GLOBAL 国際事業

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04

INTERVIEW 4
インド高速鉄道プロジェクト-2

04 INTERVIEW 4 インド高速鉄道プロジェクト 久慈 聡 2002年入社(総合職)

INTERVIEW4

インド高速鉄道
プロジェクト

久慈 聡

SATOSHI KUJI

  • 日本コンサルタンツ(株)
  • 出向
  • インド高速鉄道推進本部
  • Manager(Resident Engineer)
  • 2002年入社(総合職)

MISSION

急速な経済発展を続けるインドで、交通インフラ拡充の一手として期待を集めている高速鉄道の建設。その第1弾となるのが同国西部の大都市、ムンバイ〜アーメダバード間の約500kmを結ぶ路線で、2015年12月の日印首脳会談で交わされた覚書により、日本の新幹線システムが採用されることになった。そして、この大規模事業で重要な役割を担っているのが、JR東日本をはじめとする日本の鉄道会社10社の出資により設立された日本コンサルタンツ(JIC)である。日本工営(株)および(株)オリエンタルコンサルタンツグローバルとの3社JVで進められるインド高速鉄道プロジェクトにおいて、JICが担うのは高速鉄道に関する技術的な支援。5年半ほど前からJICに出向している久慈は、JR東日本に入社以来、新幹線の線路に関して様々な知識と経験を蓄積してきた。その知見を最大限に活かし、インド高速鉄道でも日本並みの高品質な軌道を敷設すると共に、日本の新幹線技術の現地化を実現するのが彼が担うミッションである。

日本の新幹線技術をインドに移植する。

日本の新幹線技術をインドに移植する。

久慈がインド高速鉄道プロジェクトの一員になったのは、JICに出向した2017年9月だった。この頃は、軌道の標準設計や現地の協力会社を決める入札の準備が本格化しており、久慈は2ヵ月おきに日本とインドを行き来して設計固めや入札資料の作成などに取り組んだ。こうした作業を5年ほど続けて大枠を決め、2022年12月からはインド現地の事務所に赴任し、軌道工事の施工監理に従事している。
「レジデントエンジニアとして、発注者(インド高速鉄道公社)や工事を請け負う協力会社との調整業務を主に担っています。現在は設計段階のため、工事計画等の文書レビューが中心ですが、設計が承認され施工段階に入ると、現場の工事進捗管理や品質・安全管理なども担うことになります」
レジデントエンジニアとは日本の現場所長のようなポジションで、その下に2〜3人の補佐役と、4〜5人からなる検査チームが複数つく。本人以外はすべて現地スタッフで、日本での役職に比べて大きな裁量が与えられるとともに、マネジメント面の役割も大きく、そこに海外プロジェクトの醍醐味と難しさを感じるという。

インドは、総路線長や輸送密度において世界5指に入る規模を有し、歴史も日本より長い鉄道大国で、技術面でも独自の進化を遂げてきた。車両の等級や行先の異なる長距離列車を高頻度で運行する高度な管理技術などは、インド特有のものといえる。そのため鉄道関係者は強い誇りを持っているが、同時に日本の鉄道技術に対する大きな信頼も感じると久慈は話す。
「調達材料や施工方法などで意見が対立することもありますが、日本の技術を信頼し、日本の新幹線技術を学ぼうという意欲に溢れた現地スタッフが多いことに心強さを感じています。そうした姿勢を尊重して、こちらから一方的に押しつけるのではなく、互いの理解を深めながら技術導入を進めていくつもりです」

また、日本が個別最適の技術に優れているのに対し、混沌とした現状をまとめ上げ総合的な解決策を見出す点など、インドに見習うべきことも多いとの気づきがあったようだ。
「今、様々なグローバル企業でインド出身者が経営トップとして活躍していますが、多様性の中で合意形成を図るという、この土地で育まれた考え方や姿勢が大きく影響しているように感じます。今後、海外関連の仕事をする上でも、こうした点はぜひ学びたいと思っています」

遂に叶った技術による国際貢献の夢。

遂に叶った技術による国際貢献の夢。

久慈はもともと国際貢献への意欲が強く、大学時代には農業インフラの整備に関わる農業土木を学び、1年休学して西アフリカのブルキナファソでボランティア活動なども行っている。鉄道に興味を持ったのは、このアフリカ行きに必要な資金を稼ぐため、某私鉄の線路修繕のアルバイトをしたのがきっかけだった。
「体力的にはきついし、目立たない仕事ですが、縁の下でインフラを支える仕事に大きなやり甲斐を感じました」

農業と鉄道と分野は異なるが、インフラの整備・維持を担うことでは共通点がある。ただ、久慈が入社した頃のJR東日本はまだ海外事業に積極的ではなく、「いつか国際貢献に関わるチャンスがあれば」とポジティブに考えて入社を決めた。そして新幹線の線路メンテナンスや新幹線建設などの知識や経験を積むうちに、JR東日本でも海外事業が広がり始め、入社13年目に国際事業本部に異動。さらに15年目からインド高速鉄道プロジェクトの一員となった。
「JR東日本は規模の大きな会社で、色々な仕事があり、また進化も続けています。夢を持ち続ければいつか叶えられる会社だと実感しました。国際貢献をしたいと言っても、自分に何らかの力がなければ貢献などできません。私も入社から10数年、新幹線の線路に関わる仕事で知識や経験を積んできたからこそ、今こうしてインドで新線建設を通じて、地域づくりに携わることができるようになりました。」
建設に参加した東北・北陸新幹線が開業したときの、地域の方々の嬉しそうな顔。東日本大震災で被害を受けた東北新幹線を復旧させたときの、沿線の方たちからの感謝の声。インドでも高速鉄道開業に対する地元の期待を感じることは多く、地域に喜びをもたらすことを最大のモチベーションに久慈は日々仕事に取り組んでいる。

FUTURE

軌道の現地工事はまだ準備段階にあるため、ゼロからチームを立ち上げたり、発注者や協力会社との協議を通じて契約内容を判断(決定)したりと、日本では経験できないような幅広い業務を担っています。試行錯誤の連続で苦労も多いのですが、すべてが自分の糧になっているのは間違いありません。現地スタッフ含めて関係者が100%の力を発揮してくれなければプロジェクトが円滑に進まないので、皆にとっての働きやすい環境づくりや、信頼関係の構築にも配慮するようになりました。鉄道プロジェクトは、建設後も現地スタッフの手で確実に保守メンテナンスが行えるようになるまで息の長い支援が求められます。そのために今後も、様々な海外鉄道プロジェクトで経験を積み、各地の地域づくりや人づくりに挑戦したいと思っています。
また、国内業務に戻ったときは、海外志向の社員の育成や、外国人研修生の受け入れ、技術規格類の国際標準化などで、自分が培ってきた経験を活かせればと考えています。

FUTURE

PROFILE

大宮新幹線保線技術センターで新幹線線路の工事や検査を担当したのが軌道技術者としてのスタートで、次に大宮支社で線路設備の予算管理を担当。その後、鉄道・運輸機構に出向して東北新幹線・八戸〜新青森間の施工監理を担当し、北陸新幹線・長野〜金沢間の開業検査にも加わる。2011年の東日本大震災時には仙台新幹線保線技術センターに在籍しており、被害を受けた東北新幹線の復旧工事に工事科長として従事した。2015年に国際事業本部に異動して海外鉄道事業者との技術交流などを担当。2017年に日本コンサルタンツ(株)への出向となり、インド赴任後は、軌道の施工監理を行う現地事務所の副所長としてプロジェクトに携わっている。

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