津軽から秋田へ トレイントラベル「リゾートしらかみ」乗車リポート【後編①】津軽から秋田へ トレイントラベル「リゾートしらかみ」乗車リポート【後編①】

25周年を迎える観光列車「リゾートしらかみ」
津軽-秋田のローカルにふれるノスタルジーな旅

2022年4月1日に運行開始から25年を迎える「リゾートしらかみ」。秋田-津軽の魅力を探す列車旅の復路では、観光の定番である人気スポットや地元民に長く愛されている名物グルメを求めて、津軽の各地を巡りました。車窓越しに臨むのは、雄大な岩木山や世界自然遺産白神山地の山々、そして景勝地が続く美しい日本海。素敵な人々や忘れられない景色に出会える、列車ならではの旅をリポートします。

地元馴染みの憩いの場でホッと一息

コミュニティカフェ でる・そーれ
澁谷さん
「ゆっくり休んでいってね」と声を掛けてくれた澁谷さん。
若生おにぎり
あきおあきお
「若生おにぎり」220円は、この半月型がスタンダード。昆布の繊維に沿って噛み切れるよう、おにぎりを縦にしてかぶりつく。
中まで赤~いりんご
「中まで赤~いりんご」のシリーズ。手頃なジュースは、小瓶(180ml)378円、パウチ(130ml)324円。
石炭クッキー
売上の一部が、ストーブ列車維持のために寄付されるクッキー。30g・270円、60g・378円。

JR五所川原駅に到着すると「いよいよ立佞武多の街にやってきた」という気持ちで、ワクワクとしてきます。駅舎を出ると右手にあるのが、ストーブ列車でお馴染み「津軽鉄道」の駅舎。その向かいに「コミュニティカフェ でる・そーれ」があります。
扉を開けると、にこにこ笑顔の“津軽のお母さん”たちが迎えてくれました。今年4月で14年目になるという同店は駅のそばという立地柄、オープン当初は観光客の利用が主でした。しかし、その居心地の良さと地元馴染みの味わいが評判を呼び、今ではのんびりと地元客が憩うコミュニティースペースとしても知られています。店内では、ストーブ列車でも販売されている「石炭クッキー」、赤いリンゴ「御所川原」のジュースやジャムなどが販売されています。
イートインスペースでは、青森特産の青森シャモロックを使ったオリジナルメニュー「津鉄汁」や1年昆布でご飯を包んだ郷土料理「若生(わかおい)おにぎり」などを味わうことができます。このおにぎりは文豪・太宰治も好んでいたそうで、「津軽北部地方で愛されてきたふるさとの味なんです」と教えてくれたのは、でる・そーれ代表の澁谷さん。同店ではガス釜で炊いた青森県産米まっしぐらを、薄く柔らかい昆布で包みます。おにぎりを待っている間に話をしてくれたスタッフさんは、「子どもの頃は海苔で巻いたおにぎりに憧れがあったけれど、今ではこの昆布のおにぎりがなんだかホッとする」と笑みをこぼしました。握りたてのおにぎりを頬張ると、磯の風味が口いっぱいに広がりました。程良い塩気も相まって、大きめのサイズながらペロリと完食。「昆布の旨みがご飯に馴染んで冷めても美味しいんですよ」との話に、旅のおともにテイクアウトする人が多いのも納得です。
おしゃべり好きの津軽のお母さんたち。やさしい語り口と長く愛されてきた郷土の味わいに、ほんわかと心が和みました。覚えたての津軽弁で言うならば、“なんともあずましい(とっても心地良い)”カフェなのでした。

データ

  • コミュニティカフェ でる・そーれ
  • 住所:青森県五所川原市大町39 津軽鉄道株式会社1F
  • TEL:0173-34-3971
  • 営業時間:10:00~16:00 イートイン・テイクアウトは~14:00
  • 定休日:第1・第3日曜
  • ※ストーブ列車運行時や連休などは営業の場合あり

老舗店の人気メニューは津軽らしい創作そば

そば処 亀乃家
そば処 亀乃家
日本蕎麦も中華そばも自家製にこだわりながらも、財布にやさしい価格設定。
天中華そば
ゴロッと食べごたえのあるホタテがたっぷりのかき揚げが乗った「天中華そば」800円。
和弘さん
四代目・和弘さんを中心にして営んでいる同店。父の背中を見て育った五代目の尚寛さんも厨房に立っている。

