2021年3月26日

FUKUSHIMA MONO

|福島県|

チョコレートを通じて地域の可能性を再発信。
福島県いわき市に吹き始めた新しい風。

首都圏と仙台をつなぐ常磐線は、東日本大震災で被災し、2020年3月に約9年ぶりに全線運転再開を迎えました。福島県浜通りの拠点であるJRいわき駅周辺は、現在大規模な再開発が行われています。2022年春にグランドオープン予定のスマートホテルに先駆け、2020年10月に地元発のチョコレートブランド「いわきチョコレート」初の直営店「いわき駅店」がオープンしました。地方発のチョコレートブランドが生み出す「新しい風」とは。

穏やかな浜風が吹き渡るまち、いわき市。

福島県の東南端、茨城県との県境に位置し、福島県内では「浜通り」と呼ばれるエリアに属するいわき市。市の東側は太平洋に面しており、沖合は暖流と寒流が交わる漁場として知られ、1年を通して温暖で過ごしやすい気候が特徴です。その温暖な気候を活かしたトマトやいちごなどの作物の栽培が盛んで、さまざまな面において「食」に恵まれた土地といえるでしょう。この土地で創業したいわきチョコレートは、いわき市に吹き渡る浜風のように、この地域に新しい風を起こし始めています。株式会社いわきチョコレートの代表取締役社長である柳沼大介氏とJR東日本水戸支社 切替悠介にお話を聞きました。

チョコレートを通じて地域の可能性を再発信。福島県いわき市に吹き始めた新しい風。 写真1

小名浜マリンブリッジとその先に見えるのは福島県でも人気の水族館「アクアマリンふくしま」。年間の日照時間の長さが全国トップクラスのいわき市は、「東北のハワイ」とも呼ばれ温暖な気候に適した作物のハウス栽培が盛んな地域。

――「めひかり塩チョコ」とは、メヒカリ入りのチョコレートなのでしょうか。

柳沼氏:多くのお客さまから同様のお問い合わせをいただきますが、魚の「めひかり」は入っていないです(笑)。めひかりとは、その名の通り目が青く光っていることからその名がついたいわき市特産の魚。めひかり塩チョコは、生キャラメルをチョコレートでコーティングし、表面には粗粒の海塩が散りばめられた商品となっています。チョコレート・生キャラメル・粗粒の海塩、この3つの素材を最後までバランス良く、おいしく味わっていただけるよう改良を重ねた結果、現在の形状になりました。その姿がいわき市の特産品であるめひかりの形とよく似ていたことから「めひかり塩チョコ」と名付けています。

チョコレートを通じて地域の可能性を再発信。福島県いわき市に吹き始めた新しい風。 写真2 チョコレートを通じて地域の可能性を再発信。福島県いわき市に吹き始めた新しい風。 写真3

めひかり塩チョコは、ひとくち食べると中から柔らかな生キャラメルが口の中に溶け出し、散りばめられた粗粒の海塩がチョコレートと生キャラメルに絶妙にマッチする。

味も名前も賛否両論。
いわき市を代表するお土産に至るまでの道のり。

――いわき市でチョコレートブランドを立ち上たきっかけを教えてください。

柳沼氏:福島県は、会津磐梯山のある会津、福島市のある中通り、沿岸部の浜通りの3つのエリアに分けられます。私はもともと福島県内の土産菓子メーカーに勤めていました。独立して自ら土産菓子ブランドを立ち上げたいと思ったとき、会津と中通りにはすでに老舗ともいえる土産菓子のブランドが確立されているため、浜通りに位置するいわき市でなら、他のブランドと住み分けながら独自のブランドが立ち上げられるのではと考え、いわき市での創業を決めました。

どんな商品を土産菓子としてブランディングしていこうかと悩んでいた頃、フランス沿岸部に伝わる伝統菓子、「塩チョコレート」と出会いました。フランス沿岸部の温暖な海辺の気候といわき市を重ね合わせ、どうにかこの塩チョコレートをいわき市で作りたい、と考え3年にもおよぶ試行錯誤の末誕生したのが「めひかり塩チョコ」。しかし、販売開始当初「塩とチョコレートは合わない」「『めひかり』というネーミングがチョコレートと結びつかない」といったご意見をいただき、思うように売上が伸びない時期が長く続きました。それでも「めひかり塩チョコ」の可能性を信じ、そのおいしさを丁寧に伝え続けた結果、いわき市を代表するお土産のひとつとして成長できたのではと思っています。

切替:2018年にはJR東日本が運行するクルーズトレイン「四季島」にも採用させていただきました。四季島の意匠を取り入れたパッケージでの限定販売も行っています。今では地元の方はもちろん、県外の方にも多く親しまれていますね。

チョコレートを通じて地域の可能性を再発信。福島県いわき市に吹き始めた新しい風。 写真4

クルーズトレイン「四季島」の意匠を取り入れた限定商品「めひかり塩チョコグラン・クリュ」。フランスの高級チョコレートメーカー「ヴァローナ社」のクーベルチュール(カカオバターたっぷりの口溶けのよいチョコレート)の中でも最高峰と言われる「グラン・クリュ」クラスのみを使用しためひかり塩チョコのプレミアム版となっている。

浜通りの魅力がぎゅっと詰まった、
「おいしいにっぽんフェス」とは?

