2021年3月26日

IWATE MONO

|岩手県|

多くの出会いをつなぎ、
「たかたのゆめ」が育む希望の種

2011年3月に発生した東日本大震災の津波により、未曾有の被害を受けた陸前高田市。中心市街地のほとんどが流出し、農地の約7割が被災しました。少しずつ復興へと歩みを進める中、2012年にJT(日本たばこ産業株式会社)からある新種米が市に寄贈されます。そのお米は、支援する人々と被災地の人々の想いをつないで、「たかたのゆめ」と名付けられました。

もう一度、挑戦してみよう。新たな米づくりを復興の足がかりに

多くの出会いをつなぎ、「たかたのゆめ」が育む希望の種 写真1

中山間地域に位置する陸前高田市は、耕作地が限られ、小規模農家が多い地域。震災の爪痕も深く、市内の田んぼの多くが表土の流出や塩害などの被害を受けました。少しでも早く農地を復旧させるため、新たな土に入れ替えるなど、米づくりに適した田んぼに戻すための整備が急ピッチで進行。そうした中、復興支援としてJTから寄贈されたのが、「いわた13号」という品種の種もみ。東北地方に適した品種として開発されたものの、長い間、貯蔵庫に眠っていた新種米でした。

「最初は種もみが少ないので、1軒の農家にご協力いただいて種もみを増やすための試験栽培を行いました。翌年には、12名の認定農業者によって本格的な栽培が始まり、徐々に栽培面積を増やしていったんです。初めての品種ですので、指導する側も生産者側も手探りの状態でしたね」と振り返るのは、陸前高田市商政課ブランド推進係の大林孝典氏。こうして栽培を始めた「いわた13号」は、全国公募によって「たかたのゆめ」と命名され、陸前高田市でしか栽培されない地域ブランド米として発売されることになりました。

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「たかたのゆめは、イモチ病に強く倒れにくい特徴を持っていますが、この辺りの作付け品種はひとめぼれやあきたこまちが主流。栽培農家を増やすのに苦労しましたが、今では42名の農家が米づくりに携わり、280トンまで生産量を上げられるようになりました。農業の主力はやはり米ですから、新たな米が加わることで復興を後押しすることができる。とてもありがたかったですね」と、自らも栽培を手がける「たかたのゆめ」ブランド化研究会の会長・佐藤信一氏は力を込めます。農地の整備も終わらず、まだまだ先が見えない中で、新たな米づくりへの挑戦は、復興に向かう人々の背中を押しました。

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「たかたのゆめ」を応援する輪が、新たなつながりを広げていく

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陸前高田市のオリジナルブランド米として、新たに育てられることになった「たかたのゆめ」は、農業の復興にとどまらず、新しいつながりを広げるハブとしての役割も担っています。種もみを寄贈したJTをはじめ、伊藤忠商事、川崎フロンターレ、Yahoo!など、複数の企業がプロジェクトに参画し、「たかたのゆめ」の米づくりを支援。毎年行われている春の田植え式と秋の稲刈り式には、協力企業の多くが参加して地域の人たちと一緒に汗を流し、交流を深めています。

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「たかたのゆめは、いろいろな人とのつながりを生み、まちに元気をもたらしてくれる存在。栽培農家の広がりもそうですし、多くの企業に仲間に加わっていただいたことで、みんなで協力していこうという意識が生まれたと思います」と、陸前高田市商政課ブランド推進係の浅井敏克氏は話します。「たかたのゆめ」は現在、協力企業の多い関東圏を中心に、ずっと支援を続けている名古屋市や大阪などで販売を展開。その多くが、復興支援をきっかけに新たなつながりが生まれた場所だと言います。

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プロジェクトに協力するJR東日本も、岩手県内主要駅での販売会を皮切りに、積極的に支援を行ってきました。「首都圏では、高田馬場駅に田んぼを作り、近隣の小学校と連携して米づくりを行ったり、東京ステーションホテルの直営店で採用するなど、情報発信と販売支援を両輪でサポート。たかたのゆめを多くの方々に知っていただくことで、少しでも地域活性化のお手伝いができればと思っています」と話すのは、JR東日本盛岡支社の企画・地域共創グループの高橋伸。2019年には、東北・北海道新幹線の特別車両「グランクラス」の軽食のご飯に採用するなど、お米のおいしさを味わってもらえる場を提供しました。「炊きたてはもちろん、冷めてもおいしいたかたのゆめは、お弁当にぴったり。お客さまの評判も上々でしたね」(JR東日本・高橋)。

