時は鎌倉。執権・北条氏が武家政治を支えていた時代、鎌倉幕府の命によって海を渡った者たちが、偶然発見したのが知内温泉だった。時をさかのぼること約800年前。宝治元（1247）年の開湯という、北海道でいちばん歴史の古い温泉だ。

　以来こんこんと湧き続ける知内の湯は、湯量豊富で成分が濃厚。しかも2カ所ある内湯に引く源泉は、それぞれに個性が違うというからぜいたくだ。まず「上の湯」の源泉に含まれるのは、美肌によいとされるミョウバン成分。さらに古い角質を落とす炭酸水素塩のダブル効果で、肌がつるつるすべすべに。もう一つの「下の湯」源泉には鉄分がたっぷり。切り傷やケガ、筋肉痛などに効くと、お客様からも評判だとか。

　成分の濃さは、内湯の床を見れば一目瞭然。湯船からあふれた温泉の成分が堆積して描く、不思議な波模様。長い年月、源泉かけ流しを続けているからこその勲章のようなものなのだ。

　道南の秋はかけ足で過ぎ、気づけば長い、長い冬。しばれるねぇと言いながら、真っ白い雪が降り積もる露天で温もるのも一興だ。ちょっと熱めの知内の湯が冷えた体にじんわりと染みわたり、極上の心地よさへと変わってゆく。