JR五所川原駅からまっすぐ伸びる通りを5分程歩くと、地元で人気の「そば処 亀乃家」があります。新しい建物ですが、区画整備のためここに移って11年。創業は明治末期とされ、100年以上の歴史を持つ老舗です。
かつては料亭として華やかな料理を振る舞っていたこともあったそうですが、大火や戦争を経て店を縮小し、食堂に。戦後、三代目が今のそば処のスタイルで営業を開始しました。「その頃に中華そばの提供を始めたと聞いていますが、今もメニューはほぼ変わらずに受け継いでいます」と話してくれたのは、四代目として腕をふるう金川和弘さん。日本蕎麦のメニューを多く揃える蕎麦処ながら、地元民に支持されている人気メニューは、ホタテのかき揚げをトッピングした「天中華そば」です。にごらせないよう丁寧に炊き上げているスープは、野菜や豚ガラがベース。「特別なことは何もしていないんです」と謙虚に話しますが、チャーシューを煮た後の旨みを含んだ醤油を使うなど、細かなこだわりが感じられます。
さっそく「天中華そば」をオーダーしたお昼時、10席ほどのこぢんまりとした店内はすぐに地元客でいっぱいに。耳を済ませていると、迷わず「天中華!」と注文する声があちらこちらから聞こえました。「お待たせしました」と早々に提供された「天中華そば」から、食欲をそそる香りが漂います。スープを一口すすれば、まろやかでコクのある豚の旨みに思わずにっこり。スープをまとったやや縮れの細麺をすすれば、箸がもうとまりません。陸奥湾で獲れたホタテは甘みがあり、プリッと弾力のある歯ごたえがやみつきに。かき揚げが徐々にスープに馴染み、食べ進めるごとに味わいが変化していきます。思わずスープを飲み干してしまうほど、身体にじんわり染み渡るやさしい味わいでした。
「足を運んでくださる皆さんに喜んでいただけて幸せ」と、笑顔を見せる金川さん。胃袋も心もポカポカとあたたかく満たされました。

データ

  • そば処 亀乃家
  • 住所:青森県五所川原市大町506-7
  • TEL:0173-35-2474
  • 営業時間:10:00~17:00
  • 定休日:月曜・第4火曜

巨大な立佞武多を眺めて制作現場を見学

立佞武多
製作作業
パーツごとに木材で骨組みして紙を貼り付けていく製作作業。
製作作業
あきたこまちちゃんあきたこまちちゃん
ねぶた師の技が光る、絵付けの様子を見学できることも!

「立佞武多(たちねぷた)の館」は、全6階の大型観光施設。実際に祭りに使われている大型立佞武多を通年展示し、スクリーンの映像などを通して祭りの迫力が味わえます。建物の4階ほど高さがある大型立佞武多を、螺旋通路を歩きながらさまざまな角度で眺めることができるほか、制作現場の見学が人気を集めています。
「五所川原立佞武多」の魅力は、なんと言っても見上げるほどの山車の高さにあり、祭り当日は高さ23m、重さは19tの巨大な人形灯籠が市街地を練り歩き、見る物を圧倒します。いざ祭り開始となると立佞武多の館のガラスの外壁が開き、1年掛けて制作された大型立佞武多が出陣。3基の大型立佞武多のほか、町内や学校で作られた中型・小型のねぷたが街をにぎわせ、「ヤッテマレ!」の掛け声とお囃子、踊り手が華を添える、青森を代表する夏の風物詩なのです。
祭りの繁栄とともに江戸時代後期から大型化してきたものの、近代化によって街中に電灯線や電話線が張り巡らされるようになり高さが制限され、時代とともに小型化していったというねぷた。「五所川原立佞武多」は、明治40年代に作られていたねぷたの写真を見て、1996年に有志が復元を制作したのが始まりで、その2年後には運行経路の妨げになる電灯線や電話線を整理し、市民総ぐるみの夏祭りとして実施されました。そして、巨大な立佞武多を常設展示し、保管と製作のスペースとすることを目的として、2004年に「立佞武多の館」が開館したそうです。

データ

  • 立佞武多の館
  • 住所:青森県五所川原市大町506-10
  • TEL:0173-38-3232
  • 営業時間:立佞武多展示室9:00~17:00
    美術展示ギャラリー9:00~17:00
    ※物産ホールやカフェなどは営業時間は異なる場合あり
  • 定休日:無休 ※年始休業の場合あり
  • 料金:セット入場券 大人850円、高校生500円、小中学生300円
    ※単独入場券もあり(立佞武多展示室 大人650円、美術展示ギャラリー300円)

見るものを圧倒する景勝地を眼前に

顔出しパネル
訪れた際には、パネルから顔をのぞかせてパチリ!
文学碑
太宰治の小説「津軽」の文学碑。目の前の千畳敷について書かれているので、ぜひ一読して記念写真を。
岩畳
波打ち際まで続く岩畳。
氷のカーテン
吹き付ける寒風がつくる厳冬期の風物詩は、幾重にもなった氷柱でできている。

