環境調査の継続的な実施

年1回以上

ステークホルダー(地元自治体、有識者等)との対話の場である検討会の継続的な開催

年1回以上

河川環境を保全するための取組み

JR東日本グループでは、ダム上流から発電所下流にかけての水温調査、魚類の捕獲調査、環境DNAによる魚種の把握、サケの遡上状況調査等を実施しています。また、信濃川に生息する魚の遡上等を妨げないよう、宮中取水ダムの脇に整備した魚道のメンテナンスを行うとともに、魚道の改善に向けた研究とモニタリングを重ねています。
毎年春には地元の漁業協同組合や小学生らと共に、信濃川へサケの稚魚を放流する活動を行っています。こうした取組みは、生態系へ影響をおよぼすというリスクを低減するだけでなく、自然と事業の双方にとってプラスになる機会にもなり得ると考えており、今後も継続して取り組んでいきます。

小千谷地区のサケ稚魚放流(2026年2月)

地域コミュニティとの対話

JR東日本グループは長年にわたり取水が流域に与える影響を観測・評価し結果を公表してきました。また「信濃川中流域水環境改善検討協議会」をはじめとした会議に参加しています。
加えて、JR東日本が事務局である「JR信濃川発電所に係る河川環境検討会」を開催し、河川環境調査結果及び地元関係者と一体となった取組みの確認と宮中取水ダムからの夏季の試験的な放流方法等の議論や、魚類の遡上を妨げる宮中取水ダム魚道の波を抑制するための恒久対策工法を決定しました。
また、2026年度からは十日町市及び小千谷市に信濃川発電所の電力を供給することで、同市の「ゼロカーボンシティ」の実現に向けた新たな地域共創の取組みを開始しました。

第4回JR信濃川発電所に係る河川環境検討会

気候変動に関する情報開示の取組みとして、2020年よりTCFD提言に基づく将来の気候変動による運輸事業における財務的影響の定量評価・開示に取り組んできましたが、この度、分析対象を運輸事業だけでなく生活ソリューション事業へ拡充しました。また、自然関連課題に関する情報開示の取組みとして、2024年度にTNFD提言に基づき、信濃川発電所を優先地域として選定し、その自然資本への依存・影響、リスク・機会について初めて情報開示を行いましたが、リスクの詳細な分析を経て、この度、リスクを低減するための指標と目標の設定を行いました。

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開示項目 TCFD提言に基づく気候関連開示 TNFD提言に基づく自然関連開示
ガバナンス

マネジメント体制として、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ戦略委員会」を設置、気候変動・自然関連課題等に関する目標の設定や進捗、リスク・機会等に関する監督と意思決定を行っています。同委員会の委員は副社長・常務取締役等で構成され、社外取締役も出席し、年2回程度開催しています。また、「JR東日本グループ人権方針」のもと、事業活動の影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント活動の状況等について監督しています。

戦略

グループ経営ビジョン「勇翔2034」のもと、持続可能で豊かな地球環境の実現をめざします。そのため、各種事業について、気候変動が事業活動に及ぼす重要なリスク・機会を特定、評価し、事業戦略の妥当性を検証しています。

複数の事業・拠点を抱える当社グループにおいて、LEAPアプローチ※1に基づき、優先度の高い事業及び地域を選定し自然関連課題の分析・評価を行っています。さらに、TNFDが提唱するシナリオを用いて自然関連のリスクと機会に対する組織の戦略のレジリエンスについて分析しています。

リスク管理

各部門において把握した気候変動の影響を受けるリスクについて具体的な回避・低減策を講じています。気候変動の緩和に関しては、半年に1回以上、各事業に係るエネルギー使用量、CO2排出量、フロン漏洩量等を取りまとめ、法令改正等の重要な外部環境の変化を踏まえて、リスクの洗い出し・特定・評価を行っています。気候変動への適応に関しては、急性・慢性の気象災害について、主要事業における物理的リスクの低減に向けた取組みを推進しています。自然関連リスクに関しては自然・生態系に影響を与えうるリスクの特定、具体的な低減策を講じています。LEAPアプローチに基づいた分析・評価を通じて、自然関連のリスク・機会の優先順位を明確化し、気候変動の緩和策とともに、資源循環、化学物質管理、鉄道沿線環境保全等の施策を推進しています。

指標と目標

気候変動に対しては「ゼロカーボン・チャレンジ2050」を当社グループ全体の目標に掲げ、2030年度までにCO2排出量50%削減(2013年度比)、2050年度「実質ゼロ」を目標に設定。これらの進捗状況を定期的に管理するとともに、脱炭素社会の実現に向けた取組みをグループ全体で推進しています。自然関連については廃棄物排出量や植樹本数に関して目標を設定しています。さらに、LEAPアプローチに則り分析を進めネイチャーポジティブに向けた指標・目標(後述)を新たに設定しました。

  • ※1TNFDが提唱する、自然関連のリスク・機会を体系的に評価するためのプロセス(LEAP: Locate, Evaluate, Assess, Prepareの略)

