2021年3月26日

YAMAGATA MONO

|山形県|

人口2万3千人の町が起こした奇跡。

今年2月、ひとつの新しい取り組みが、山形県の南東に位置する人口約2万3千人の町で行われました。主催はJR東日本と高畠町役場、そして高品質なワインを世に送り出し続けている高畠ワイナリー。オンラインで結ばれた画面の向こうから、約60名のシンガポール人が町に熱い視線を注いだのです。

希望の種をまくプレゼンテーション。

人口2万3千人の町が起こした奇跡。 写真1

山形県の置賜盆地に立地し屋代川、和田川の扇状地に開け、西部には最上川が流れる緑豊かな田園都市「高畠町」。盆地特有の気候で夏期、冬期の寒暖の差が大きく、特に冬期は季節風の影響により多量の降雪があります。町内には日本三文殊の亀岡文殊堂、犬や猫を祀る「犬の宮」「猫の宮」、童話でおなじみの浜田広介記念館など、多くの名所旧跡が点在するほか、有機農業発祥の地、映画「スウィングガールズ」のロケ地としても知られ、観光地としての人気を確立。JR高畠駅には新幹線も停車します。

屋外にまだ多くの雪が残る2月の山形県高畠町。今や県内随一の観光スポットとなった高畠ワイナリーで、関係者がボディランゲージを交えながら熱量の高いプレゼンテーションを行っていました。しかし、会場に観衆の姿は見当たりません。彼らが語りかけていた相手は、オンラインでつながった画面の向こう側にいる人々。参加者はシンガポールに暮らす人々です。

人口2万3千人の町が起こした奇跡。 写真2

「計画が立ち上がった当初は現地でのプレゼンを想定していましたが、新型コロナウイルスの急速な拡大を受け、このような形で開催する運びとなりました。本日の参加者は現地のバイヤーやインフルエンサーの方々。今回のアクションが具体的な数字となって表れるまでには時間がかかるかもしれませんが、参加者の反応を見る限り、期待値以上の興味喚起はできたのではないかと思います」登壇者の一人、高畠町役場商工観光課の近野憲希氏は、充実感に満ちた表情を浮かべながらそう語ってくれました。

今回発信された内容は、地元の観光名所、伝統行事とイベント、気候風土、農産物や特産品など。きたるwithコロナ、アフターコロナの時代を見据え、先手を打ってインバウンド需要を取り込もうという狙いが見て取れます。

プレゼンテーションの場所に高畠ワイナリーが選ばれた理由は、知名度と商品力の高さから。事前に同社より参加者に送られたワインで(画面越しに)乾杯が行われたシーンでは、テキストチャット上に賛辞のコメントがあふれました。

人口2万3千人の町が起こした奇跡。 写真3

「ワインの生産に欠かせないブドウの栽培に関して、高畠町は100年以上の歴史を有しています。つまり、当ワイナリーが1990年にオープンする以前から、ワインをつくるための素地はすでにできあがっていたんですね。しかもこの町でブドウを手がける農家のみなさんの熱意と技術力の高さは、驚くほど高い。日本は海外の産地に比べて降水量が多いのですが、そのデメリットを棚全体にビニールをかけることで打ち消したり、あえて棚の側面は覆わず風通しを良くして病害虫の発生を抑えたり。よりおいしいブドウをつくるための試行を、手間をいとわずやってのけるんです。だから私たちは自社製品をPRする際、"食べてもおいしい高畠町のブドウでつくったワインです!"と声高にうたっているんですよ」(株式会社高畠ワイナリー 営業部リーダー 木村英男氏)

人口2万3千人の町が起こした奇跡。 写真4 人口2万3千人の町が起こした奇跡。 写真5

高畠ワイナリーの創業は、町が中心となってワインツーリズムの核となる醸造場を誘致し始めたのがきっかけ。町はその後も「高畠ワインぶどう部会」を立ち上げ、欧州系ワイン醸造専用品種の栽培に着手するなど、高品質なワインづくりを全力で後押ししてきました。

その結果、高畠ワイナリーは国内外のコンクールで軒並み高評価を受け、東北を代表するワイナリーとして不動の地位を獲得。観光ワイナリーとしても、年間約25万人が訪れる町の一大名所に成長しました。

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本格辛口ワインから、甘口ワインやシードル、フルーツワインまで幅広いラインナップを展開し、年間の生産量は山形県のみならず東北地方でも最大級規模の「株式会社高畠ワイナリー」。世界の銘醸地に並ぶ「プレミアムワイナリー」となることをめざし、質の高いワインづくりに挑み続けています。

前出の近野さんが説明を加えます。
「JR東日本さんが自社の地域再発見プロジェクトで蓄積してきたノウハウや、ツアーの企画や催事に関するリソースを惜しみなく提供してくれたことも、今日の成功を導いた大きな要因です。高畠ワイナリーを軸とする新たな雇用創出や資源の活性化、交流人口の拡大などは、同社の協力がなければ到底なし得なかったでしょう」

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JR東日本グループが手がける地域活性化に向けた取り組み「地域再発見プロジェクト」。地域との連携を強化し、地元とともに知恵を絞る「共創」を掲げ、鉄道ネットワークおよび首都圏での販路を持つメリットを生かしながら、さらなる地産商品の掘り起こしや観光資源の紹介、地域産品の開発といった活動を進めています。

「今回の企画は、高畠町サイドより"もっと外へ打って出たい"と相談があったことからスタートしました。あいにくコロナ禍があり、本来の目的である観光誘客の一層の拡大という点では振り出しに戻ってしまいましたが、先々を見据え、しっかり種をまいていこうとする同町の姿勢には、つくづく感心させられます。人口減少という大きな社会問題を抱えた地方では、今後いかに交流人口、関係人口を増やしていけるかが、地域の活力を維持するカギ。その点、高畠町はコロナ禍前の実績で、1年間で町の人口の10倍以上もの観光客を引き寄せています。我々は知見を提供する立場ではありますが、この地を訪れるたび学ばせてもらっている感覚になります。これからもともに手を取り合い、高畠町そして高畠ワイナリーを日本屈指の観光地に育てていきたいですね」(JR東日本仙台支社 事業部 企画・地域共創課 日髙正貴)

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この春から開催される東北デスティネーションキャンペーン、その先のwithコロナ、アフターコロナの時代に、高畠町はどんな光景に包まれるのでしょうか。高畠ワイナリーの木村さんが最後にふと漏らしたセリフが、胸の奥でこだまします。

「これからの時代大切なのはファンになってくれる方との関係性を、時間をかけて本物に育てていくことではないでしょうか。そう、ワインをじっくり熟成させていくように」

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左から、高畠町役場商工観光課の近野憲希氏、株式会社高畠ワイナリー 営業部リーダー 木村英男氏、JR東日本仙台支社 事業部 企画・地域共創課 日髙正貴

株式会社高畠ワイナリー

  • 株式会社高畠ワイナリー 写真

    住所 山形県東置賜郡高畠町大字糠野目2700-1
    交通 JR山形新幹線高畠駅下車徒歩10分
    電話番号 0238-40-1840
    営業時間:9時~17時(4月~12月)、
        :10時~16時30分(1月~3月)
    定休日:年末年始および1月~3月の水曜
    入場:無料
    https://www.takahata-winery.jp/