新領域
WaaS共創コンソーシアム
当社は、2017年に設立した「モビリティ変革コンソーシアム」にて、さまざまな実証実験・実装を実施しました。この知見・ノウハウを基盤に、移動×空間価値の向上をめざす場として、2023年4月に「WaaS共創コンソーシアム(WCC)」を設立しました。
さまざまな企業や自治体、大学等とオープンイノベーションを通じ、当社単独では難しいより広範な領域における社会課題の解決、ウェルビーイングな社会の実現に取り組んでいます。
2025年度の主な取組みテーマ
- ライドシェア
- 食も人も循環するWG
- 都市部公共空間におけるバイオフィリック効果の検証
取組みテーマ例:駅と連携するモビリティハブ
二次交通へのシームレスなネットワークの構築と、交通結節点としての駅の価値向上に向けて、千葉駅及び周辺エリアで「モビリティハブ」の実証実験を行いました。全6か所にポートを設置し、想定を上回るご利用結果から移動の利便性向上に寄与することができました。また、地域の価値向上効果の測定・検証では研究開発センターと連携し、取組みの深度化を進めています。
データ活用
データは当社グループの貴重な経営資源です。各現場で生まれたデータは、主に基幹システムで管理され、日々の業務の中で活用されています。これらのデータを個人情報保護、セキュリティ、コスト等を慎重に確認しながらも横断的に活用することで、業務変革や新たなサービス・ビジネスの創出を加速させます。特にリアルなサービスや移動のデータはビジネスを進めるうえでも大きな強みであり、勇翔2034で掲げる「ヒト起点」のマーケットインによる「ライフスタイル・トランスフォーメーション(LX)」の実現にデータの活用は不可欠です。
これまで、「共通情報基盤(KAI-TAK)」として、基幹システムから運行データや設備データ等を収集し、そのデータをAPIやBIツール等を通じて社員やアプリ等に提供してきました。今後は、グループ内の幅広いデータを収集し、生成AIによるデータの検索や分析等、より高度なデータ活用を可能とする新データ基盤を整備します。また、データガバナンス※を推進しています。品質のよいデータを、適切なルールの下で、誰でもいつでも利用できることをめざし、データ管理ルール策定をはじめ、データ分析ソリューション提供、データ分析研修実施、データ利活用情報の提供等を行っています。
- ※データガバナンス:業務・ビジネスでデータを活用するために、データの収集、蓄積、活用、運用、保守などのデータ管理を会社全体の視点で監督・サポートする活動
データ利活用基盤(JRE DATA STATION)の構築
社外からの評価
鉄道に関する世界最大級の国際会議「第14回世界鉄道研究会議(WCRR2025)」において、JR東日本から発表した論文「Development of Derailment Detection Function for High-Speed Trains by Monitoring Acceleration of Bogie Frame(高速鉄道車両のための台車枠加速度による脱線検知機能の開発)」が「Safety and Security部門」で「優秀論文賞」を受賞しました。
また、人々が自分らしく幸福に生きる社会づくりに特に貢献した取組みを広く社会に発信することを目的としたWELLBEING AWARDS 2026において、FINALISTを受賞しました。
内製開発
当社グループでは、近年のデジタル技術の急速な発達を背景に、「アジャイル開発」によるシステム・アプリのスピード感ある開発・実装・改善を推進してきました。
こうした取組みをさらに拡大・加速させるため、「Digital & Data イノベーションセンター(通称:DICe(ダイス))」では、多様化・高度化するニーズに対し、ユーザー視点で素早く応えることを目的として、自社の業務に精通した社員等による内製開発に取り組んでいます。これにより、スピーディーな対応と開発ノウハウの当社グループ内への蓄積を図るとともに、ヒト起点の発想で技術を融合させて価値を創出できる高度なIT人材の育成を進めています。


