日本でも有数の国際芸術祭である「大地の芸術祭 越後妻有つまりアートトリエンナーレ」。その舞台となる十日町市に松之山温泉は湧いている。自然豊かな里山には、さまざまな常設のアートスポットが点在し、それらをめぐるのも松之山の旅の楽しみ。棚田やブナ林が日ごとに輝きを増すこれからは、里山めぐりに格好の季節だ。

　「温泉街やまつだい駅には電動自転車のレンタル（別料金）もあります。歩くにはちょっと遠いブナ林やアート作品を見るのにもおすすめですよ」と話すのは、湯守の柳一成さん。ひなの宿ちとせは明治期の創業から、およそ120年の老舗。日本三大薬湯とも呼ばれる松之山の湯を、温泉街一丸となって守っている。

　その松之山の湯は肌ざわりが濃厚で、香りも独特な個性派だ。約92度という高温で湧くため、湯船の温度もやや熱め。しかしこれが、地元の人にとってはくせになるという。露天に浸かりのびのびと体を伸ばせば、里山を吹き渡る風が気持ちいい。聞けばこの湯は、太古の海の水の生まれ変わりだとか。想像もおよばないような、はるか遠い時代の地球の記憶が、この湯には宿っているのかもしれない。