「TRAIN SUITE 四季島」を支える想い
Vol.742026/9/4
北海道の食材を生かした、出来たての一皿を五感で楽しんでいただきたい。
「五感で楽しむ北海道」をテーマに、北海道の旬の食材をシンプルなスタイルで提供するメニューには、茹でたてのアスパラガスなどの野菜や、スペシャリテである毛蟹のリゾットが登場する。
手を加えすぎず、素材が最もおいしい瞬間を届ける料理と、目や香り、会話でも楽しんでいただくプレゼンテーションが、多くのお客さまの記憶に残る食体験を生み出している。2027年4月より運行開始する3泊4日コース/春~秋でも引き続き3日目の昼食を担当する。
ものをつくる仕事を求めて、料理の道へ
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私は北海道札幌市出身です。高校卒業後、何かをつくる仕事がしたいと、大手の外食企業に入社し、調理の仕事を学びました。
約10年間勤めたのち、20代の終わり頃、もっと料理の技術を身につけたいと考え、札幌の「レストラン モリエール」などフランス料理店を展開する会社へ転職しました。2015年の開店時から「モリエール・カフェ 『降っても晴れても』」のシェフを務めています。
「降っても晴れても」という店名は、店舗のデザイナーの方がジャズ好きで、スタンダードナンバー『Come Rain or Come Shine』から付けてくれました。しばらくすれば外れるだろうと思っていましたが、10年以上たった今もそのままです(笑)。 
北海道ならではのおいしさをシンプルに味わっていただきたい
担当しているのは、3泊4日コースの3日目の昼食です。2日目の朝に青函トンネルを抜けた後、お客さまは函館などを巡りながら、素晴らしい北海道の食も既にたっぷり楽しまれています。そのため、3日目の昼食を迎える頃には、お腹もかなり満たされているのではないでしょうか。そこで、北海道での最後の食事となる昼食は、できる限りシンプルな料理法で軽めに、そして、なにより楽しく召し上がっていただくことを心がけています。
続くサラダには、季節に応じて、茹でたてのアスパラガスやブロッコリーを添え、塩とオリーブ油だけで味わっていただきます。メインは、甲羅に盛り付けた毛蟹のリゾット。十勝・大正地区産のメークインを使ったポテトサラダも必ずお出ししています。
目指しているのは、食材に手を加えすぎず、その持ち味を生かすことです。
アスパラガスは、太すぎず細すぎず、いちばん瑞々しいもの、ブロッコリーは、大ぶりで状態のよいものを選び、どちらも茹でたてでお出ししています。 調理法がシンプルな分、食材の状態を見極めて、最高のタイミングで仕上げることが大切です。
春先には道東で水揚げされた毛蟹を、夏以降は主に噴火湾(内浦湾)産のものを使っています。道東の毛蟹は身が軟らかく繊細で、噴火湾のものは身がしっかりとして甘みが強い。それぞれに異なる持ち味があります。
活けのまま列車に運び、車内で茹で上げるのは、出来たてのおいしさを味わっていただくためです。一度茹でて冷蔵すると身が締まり、温め直しても元の食感には戻りません。手間はかかりますが、素材のおいしさを最もよい状態で届けるためには欠かせません。ペアリングには函館の日本酒「五稜」の純米吟醸酒をお勧めしています。
北海道の味わいとともに、心に残るひとときを
お食事の前には、まず食材そのものを見ていただこうと、活けの毛蟹や、茹で上げる前のアスパラガス、ブロッコリーなどをバスケットに入れ、クルーが各テーブルを回ります。
スペシャリテの毛蟹のリゾットは、蟹の甲羅にリゾットを盛り、その上に茹でた蟹の身を載せて、泡状のエスプーマで覆います。蟹がひっくり返って、ぷくぷくと泡を吹いているようにも見える一皿です。お客さまの前でクロッシュを開け、見た目でも楽しんでいただきます。
デザートには、北海道の乳製品と美瑛のハスカップを使った「クレーム・ダンジュ」をお出しします。その際は、私自身が各テーブルに伺い、ご挨拶をしながら盛り付け、お客さまと言葉を交わすひとときを大切にしています。
まずは料理をおいしく召し上がっていただくこと。そのうえで、食材を見て、香りを感じ、目の前で仕上がる様子や、料理人やクルーとの会話を楽しむ。そうした時間まで含めて、北海道の食を「旅の記憶」にしていただければと願っています。