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たくさんの交流を広げ、何度でも訪れたくなるまちへ

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震災から10年。三陸地域の中で最も甚大な被害を受けた陸前高田市では、新たな商業施設や公共施設が建設されるなど、少しずつまちづくりが進んでいます。2019年の秋には、高田松原津波復興祈念公園内に、国営追悼・祈念施設、東日本大震災津波伝承館、そして道の駅高田松原がオープン。三陸沿岸地域のゲートウェイとして、多くの観光客を迎え入れています。

「道の駅の直営店である『たかたのごはん』は、“たかたのゆめをおいしく食べられるメニューを提供する”のがコンセプト。お米以外の食材も地元産のものを使って、陸前高田の魅力を発信しています」と話すのは、道の駅高田松原の統括マネージャー・大森まこと氏。『たかたのごはん』では今摺り米と言って、玄米から精米したてのごはんを炊き、そのおいしさを伝える工夫をするなど、購買につながるきっかけづくりを積極的に行っています。

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「たかたのゆめは単なるお米ではなく、多くのご縁をつないで、陸前高田のファンを増やしてくれる存在です。たかたのゆめを入り口に、交流人口を広げ、このまちをもっと元気にしていきたいですね」と、ブランド化研究会の佐藤氏は未来に思いを馳せます。
農業の復興のシンボルとして、絆をつなぐ橋渡し役として、そしてみんなを笑顔にするお米として。「たかたのゆめ」は、陸前高田に想いを寄せる人々の夢をのせて、このまちに希望という種を育んでいきます。

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左から、「たかたのゆめ」ブランド化研究会会長 佐藤信一氏、
陸前高田市 地域振興部 商政課ブランド推進係 主査 浅井敏克氏 / 課長補佐 大林孝典氏 、
JR東日本 盛岡支社 運輸部 事業課 企画・地域共創グループ 高橋伸、
道の駅高田松原 統括マネージャー 大森まこと氏

取材先情報

  • 高田松原津波復興祈念公園

    かつて7万本もの美しい松林があった場所に、震災によって亡くなられた犠牲者への追悼と鎮魂の思いを刻み、震災の教訓を未来へと伝えていくために作られた公園です。東京ドームおよそ30個分の広大な面積を誇る公園内には、国営追悼・祈念施設、東日本大震災津波伝承館、道の駅高田松原が建てられているほか、奇跡の一本松や旧道の駅タピック45などの震災遺構が保存されています。

    高田松原津波復興祈念公園 写真

    開園時間 4月1日~9月30日  9時~18時
         10月1日~3月31日  9時~17時
         (HPを参照ください)
    休園日 年中無休
    入園料 無料
    電話番号 0192-22-8911
    https://takatamatsubara-park.com/

  • 東日本大震災津波伝承館:いわてTSUNAMIメモリアル

    震災の記憶と教訓を次世代に伝え、復興の姿を世界に発信することを目的とした伝承館です。展示テーマは、“命を守り、海と大地と共に生きる”。三陸の津波被害の歴史や、東日本大震災津波の脅威や被害、発災からの状況を伝えるパネルや映像などを展示。津波や自然災害を自分ごととして捉え、命を守る教訓を学べる内容で構成されています。解説員が常駐していますので、案内を希望する方はお問い合わせください。

    東日本大震災津波伝承館:いわてTSUNAMIメモリアル 写真

    開館時間 9時~17時(最終入館16時30分)
         (HPを参照ください)
    休館日 年末年始、臨時休館日
    入館料 無料
    電話番号 0192-47-4455
    https://iwate-tsunami-memorial.jp/permanent/

  • 道の駅高田松原

    「三陸観光のゲートウェイ」として、2019年にオープン。陸前高田の水産物や農産物、三陸地域の特産品などを取り揃えています。館内には、物産・農産直販売エリア、海産物販売エリア、たかたのごはん、まつばら食堂、すなば珈琲、フードコートがあり、食事や買い物をゆっくり楽しむことができます。

    道の駅髙田松原 写真

    営業時間 9時~18時(HPを参照ください)
    ※感染症対策のため時短営業となる場合がございます。
     予めご確認ください。
    休館日 年中無休(一部店舗を除く)
    電話番号 0192-22-8411
    https://takata-matsubara.com/