津軽から秋田へ トレイントラベル「リゾートしらかみ」乗車リポート【後編①】津軽から秋田へ トレイントラベル「リゾートしらかみ」乗車リポート【後編①】

25周年を迎える観光列車「リゾートしらかみ」
津軽-秋田のローカルにふれるノスタルジーな旅

2022年4月1日に運行開始から25年を迎える「リゾートしらかみ」。秋田-津軽の魅力を探す列車旅の復路では、観光の定番である人気スポットや地元民に長く愛されている名物グルメを求めて、津軽の各地を巡りました。車窓越しに臨むのは、雄大な岩木山や世界自然遺産白神山地の山々、そして景勝地が続く美しい日本海。素敵な人々や忘れられない景色に出会える、列車ならではの旅をリポートします。

迫力満点の「青森ねぶた祭」をじっくり体感

青森ねぶた
青森ねぶた
青森ねぶた
あきおあきお
「青森ねぶた祭」の山車が暗闇に浮かぶ様子に圧倒される館内。例年、祭り当日に向けてねぶた師たちが制作を行うねぶた小屋が駅の近くに軒を連ねるのが、この辺りの風物詩になっている。

「リゾートしらかみ」の発着地点になっているJR青森駅周辺には、徒歩圏内に観光スポットが点在しています。青森と聞いて、多くの人が思い浮かべるモノの一つが「ねぶた」ですよね。ねぶたは、青森の各地域で行われている伝統行事。中でも、往路でさらりと触れた「弘前ねぷたまつり」や「五所川原立佞武多(たちねぷた)」、そして「青森ねぶた祭」は、青森三大祭りと呼ばれるほど有名なイベントです。
JR青森駅の海側に位置するのは、国の重要無形民俗文化財である「青森ねぶた祭」の歴史や魅力が体感できる「ねぶたの家 ワ・ラッセ」。館内には、実際に青森の街をにぎわせた大型ねぶたを複数展示しています。間近で見上げるねぶたは迫力満点!祭りの熱気が伝わってくるような気さえします。大型スクリーンの「青森ねぶた祭」での運行の様子が鑑賞できたり、スタッフによるねぶた囃子の演奏が楽しめるほか、ねぶたのまわりで「ラッセラー!」の掛け声と踊りで祭りを盛り上げるハネトの体験をすることもできます。

データ

  • 青森市文化観光交流施設 ねぶたの家 ワ・ラッセ
  • 住所:青森県青森市安方1-1-1
  • TEL:017-752-1311
  • 営業時間:9:00~18:00(5月~8月は9:00~19:00) ※最終入場は30分前
  • 定休日:年末年始 ※展示入れ替えの休館日あり(8月9日・10日、12月31日・1月1日は休み)
  • 料金:大人620円、高校生460円、小・中学生260円

“青森の美味しい”に出会えるとっておきのマルシェ

A-FACTORY
A-FACTORY
つがにゃんつがにゃん
A-FACTORYの焼印が付いたレトロな木箱に商品をディスプレイ。
A-FACTORY
醸造中のタンクや樽が並ぶ工房の様子。

JR青森駅東口からすぐのウォーターフロントエリアにある「A-FACTORY」は、まるでマルシェのような複合施設。青森県産のリンゴを使用したシードルを醸造する工房と、青森ならではの食材やお土産品を扱うショップ、個性豊な飲食テナントも営業しています。
開放的な館内には、青森全域から集められた果物、お米などのほか、地元に根ざした加工品や菓子が並び、まさに“青森の美味しい”が詰まった空間になっています。県外ではなかなか手に入らない調味料や目を引くパッケージのドリップパックまで、売り場を彩る商品は実にさまざま。思わず手に取りたくなるアイテムが揃っています。
館内の中心部には、ガラス張りのシードル工房があり、タイミングが合えば搾汁作業などの醸造工程の一部を見ることができます。シードルとアップルソーダを醸造していますが、原料になるのは100%青森県産のリンゴだけ。繊細な泡立ちとリンゴ本来のすっきりとした爽やかな甘みが楽しめます。シードル工房に挟まれた階段をのぼると、青森県産の蕎麦粉を使ったガレットを提供するレストランとシードルのテイスティングバーがあるので、シードルを試飲してからショップで好みの1本を購入することもできます。ここで醸造されたシードルに限らず、県内で造られた銘柄を複数ラインアップ。一口にシードルと言ってもその味わいは実にさまざまで、テイスティングは有料ですが100円~と気軽に呑み比べることができました。
また、食品に限らず、工芸・民芸などのクラフトアイテムも見逃せません。リンゴの木で作られた栓抜きと好みのシードル、そして気になるおつまみをチョイスして旅のお土産にするのも良いかもしれませんね。

