鉄道輸送基盤の充実・強化
19無線による列車制御システム
ATACS
従来の列車制御システムの多くは、レールに電流を流して列車が在線する位置を検知し(軌道回路)、信号機により後続列車の運転士に対して走行可能な区間と速度を指示する方式を採用していましたが、ATACSは列車自らが位置を検知し、無線を使用して地上・車上間で双方向に情報通信を行うことで、列車を制御する新しいシステムです。
- 設備のスリム化
- ATACSでは、従来の信号制御方式で必要だった、地上側の列車検知装置(軌道回路)、信号機等の地上設備が不要となります。
- 安全性の向上
- 列車は無線通信で受信した情報を基に作成した速度照査パターンによるブレーキ制御が可能となります。また、踏切やホームなどで非常ボタンが押された場合など、自動的に停止するブレーキパターンを発生させ、システムにより列車を停止させることができます。
- 踏切制御
- ATACSによる踏切制御は、列車の現在速度と車両性能から踏切までの到達時間を計算し、列車から無線を用いて踏切の制御を行います。
- 導入線区
- 仙石線(あおば通り~東塩釜間)(2011年10月)
- 埼京線(池袋~大宮間)(2017年11月)
- 導入予定線区
- 山手線(全線)
- 京浜東北線(大宮~東神奈川)
GNSS無線踏切制御システム

ローカル線への展開を目指した新しい「GNSS無線踏切制御システム」の開発に取り組んできました。
このシステムでは、人工衛星測位技術を用いて列車の位置を把握し、携帯回線を活用して車上と地上間のデータ伝送を行うことで、踏切警報と列車の速度を制御します。このシステムにより踏切の異常時には、万が一、運転士がブレーキ操作をできなかったとしても、速度照査パターンにより列車に対して自動的にブレーキ制御を行うことが可能となり、踏切の安全性が向上するとともに踏切設備や情報伝送用のケーブルなどがスリム化され、設備のメンテナンス費用の削減などの効果が期待できます。
これまで踏切警報制御機能の開発と試験を行ってきましたが、今後は八高線へのシステム導入を目指していきます。
20電車線路のシステムチェンジ
これまでの電車線路(電車に電気を供給する設備)は設備点数の多さが課題となっていました。そこで設備の老朽時期に併せて、機能は同じでありながら構成する設備点数を減らしスリム化することでメンテナンス性の向上を図っています。
在来線・電路設備の簡素統合化(インテグレート架線)
新幹線電車線のスリム化(シンプル架線化)
21新幹線列車制御システムの更新
新幹線列車制御システムの更新を行い、将来の新幹線自動運転の実現を目指します。

現在の新幹線の列車制御システムでは、運転士による運転操縦が必要です。
将来的な新幹線自動運転の実現に向け、以下のプロジェクトを実施しています。
- 自動列車運転装置の開発
- 自動運転に必要な技術の蓄積と検証を行うため、上越新幹線の新潟駅~新潟新幹線車両センター間で回送列車の自動運転の試験を行いました。この試験結果をもとに実用化に向けた検討を進めています。
- 既存新幹線列車制御システムの取替
- 将来的な自動列車運転装置導入への対応も考慮しながら、以下設備の取替を行っています。
- ・東北新幹線(新白河駅~盛岡駅)にて、「信号機・転てつ機等の制御」や「列車制御情報の計算」等を行う信号装置の取替を実施しています。
- ・東北、上越新幹線にて、「列車乗務員と指令員の音声通話」、「列車運行に必要なデータ」、「お客さまへの案内情報」等を列車と地上で通信するための無線装置の取替を実施しています。
- (関連動画)新幹線 自動運転試験の様子
- 【and E】新幹線 自動運転試験の様子を見てみよう! - YouTube別ウィンドウで開きます