TCFD提言に基づく情報開示※2

気候変動に伴うリスク・機会には、地球温暖化により生じる気象災害の激甚化等の「物理的」なものと、気候変動の緩和を目的とした規制の強化や技術の進展といった社会環境の「移行」に起因するものがあります。主要事業に関する主な気候変動リスク・機会を特定するとともに、重要と認識されたリスク・機会に関するシナリオ分析を進めています。

  • ※2TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)とは、企業の気候変動に関連するリスクと機会の開示を促進する国際的な枠組み。気候変動が企業の財務に与える影響を開示し、投資判断に役立てることを目的とする

リスク・機会の特定

不動産・ホテル事業(不動産・ホテル・ショッピングセンター運営事業)の主なリスク・機会(抜粋)

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要因 事業影響 財務的影響 発現・実現時期
移行リスク

炭素価格等のGHG排出規制強化

操業に関わる排出量に応じた対応コストの増加

大

中期

ZEB規制や省エネ規制の導入

建物のZEB化や省エネ化に関する規制の導入強化による建設・改修コストの増加

中

短期~中期

環境性能の高い不動産の普及

環境性能の高い不動産の買取価格上昇による調達コストの増加

大

短期~中期

物理的リスク

風水災等の気象災害の増加・激甚化

施設の被災に伴う復旧コストの増加、及び営業停止に伴う売上の減少

中

短期

平均気温の上昇

施設における夏季冷房コストの増加

中

短期

機会

エネルギー効率の向上

既存設備のエネルギー効率向上や高効率化ビルへの移転、建て替えによる操業コストの減少

大

中期

再エネ・省エネ技術の進展

再エネや省エネに関する技術革新による導入コスト及び操業コストの減少

大

中期

環境意識の高いテナント企業の増加

環境性能の高い不動産や環境認証を取得した不動産、環境価値を購入した不動産の賃貸収入の増加

中

中期

財務への影響度及び発現・実現時期の定義は以下のとおりです。

財務への影響度※3

売上高 小:10億円未満、中:10~100億円、大:100億円以上
費用 小:1億円未満、中:1~10億円、大:10億円以上

発現・実現時期

短期:~5年以内、中期:5年超10年以内、長期:10年超

  • ※3財務への影響度について、移行リスク・機会については2030年前後、物理的リスクについては2050年前後における財務的影響額の推計に基づき評価しています。

シナリオ分析

脱炭素社会への移行に伴い、建物の省エネ規制が強化され、また環境意識の高いテナント企業が増加していきます。これにより、環境性能の高い不動産(グリーンビルディング)の需要が高まります。こうした社会的な要請に対応できなければ、操業コストの増加や賃貸収入の減少などの財務的影響を受ける可能性があります。
本分析では、グリーンビルディングの普及・規制導入による財務的影響を、2つのシナリオに基づき、建設・改修コスト、エネルギーコスト、賃貸収入の観点から試算しました。

第2回JR信濃川発電所に係る河川環境検討会(2025年6月)

分析の対象と評価時点

不動産事業、ホテル事業、ショッピングセンター運営事業の主な施設はそれぞれ、(株)JR東日本ビルディング等が運営する物件、日本ホテル(株)等が運営する建物、(株)アトレ、(株)ルミネ等が運営する建物とする。評価時点は2030年とする。

分析を行ったシナリオとその世界観

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  グリーンビルディング導入等の取組み シナリオの世界観 使用する
外部シナリオ
実施 未実施
1.5℃
シナリオ

シナリオ①

シナリオ②

2050年までにネットゼロ排出を達成するためのシナリオで、2100年時点での世界気温上昇が約1.5℃にとどまることが見込まれる。環境規制や顧客からの要請により、建物のエネルギー高効率化のための改修工事、環境性能の高い建物の建設が進み、グリーンビルディングや環境認証の取得が進む。

IEA,NZE

シナリオ分析結果

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  気候変動による2030年時点での財務的影響(億円)
シナリオ① 1.5℃シナリオ(取組み実施) シナリオ② 1.5℃シナリオ(取組み未実施)
改修コスト・建設コストの増加

△30.6

△7.7

エネルギーコストの削減

19.8

3.7

賃貸収入の増加

182.5

△165.7

試算の結果、1.5℃シナリオで環境対応を実施した場合、既存物件の改修コストとグリーンビルディングの建設コストは増加するものの、エネルギー効率改善によるコスト削減と環境意識の高い顧客からの賃貸収入増加により、追加コストを大きく上回る効果が見込まれます。一方、同シナリオで環境対応を実施しない場合、改修・建設コストは抑えられるものの、エネルギーコストの削減効果は限定的で、顧客要請に対応できないことによる賃貸収入の大幅減少が予想されることがわかりました。

TNFD提言に基づく情報開示※4

LEAPアプローチに基づいて自然関連課題の分析に着手し、詳細な検討を進めるべき優先地域として信濃川発電所(以下、信発)を選定し、これまで分析を進めてきました。

  • ※4TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)とは、企業の自然資本(生物多様性、土地、水など)に関連するリスクと機会の開示を促進する国際的な枠組み。企業が自然資本との関係性(依存・影響)を理解し、自然に関連するリスクと機会を財務的に評価・開示できるようにすることを目的とする。

