北アルプスの名峰、朝日岳や白馬岳が背後に控える小川温泉元湯。自然に囲まれる一軒宿は、古くから地元の人々に愛される名湯でもあった。

　「今も近隣の方々が、ひんぱんに日帰り入浴にいらっしゃいます。顔馴染みの方も多いです。自宅のお風呂代わりといいますか、生活の一部になっているのでしょうね」と笑顔で話すのは、湯守の相川画太さんだ。

　温泉には炭酸水素成分が豊富に含まれており、肌の上をすべるような入浴感やさっぱり感が気持ちいい。一方でナトリウム成分も多く、湯上がり後にほどよい温もりが持続するのも小川の湯の特徴。春や夏でもなんだか手足の先が冷えて……という方には、一度試してもらいたい温泉だ。

　館内にも湯処は豊富だが、少し離れた場所にある2つの野天風呂なら、自然の中の秘湯感をリアルに体感できる。一つは野趣あふれる洞窟風の混浴野天、もう一つは渓流を間近に望む女性専用の野天風呂。湯に浸かれば、川の瀬音がBGM。春から初夏、そして盛夏へ、山の木々も輝きをいっそう増してゆく。