データ

  • A-FACTORY
  • 住所:青森県青森市柳川1-4-2
  • TEL:017-752-1890
  • 営業時間:10:00~18:00 ※飲食店舗は各店により異なる
  • 定休日:無休

のどかな津軽平野の風景を眺める乗車タイム

青池
車内
シックな赤のカラーリングが目を引く座席が配されている。
車内
同じような構造ながら、ボックス席もどこかスマートな印象。
乗車証明書
「乗車証明書」。対象施設を利用する予定があれば、忘れずにゲットするべし!

復路は、日本海の水平線と十二湖の青池をイメージしたハイブリットシステム車両「青池」に乗車。車窓が大きく、先頭車両には展望室を完備しているという点は「橅」同様に快適ですが、ぬくもり溢れる車内インテリアの「橅」と比べるとスタイリッシュな印象を受けました。こちらも4両編成で、2号車がボックス席。ほかの車両はゆったり座席を配した指定席になっています。山側の席を選んで津軽平野の山並みを眺めるのも楽しいものです。
「リゾートしらかみ」の車内には、共通して「乗車証明書」が備えてあります。対象施設で提示すると、入館料が割引になったりドリンクが提供されたり、ちょっぴりお得なサービスが受けられるうれしいチケットです。そのほか、JR板柳駅から「板柳ふるさとセンター」までの移動に活躍する「無料送迎タクシーサービス券」も。旅の途中に立ち寄る際はぜひ活用したいですね。

古くから受け継がれてきた津軽の昔話と文化

車内
金多豆蔵
なかよしなかよし
人形芝居の演目は往路と復路で変えている。芝居中、木村さんのアドリブが出ることも。
語りべ
現在、青森や弘前、大鰐などの広い地域に16人ほどの語りべが居るという。
※車内イベントは、諸事情により演奏・実演ができない日もありますので、予めご了承ください。

列車のほぼ真ん中、3号車の先頭にも展望室のような空間があり、ここが「青池」のイベントスペースになっています。乗車する「リゾートしらかみ」によっては津軽三味線のほかにも走行中にイベントを楽しむことができます。
ひとつは、青森県中泊町に伝わる「金多豆蔵(きんたまめじょ)の人形芝居」。無形民俗文化財になっていて、現在は金多豆蔵人形一座の代表である木村さんがサポートの手を借りながら、ほぼ一人で演じています。津軽地方に伝わる伝説を「金多」と「豆蔵」のコミカルな掛け合いで伝えるこの人形芝居は、実父から継承したのだそうです。「何度か新たに人形を作りましたが、やっぱり昔ながらの味のあるこの人形がいいんです」と教えてくれた木村さん。人形の衣装はお手製だそうで、「細部までこだわっているので、そこも合わせて楽しんでもらえたらうれしい」と話してくれました。
そしてもう1つが、古くから伝わる津軽の昔話を聞かせてくれる「語りべ」。観光客が聞いてもわかりやすいよう、やさしい津軽弁で話してくれます。津軽語りべの会を取りまとめている菊地さんが、100話ほどの津軽の昔話を独自に調査し、読み聞かせのためにストーリーを書き出しているのだそう。実演の際は2名の語りべが乗車して、それぞれ6分ほどのショートストーリーを聞かせてくれます。「天気の良い日は岩木山と八甲田山のどちらも眺めることができます。車窓から景色を眺めながら聞く昔話は、忘れられない思い出になるでしょう」と菊地さんはにっこり。思わず耳を傾けたくなる昔話、聞いてみたいものです。

ページのトップへ