2021年3月26日

AOMORI MONO

|青森県|

再びシードルの歴史が動き出す。
A-FACTORYの挑戦とは。

青森県弘前市にある、赤レンガの重厚な壁面が歴史を感じさせる「吉野町煉瓦倉庫」。明治・大正期に地元の醸造家によって酒造工場として建造された建物が、2020年7月に「弘前れんが倉庫美術館」として生まれ変わりました。かつて、リンゴを原料としたヨーロッパ発祥の発泡酒「シードル」の製造が盛んに行われ、国産シードルが初めて大規模生産された同地で、再びシードル製造の取り組みが始まっています。日本一のリンゴの生産量を誇る青森でシードルの製造を行っている「A-FACTORY」の挑戦について、A-FACTORY 弘前吉野町シードル工房 工房長 工藤直樹と、JR東日本青森商業開発 堀川修平に話を聞きました。

「シードルって何?」地元民にとっても未知のお酒。

再びシードルの歴史が動き出す。A-FACTORYの挑戦とは。 写真1

――A-FACTORYの取り組みについて教えてください。

堀川:A-FACTORYは、株式会社JR東日本青森商業開発が青森県産リンゴの加工品開発を目的として立ち上げた事業です。青森県は日本一のリンゴの産地ですが、生産量が多い分、規格外品として加工品になるリンゴの量も多いのが現状です。生食用として味に遜色なく、色や大きさにばらつきのあるりんごを使用し、青森県産リンゴのブランド価値をさらに高めることを目指して、2010年12月に青森市を拠点にシードルの製造をスタートさせました。

工藤:私は立ち上げ以来この事業に携わっていますが、当初は私も「シードル」というお酒があることさえわからず、青森県内での認知度もほとんど無い状態からのスタートでした。試行錯誤を重ねながら、シードルの製造を始めましたが、同時に私たちの取り組みについて、地元の方に知ってもらうことにも力を入れました。昨年の2020年にA-FACTORYは10周年を迎えましたが、徐々に地元での認知度も高まり、現在は飲食店での提供やお土産品としても定着しつつあります。

再びシードルの歴史が動き出す。A-FACTORYの挑戦とは。 写真2 再びシードルの歴史が動き出す。A-FACTORYの挑戦とは。 写真3

A-FACTORYでは2010年にオープンした青森市の工房と、2020年にオープンした弘前市の工房の2拠点でシードルの製造を行っている。シードル製造のために海外から取り寄せたものや、フルオーダーメイドのものなど、工房の機材にもこだわっている。

青森県産100%のリンゴで造る、
国産シードルの味わいとは。

――A-FACTORYではどのようなシードルが製造されているのでしょうか。

工藤:シードルの造り方はワインやシャンパンに似ています。リンゴの果汁に酵母を加えて発酵させ、最後に炭酸ガスを加えるのが一般的です。私がいる弘前吉野町シードル工房では、炭酸を加えるのではなく、タンク内二次発酵による天然発砲のシードルを製造しています。また、製造量は少ないものの、瓶詰めされたシードルに酵母を加えて瓶の中で二次発酵を促す瓶内二次発酵も行なっています。こうすることで自然発酵による炭酸ガスを含んだ、手間と時間のかかる高級シードルが出来上がります。味は、本場ヨーロッパで造られているものに比べ、風味がよくフレッシュ感があるのが特長です。私たちが普段口にしている日本のリンゴは、ヨーロッパ産のものよりもジューシーでとても甘い。この果汁を使うことで、ヨーロッパ産とは一味違った日本独自の味わいに仕上がります。

再びシードルの歴史が動き出す。A-FACTORYの挑戦とは。 写真4 再びシードルの歴史が動き出す。A-FACTORYの挑戦とは。 写真5

使用するリンゴはもちろん全て青森県産。規格外品とはいえ、厳しい選定基準をクリアしたリンゴのみを使用している。ふじとジョナゴールドに限定して使用している青森A-FACTORYに対し、弘前吉野町A-FACTORYは品種を限定せず、色々な組み合わせのブレンドを行い、味に深みや複雑さを生み出している。

弘前市民に長年愛されてきた「吉野町煉瓦倉庫」。
国産シードル発祥の地で再びその製造がはじまる。

―――弘前吉野町シードル工房ではどんな取り組みがなされていますか?

