- 生産・商業
- 山形県
2025.7.15
「第2回 JR東日本地域共創アワード」にて優秀賞を受賞した、一般社団法人HAKUTAIとJR東日本東北本部山形統括センター、左沢線統括センターの取組みをご紹介します。
フルーツ栽培150年の歴史をもつ「フルーツ王国」山形が見据える、つぎの150年
山形県でフルーツの栽培がはじめられて2025年で150年。豊かな自然の恵み、昼夜の寒暖差、肥沃でありながら水はけの良い地形と、なによりも先人たちが培ってきた栽培技術、果樹農家の情熱と努力によって、「フルーツ王国」を磨き上げてきました。
一方で山形県は、隣県や首都圏など都市部への人口流出、つくり手の高齢化と担い手の不足、生産資材の価格高騰による収益低下、大量に出る剪定枝等の廃棄物問題と、持続可能な果樹農業の実現に向けて多くの課題にも直面しています。
一般社団法人HAKUTAIは、地域ブランドの創出やPRを手掛けてきた地元組織ですが、150周年という節目をただ盛り上げるだけでなく、つぎの150年に向けた新たな一手を打ちたいという思いで本取組みを開始しました。
提供:山形県公式観光サイト「やまがたへの旅」より
廃棄物だった「さくらんぼの剪定枝」をアップサイクルし、地域の「宝もの」に
おいしく美しいさくらんぼ生産にかかせない、枝の剪定作業。先人たちの知恵や技術の結晶でもありますが、高齢化が進む中での剪定作業の負担や廃棄処理にかかる費用と環境への影響は、さくらんぼ栽培における課題の一つです。一般社団法人HAKUTAIは、処理に困っている剪定枝を「原材料」としてアップサイクルし、新たな「ものづくり」に昇華することで、課題から地域の「宝もの」に磨き上げられないかと考えました。
そこで、山形県さくらんぼ&フルーツPR協議会の公募事業において、食物残渣のアップサイクルを手掛けているCurelabo株式会社とともに剪定枝からの素材開発に取り組み、結果として、優れた品質の和紙・撚糸の開発に成功しました。
さらに、開発した素材を使用した製品づくりのフェーズへと進みます。古くから「ものづくり」が盛んな山形県には、世界的に認められた多くの「製造業」があり、世界的ニットメーカーの佐藤繊維株式会社、大正8年創業で手作業のホームシューズを生産する阿部産業株式会社、匠の技術で世界的に評価される家具・工芸品メーカーの株式会社天童木工の賛同を得て、連携した製品づくりを行ってきました。2025年4月からは、佐藤繊維株式会社生産のアパレル製品の販売を開始するに至っており、さらなる拡大に向けて試行を重ねています。
提供:一般社団法人HAKUTAI
地域をささえる企業との「共創」
本プロジェクトでは、剪定枝をアップサイクルしてものづくりをするだけではなく、「未利用資源」の発見と活用を県内の多様なステークホルダーと継続的に行うことで、多面的価値を生み出し続けることを目指しています。JR東日本東北本部山形統括センター、左沢線統括センターとの連携もその一つです。
JR東日本東北本部山形統括センター、左沢線統括センターでは、地域の伴走者として、本プロジェクトの初期段階から取組みを進めていますが、その始まりは剪定作業の重要性を実感しアップサイクル事業の意義を知るため、社員による剪定作業への参加からでした。さらに、アップサイクル素材を使用したミサンガや缶バッチづくりのワークショップ開催や、アップサイクル素材を利用した記念乗車券・名刺の配布など、JR東日本が持つアセットを活用し情報発信をすることで、より多くの方にこの事業を知っていただけるよう取組んできました。今後も、アップサイクル事業や製品の認知拡大・事業拡大に向け、連携を継続していきます。

今後の展望
一般社団法人HAKUTAIと、JR東日本グループを含む様々な共創パートナーは、未利用資源の活用のビジネスモデル構築に向け本プロジェクトを進める中で、産業の担い手不足、地域の過疎化、市場の縮小という地域課題を解決し、地域愛を育み、持続可能な地域社会に向けた新たな可能性を拓いていきます。
第2回JR東日本地域共創アワード 開催レポートはこちらから