JR五所川原駅からは、往路と同じ「橅」へ乗り込みました。
次に停車するJR木造駅は、ちょっぴり有名。駅舎を巨大な土偶・しゃこちゃんが覆っているのです。この土偶は、「亀ヶ岡石器時代遺跡」から出土した遮光器土偶がモチーフ。電車が到着する際は、なんと目を光らせてお知らせしてくれるそうです。今回は下車しませんでしたが、駅構内にはなんとも愛らしい顔出しパネルがあるので、記念写真をお忘れなく。ちなみに周辺には源泉掛け流しの温泉や、つがる市内の遺跡からの出土品を展示している資料館、赤い鳥居が幾重も続くパワースポット「髙山稲荷神社」などがあり、太古の歴史ロマンに浸ることができます。
岩木山の裾野のエリアを通過すると、津軽の殿様が千枚の畳を敷いて大宴会を開いたという“畳千枚伝説”が残るJR千畳敷駅へ。こちらでは少し長めの停車タイムがあり、列車を降りて岩棚が広がる風景を目の当たりにすることができます。頬を撫でる風がキーンと冷たかったものの、開放感のある景色は眺めていて気持ちの良いものでした。眺めが良いのは海だけではなく、厳冬期は線路脇の岩壁が氷壁へと様変わり。高さ約20mにもなる氷のカーテンは、この時期にしか見られません。

旅の醍醐味・グルメをモバイルオーダーで♪

ごのたび
JR深浦駅で停車する間に、注文した商品を受け取り。
海彦山彦弁当
あきたこまちちゃんあきたこまちちゃん
オーダーできるメニューの一例。深浦町の地元民に親しまれている「食べ物屋 セイリング」の「海彦山彦弁当」。
※「ごのたび」は2022年4月から営業開始予定

「リゾートしらかみ」での旅で活躍するのが、五能線モバイルオーダー「ごのたび」。地場食材を使ったお弁当からスイーツ、ドリンクまで、旅のお供にうれしいグルメをラインアップし、事前にスマホから予約と決済を済ませることができます。当日は、「リゾートしらかみ」の停車駅でオーダーした商品を受け取るだけ♪ぜひ活用してみてはいかが。
【オーダー方法】
五能線モバイルオーダー「ごのたび」のオーダー画面から、スマホを使って受け取りたい日の前日15:00までに予約。
https://lp.jreast-joyful.jp/gonotabi/
STEP① 購入したい商品を選択
▶商品選択 ※受け取る駅に注意
▶乗車する列車情報を入力

STEP② 選択した商品のチケットを購入
▶お支払い ※支払い方法を選択
▶購入チケットを確認

TEP③商品を引き換え
▶受け取り場所でチケットを提示
▶引き換え完了 ※引き換え済みになっていることを確認

車窓越しに見える夕暮れが旅のエピローグ

車内
車内
暮れゆく景色を眺めながら、のんびりと旅を振り返る。
夕陽
次回乗車したら、夕陽が沈む瞬間を見て締めくくりたい。

日が傾き、進行方向には悠々とそびえる世界自然遺産白神山地がお目見え。青森と秋田の県境に近づく頃、太陽は日本海へ。乗車時、海へと沈む夕陽を見ることはできませんでしたが、好天に恵まれてタイミングが合えば、ドラマチックな瞬間を見ることができるそうです。オレンジ色にほんのり染まる空と寒々とした日本海のブルーのコントラストは、まもなく迎える旅の終わりを惜しむ気持ちを映すようにどこかさみしいものでした。車窓越しに見える景色をぼんやりと眺めながら、旅の思い出を一つひとつ回想すると、ちょっぴりあたたかい気持ちに。「リゾートしらかみ」での旅は、たくさんの出会いに溢れていました。

「リゾートしらかみ」の津軽から秋田への旅、いかがでしたか。長く継承されている祭りや文化に親しむローカルな旅。笑顔で迎えてくれるお店の方や地元民に愛されるグルメ、そこでしか見られない絶景など、道中はまさに出会いの連続でした。
あたたかなおもてなしをいただくと、こちらも自然と笑顔に。ネイティブな津軽弁にふれると、なんだか訪れた土地が自分を歓迎してくれているようで、うれしい気持ちになりました。
列車の揺れに身を委ね、のんびりくつろいだ車内。見て聴いて、たまに味わって、五感で楽しみ尽くしたひとときは、決して忘れることができない思い出になります。
津軽へおでかけの際は、ぜひ「リゾートしらかみ」に乗車してみてはいかがでしょうか。

秋田から津軽へ トレイントラベル「リゾートしらかみ」乗車リポート【前編】はこちら

※営業時間や定休日などは、2022年3月末時点の情報です。感染症拡大の防止により、変更になる場合があります。

※写真は一部、紹介施設などに提供協力をいただいています。

記事作成:あきたタウン情報

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