――「おいしいにっぽんフェス」とはどういったイベントなのでしょうか。

切替:日本各地のおいしいものを食べて旅行気分に浸ることをコンセプトとした、JR東日本グループであり、料理雑誌の出版で知られる「オレンジページ」が主催したイベントです。2020年1月に東京都恵比寿で開催されました。JR東日本水戸支社では、常磐線の全線運転再開を機に、その沿線の魅力を発信しようといわき市を含む浜通りにフォーカスした出店を企画したんです。福島県のなかでも浜通りはこれまで大きくフォーカスされることが少なかったエリアです。しかしその土地柄から、「食」という面で非常に魅力にあふれています。「おいしいにっぽんフェス」では、そういった地域にスポットを当て、首都圏に向けて魅力を発信することを目的とした企画を用意しようという話になったんです。

柳沼氏:切替さんをはじめJR水戸支社の方々、そして一緒に出店する事業者と打ち合わせを重ね、浜通りの魅力を集結させた「浜通りマリアージュセット」という会場限定のプレートを提供しました。いわき市のワイナリーで醸造されたワインを主軸に、ワインに合う食材を組み合わせたおつまみやデザートのセットです。恵比寿という立地も相まって、「地方の良いもの」への感度が高いお客さまが多くいらっしゃったと思います。そういった場でいわき市や浜通りの魅力を届けられたことは、今後の商流に繋がる手応えを感じましたね。

チョコレートを通じて地域の可能性を再発信。福島県いわき市に吹き始めた新しい風。 写真5 チョコレートを通じて地域の可能性を再発信。福島県いわき市に吹き始めた新しい風。 写真6

温暖な気候を活かしたいわき市初のワイナリー「いわきワイナリー」では、ブドウの栽培からワインの醸造、瓶詰めまでを一貫生産している。めひかり塩チョコの塩分や生キャラメルの香ばしさ、チョコレートの酸味は、赤ワインとの相性も抜群。

チョコレートを通じて見えてきた、福島県浜通りの新たなる可能性。

柳沼氏:「おいしいにっぽんフェス」では、お客さまからの反響はもちろん、一緒に参加した浜通りの事業者との繋がりという面でも非常に得るものが多いイベントとなりました。当社ではこれまで福島県内の果物農家や酒蔵とコラボレーションした商品を数多く手がけてきました。私も含め、農家や食品メーカーは『アイデアはあるんだけど、どう形にすればわからない』という課題に多く行き当たります。一社だけで考えるのではなく、さまざまな事業者が互いに協力することでこれまでにない新たな商品が生まれる。JRさんがいわき市にスポットを当ててくれたことで、私たち自身が地元の魅力を再発見できたと思っています。チョコレートは相性のいい食材の幅が広く、チョコレートといわき市の食材が持つ新しい可能性も見えてきました。商流を作る、という観点で鉄道も欠かせない存在です。2020年10月にJRいわき駅構内にオープンした当社の直営店(いわき駅店)はそういった動きのなかで誕生しました。コロナ禍での出発となり、状況は依然として厳しいのが現状ですが、先を見据えて次の手を打っていくことが重要と考えています。すでに『おいしいにっぽんフェス』で一緒に出店した事業者とのコラボレーションした商品開発も進んでいます。

チョコレートを通じて地域の可能性を再発信。福島県いわき市に吹き始めた新しい風。 写真7

切替:柳沼さんを筆頭に、地域の生産者やメーカーが一体となって地方産品の価値を高めようとする動きは、今後さらに盛り上がるはずです。そのきっかけのひとつとなる場を、一緒に作れたことをうれしく思います。いわきチョコレートさまを始めとする浜通りの魅力を、常磐線沿線はもちろん、今後は首都圏まで届けられるよう、少しでもお手伝いができればと思っています。

チョコレートを通じて地域の可能性を再発信。福島県いわき市に吹き始めた新しい風。 写真8 チョコレートを通じて地域の可能性を再発信。福島県いわき市に吹き始めた新しい風。 写真9

福島県産の紅玉を使用した「紅玉林檎チョコ」(写真上段)と、いわき市産のサンシャイントマトを使用した「トマトビスコッティ」(写真下段)。いずれも福島県の生産者とコラボレーションした商品。規格外農産物を活用し、さらに価値を高めることをコンセプトに掲げて開発された。

いわきチョコレート いわき駅店

  • 菓いわきチョコレート いわき駅店 写真

    住所 福島県いわき市平字田町1
    電話番号 0246-53-5265
    営業時間:10時~19時
    定休日:無休
    https://www.shiochoco.com/