内製開発に関する主な取組み
運行情報の電話自動応答サービス「どこトレダイヤル」
国内の鉄道事業者として初めて、生成AIを用いてスマートフォンアプリ操作に不慣れなお客さまでも場所を選ばず、電話で列車の遅れや走行位置などの運行情報をスムーズかつ正確に知ることができる電話自動音声アシスタントです。
線路メンテナンス用分析プラットフォーム「Viz-Rail」
日々膨大に取得される軌道データに基づき「急進性軌道変位リスク」、「軌道変位に起因する列車動揺リスク」、「レール張り出し現象の予兆リスク」といった軌道設備リスクを把握可能なダッシュボードです。
生成AIを活用した旅行計画支援サービス「JR EAST Travel Concierge」
個々のニーズに応じたパーソナライズされた旅程を実現するために、生成AIによる旅行プラン作成と当社グループサービスとの連携によってワンストップでの旅行手配が可能なサービス(実証段階)です。
法人向けサービス用プラットフォーム「Suica Business Web」
Suicaの法人向けサービス(Suicaの改札タッチデータをリアルタイムに活用できるサービス「タッチトリガー」等)を事業者の皆さまがワンストップでご利用いただけるよう開発された、法人向けクラウドプラットフォームです。
DX REPORT
JR東日本グループでは「勇翔2034」で掲げたモビリティと生活ソリューションの二軸経営を推進するための成長の基盤として、 DXによる技術力及びビジネスの深化と進化に果敢に取り組んでいます。DX REPORTでは、JR東日本グループがDX推進に取り組む背景や二軸経営を推進するための成長の基盤として、DXのめざす姿をDXストーリーとしてまとめています。
JR東日本グループにおけるDXを「お客さまや社会、社員のニーズを起点にデータとデジタル技術でサービスや業務を変え、新たな価値を生み出すこと」と定義し、AIを軸にした業務DX施策・Suicaを軸にした社会DX施策及び、DXを支える基盤としての推進体制や人材育成、ITシステム整備、サイバーセキュリティ対策を紹介しています。
これらの取組みが「勇翔2034」における5つのエンジンを支え二軸経営を加速させることで、ライフスタイル・トランスフォーメーション(LX)、ひいてはすべての人の心豊かな生活を実現してまいります。
新領域(WaaS共創コンソーシアム)
オープンイノベーションを通じた社会課題解決
2017年に、オープンイノベーションによりモビリティを変革する場として「モビリティ変革コンソーシアム」を設立しました。5年間にわたり160を超える企業・団体にご参加いただきながら、さまざまな実証実験、実装を行ってきました。2023年4月より、その知見・ノウハウを活かし、移動×空間価値の向上をめざす場として「WaaS共創コンソーシアム」を新たに設立しました。さまざまな企業や自治体、大学等とオープンイノベーションを通じ、当社単独では難しいより広範な領域における社会課題の解決、ウェルビーイングな社会の実現に取り組んでいます。2024年度は15テーマの実証実験を行いました。代表的な実証実験を紹介します。
WCCロゴ
Well-beingな社会の実現
移動の価値を高める
タクシー乗り場のリアルタイム混雑可視化
近年、インバウンド等の移動需要の増加と共に、新幹線駅などでタクシー乗り場の混雑が顕著になっています。本取組みでは、駅からタクシーを利用するお客さまに、タクシー乗り場の待ち人数と予測待ち時間をリアルタイムで提供しました。この情報をもとに、混雑する乗り場を避けて空いている乗り場を選択いただく、別の交通機関を選択いただくなど、お客さまの行動変容を促しスムーズに移動できる環境づくりをめざしました。
実証実験は2024年11月から12月にかけて東京駅八重洲口、東京駅丸の内北口、新橋駅汐留口、品川駅港南口の各タクシー乗り場にて実施し、混雑情報を「NAVITIME」アプリでお客さまに提供しました。混雑情報は延べ1万人を超える方にご覧いただきました。