Prepare:戦略と目標の設定

これまでの取組みにて抽出した、信発事業における自然関連のリスクと機会について、既存の取組みや財務的影響、TNFDが提唱する自然関連シナリオを参考に、「移行リスクが顕著となる社会」と「物理的リスクが顕著となる社会」の2つのシナリオを設定し、事業に及ぼす影響を整理しました。

設定シナリオの概要

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  移行リスクが顕著となる社会 物理的リスクが顕著となる社会
社会の様相

自然関連の政策・規制の強化、自然関連技術の進展、自然保護活動を求める社会的な圧力の高まりが人々の生活や企業の活動に影響を及ぼすものの、資源の供給、気候の調節や災害の緩和といった生態系サービスの劣化は一定程度に抑えられている。

自然関連の政策・規制の一貫性の欠如、自然関連技術開発の遅延、自然保護活動への社会的な無関心により、資源の供給、気候の調節や災害の緩和といった生態系サービスが著しく劣化し、人々の生活や企業の活動に影響を及ぼしている。

「移行リスクが顕著となる社会」における主要なリスク・機会を下表に示します。この社会では、関連法令の規制強化、ステークホルダーの信頼低下や要請の高まりが事業に影響を及ぼす一方で、一部の事業機会については重要性が増すと予想されました。

「移行リスクが顕著となる社会」における主要なリスクと機会

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  自然との接点 リスク 機会 既存の取組み
影響ドライバー

水利用

水利用による生態系等への影響に起因する、関係法令の規制強化

-

国、自治体、有識者との水環境改善に関する協議会や、各種学会への参加生態系

生態系サービス

生息・生育環境の維持

生息・生育環境の劣化による、ステークホルダーからの信頼低下

  • 生態系の保全を支援する活動の推進やステークホルダー(地元自治体等)との定期的な対話の実施による信頼関係の構築
  • 生態系の保全を支援する活動の推進による事業と河川環境との調和の実現と事業の価値向上
  • 魚道の改善とメンテナンス
  • 国、自治体、有識者との、魚道等の構造改善フォローアップ委員会と生物多様性の保全に関する河川環境検討会の主催、現状把握調査や研究の継続
  • サケ稚魚の放流活動
  • 国、自治体、有識者との水環境改善に関する協議会への参加(河川水温調査の実施)

指標と目標の設定

指標 目標

信濃川中流域の環境調査の継続的な実施

年1回以上

ステークホルダー(地元自治体、有識者等)との対話の場である検討会の継続的な開催

年1回以上

LEAPアプローチに基づく評価、シナリオ分析等の結果を踏まえて、当社グループでは、生息・生育環境が劣化して生態系保全が危ぶまれ、ステークホルダーからの信頼が低下するリスクが特に重要であると考えています。このリスクを低減するため、「信濃川中流域の環境調査の継続的な実施」、及び「地元自治体や有識者等を集めたステークホルダーとの対話の場である検討会の継続的な開催」を管理指標として設定しました。

指標と目標に関連する信発事業における具体的な取組み

河川環境を保全するための取組み

JR東日本グループでは、信濃川に生息する魚の遡上等を妨げないよう、宮中取水ダムの脇に整備した魚道のメンテナンスを行うと共に、魚道の改善に向けた研究とモニタリングを重ねています。毎年春には地元の漁協や小学生らとともに、信濃川にサケの稚魚を放流する活動を行っています。また、ダム上流から発電所下流にかけての水温調査、魚類の捕獲調査、環境DNAによる魚種の把握、サケの遡上状況調査等を実施しています。こうした取組みは、生態系へ影響をおよぼすというリスクを低減するだけでなく、自然と事業の双方にとってプラスになる機会にもなり得ると考えており、今後も継続して取り組んでいきます。

地域コミュニティとの対話

JR東日本グループは長年にわたり取水が流域に与える影響を観測・評価し結果を公表してきました。また「信濃川中流域水環境改善検討協議会」をはじめとした会議に参加し、事業活動と信濃川中流域の自然との調和について地域コミュニティとの対話を続けています。
また2024年には、地域住民、漁協、有識者(魚類、河川環境、生態学等の専門家)とともに信濃川中流域の河川環境や生物多様性の保全を検討する場として、当社グループが事務局となり「JR信濃川発電所に係る河川環境検討会」を新たに発足しました。2025年6月に第2回検討会を開催し、これまでの河川環境に係る当社の取り組み、宮中取水ダムからの河川環境に配慮した放流方法についての検討報告、信濃川発電所に係る生物多様性の保全に向けた魚類の生息及び遡上・降下に関すること等について関係の皆さまからご意見をいただきました。
引き続きTNFD提言に基づいた自然関連リスク・機会の評価及び指標と目標の管理を継続するとともに、信濃川中流域における発電事業と自然との調和活動を推進し、地域コミュニティや河川管理者等のステークホルダーと協力しながら、ネイチャーポジティブの実現に向けてグループ全体で取り組んでいきます。

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