工藤:「吉野町煉瓦倉庫」は戦後、シードルの生産が盛んに行われていましたが、当時の酒造メーカー撤退後は酒造りとは違った形で市民に長く愛されてきた建造物です。「弘前れんが倉庫美術館」として生まれ変わり、国産シードルが初めて大規模生産された地とされているこの場所でシードルの製造に携われることをとても誇りに思いますね。A-FACTORYでは青森市と弘前市にそれぞれシードル工房を持っていますが、ここでは青森市の工房とは異なった、より実験的な製品造りができる環境を整えました。青森市の工房では1種類の酵母を使用していますが、弘前市の工房では7~8種類の酵母を組み合わせて醸造しています。酵母は使用する種類が増えるとその分管理も大変ですが、味の奥行きや深みといった部分でバリエーションを生み出すことができるんです。

堀川:弘前吉野町シードル工房は、美術館横、カフェ・ショップ棟内で製造を行っています。カフェ・ショップ店内では、ガラス張りのタンクを見ることができ、製造されたシードルをお料理と楽しむことができます。A-FACTORYのシードルは、約12℃前後の温度で飲むことで香りと味の両方が際立ちます。ナッツや鶏肉などを使った軽めのおつまみとの相性がいいので、弘前を訪れた際にはぜひ立ち寄っていただきたいですね。また、併設された美術館ショップでは、製造されたシードルを買うことができ、お土産としても最適です。シードルに縁の深いこの場所で買ったシードルを飲むことで歴史を感じていただけたらと思います。

再びシードルの歴史が動き出す。A-FACTORYの挑戦とは。 写真6 再びシードルの歴史が動き出す。A-FACTORYの挑戦とは。 写真7

美術館横に建てられた建物には、工房とカフェ・ショップが併設されている。ミュージアムショップではオリジナルバッグや書 籍・グッズ、A-FACTORYで製造されたシードルなど、さまざまなお土産も販売されている。アップルソーダなどのノンアルコール商品も製造されており、お酒が苦手な人や子どもも一緒に楽しむことができる。

お酒を造るだけじゃない。
シードルを活用した地域活性化「シードルツーリズム」とは。

――シードルを活用した地域活性化の動きがあるそうですが…

堀川:実はJR東日本グループでは、東北デスティネーションキャンペーン期間中に「オンデマンド交通」という、駅や観光施設間の移動が便利になる新しい交通手段の実証実験を予定しています。弘前市の観光施設や飲食店など47箇所に乗降ポイントがあり、スマートフォンで行きたい箇所を予約することで、専用の車が乗降ポイントにお迎えに行くしくみです。そこで、オンデマンド交通を活用した「シードルツーリズム」というものを企画しています。事前にスマホ電子チケットを購入することで、弘前市のシードルを提供する飲食店などをスムーズにご利用いただけます。また、弘前市のりんご農園や施設の一部では試飲や見学も出来ます(事前予約が必要)のでシードルの文化を肌で感じ、飲食店で実際にシードルの味覚を味わうことで、新たな弘前の楽しみ方を発見してもらうことができると思います。

工藤:私たちA-FACTORYも、昨年2020年に立ち上げから10周年を迎えました。シードルを製造するうえでさまざまな実験を重ね、味に反映することで創業当初より格段においしくなっていることは確かです。県内のシードルメーカーも徐々に増え、シードルがひとつの観光コンテンツとして全国にPRできるまでに成長したことをとてもうれしく思います。アフターコロナの時代だからこそ、新しい楽しみ方を模索しながら私たちのシードルをより多くの方に楽しんでいただけるよう魅力を発信し続けたいと思います。

再びシードルの歴史が動き出す。A-FACTORYの挑戦とは。 写真8

新商品となる、A-FACTORY アオモリシードル弘前吉野町8(ミディアム)、9(ミディアム)、10(スイート)。早生りんごの特徴である爽やかさを活かし、口当たりと後味の良いシードルに仕上げた。ぜひ一度味わってみてはいかがだろうか。

A-FACTORY弘前吉野町シードル工房

  • A-FACTORY弘前吉野町シードル工房 写真

    住所 青森県弘前市吉野町2-11
       弘前れんが倉庫美術館 カフェ・ショップ棟
    電話番号 017-752-1890
    営業時間:10時~19時
    定休日:無休 https://www.jre-abc.com/wp/afactory/index/