実証実験の結果を踏まえ、鉄道を利用するお客さまが快適にその先も移動できるよう、サービスの導入に向けて検討を進めていきます。
空間の価値を高める
遠隔五感体験再現によるUXと購買意欲向上
現地で感じられる感覚を遠隔地で体感できる新しいバーチャル技術、「没入システム」による遠隔観光体験が、ユーザーエクスペリエンスと体験者の意識変容にどう影響するかを検証しました。4K 360°映像の4面ディスプレイへの投影や香りの噴霧による深い没入感、また現地映像・音声のリアルタイムでのライブ投影やカメラの位置情報に連動した現地の香りの同期再現といった機能が特徴です。
実証実験は長野市戸隠地区に伝わる戸隠そばをテーマとし、一般の方々を対象に遠隔観光イベントという形で実施しました。そば栽培地の気候や風土、そば打ちの様子などを「没入システム」にて仮想体験していただいたほか、現地からのライブ配信も行い、遠隔地間でのリアルタイムな没入型のコミュニケーションも体験していただきました。
検証結果として、「体験者の高い満足度」、「体験コンテンツに関わる商品の購買意欲の向上・現地への訪問意欲の向上」が確認され、物理的な距離を超えて臨場感や没入感を提供するという新たな空間体験が、地域の魅力発信や興味喚起に有用であることが示されました。今回の知見を活かし、「没入システム」の社会実装を進めていきます。
コンソーシアムでの実装事例:AR車両
「モビリティ変革コンソーシアム」の実証実験で検証したAR技術の社会実装に取り組んでいます。その一環として、姿を消しつつある鉄道車両をARで再現する実証を試行的に行い、2022年に開催した鉄道開業150年のイベントにて広く発信しました。
その後も、当社主催のイベントで活用したほか、近年では鉄道博物館でも活用されています。今後も、地域の活性化や文化の継承に向けて、ARなどの先端技術を活用した取組みを進めてまいります。
地方での生活を豊かに
地域共創の取組み全般、回復ガストロノミー等
産官学と広域連携による地域共創をめざして、北陸新幹線飯山駅を中心とした9市町村から成る「信越自然郷」エリアで、社会実装をめざした実証実験を複数実施しました。
人口減少や地域モビリティといった共通の課題に対して、それを広域でとらえた新たな解決策を提示し、地域とともに検討・検証を行うことで、「WaaS共創コンソーシアム」による地域共創を推進しています。
取組み事例
ウェルネスモビリティ
「ウェルネスモビリティ」では、ウェルネスをテーマとして、飯山駅からの二次交通にサイクルツーリズムを採用するとともに、ウェアラブル端末など新技術・サービスの利活用により、自転車利用による疲労、観光体験による回復を可視化させ、「移動」が持つ健康・ウェルネス的な価値を検証しました。具体的には、域内での「移動」と「観光体験」が連動するよう、参加者に地域通貨チケットを配布し、サイクルツーリズムと観光地・温泉・物販店などがつながるメニューを採用しました。健康・ウェルネス的な価値の検証のほか、参加者の再来訪意欲向上と、それに伴う関係人口の創出もめざしました。
回復ガストロノミー
「回復ガストロノミー」では、地域の「食」に注目し、地元の学生とシェフが地域の食文化を活かして開発したメニューを参加者が味わい、「食」を中心とした地域の特徴を体感するツアーを企画することで新たな関係人口の創出を検証しました。
また、地元の学生が地元食材を使ったメニューの開発や参加者への提供に積極的に携わることで、若年層の地域での就労意欲の向上による雇用創出の可能性を検証しました。

アグリスポーツ
「アグリスポーツ」では、「農業×スポーツ×移動×デジタル」をテーマに農作業をスポーツと捉え、健康経営支援プログラムに農業体験を組み入れる検証を行いました。具体的には、首都圏で働く人にスポットを当て、デスクワークが多いビジネスマンのリフレッシュを促すための地域共創も兼ねた健康経営支援事業を開発しました。この活動により首都圏と地方を移動する事由を増加させ、地域活性化事業の可能性拡大をめざしました。

駅からの二次交通への地域モビリティ活用(E-BIKE)
アグリスポーツでの農作業