肝がんの症状・治療について

肝がんとは

肝がんの80%以上は、慢性肝炎または肝硬変がある肝臓に発症します。そのうち、約70%はC型肝炎ウイルスが陽性、約15%はB型肝炎ウイルスの陽性を示す肝炎ウイルス保有患者です。アルコール性肝疾患、原発性胆汁性肝硬変症、脂肪肝(NASH)から、発がんするケースも増加しています。

肝がん高危険群

早期発見のためには、肝硬変や慢性肝炎の患者さまが定期的に通院することが重要です。また、高危険群の患者さまへは、肝がんの発症の抑制するために加療を行っています。具体的には、C型慢性肝炎に対するインターフェロン治療、インターフェロンフリー経口剤、B型慢性肝炎に対する核酸アナログ治療などです。

肝がんの診断

当院では通院中の患者さまに対し、血液検査での腫瘍マーカー(AFP AFP-レクチン分画、PIVKA-Ⅱ)測定をはじめ、腹部超音波検査、造影超音波(ペルフルブタン)検査、Dynamic CT、EOB-MRI検査を組み合わせて、肝がんの検査を行っています。また、患者さまのリスクに応じて、定期的に検査を行っています。
外来での検査によって肝がんの疑いが強い症例の場合には入院いただき、腹部血管造影や血管造影下CT(肝動脈CT、門脈CT)を行ったうえで、肝がんの性状やステージ等の診断に活用します。

肝がんの進行度

肝がんの進行度は腫瘍経、腫瘍の数、脈管侵襲の有無、遠隔転移の有無よりステージⅠからステージⅣに分けられます。

肝がんの治療

肝がんの治療は主に初期がんを対象とした根治的治療があり、内科的治療としてラジオ波焼灼療法(RFA)が、外科的治療としては外科手術や肝移植があります。
また、根治できないがんに対しては、肝動脈塞栓(そくせん)療法(TAE,TACE)、動注化学療法、放射線治療、そして抗がん剤による治療があります。
治療は肝がんの大きさや個数、肝機能の状況を診ながら最適な方法が決められます。

経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)

肝がんや転移性肝がんに対して、腹部超音波ガイド下直径1.5mm大の電極針を病変に進入させ、電極針と対局板の間に通電することで穿刺針(せんししん)周囲に直径2cmから3cmの球状に焼灼させる方法です。治療時間は病変数や腫瘍型によって異なりますが、おおよそ1時間~2時間で終了します。手術中は点滴よりも鎮静薬と局所麻酔薬を用いた加療が行われます。痛みが強い場合は静脈から麻酔薬を投与して、患者さまが眠った状態で加療を行います。治療後、腹部へのCTにて焼灼の有無を確認して治療終了かを判定します。問題なければ、最短で治療翌日から3日後には退院可能です。当院ではRFA治療経験が豊富な2名の医師が加療を行います。

外科手術

肝細胞がんの手術は、肝がんの個数が少数で、手術に耐えられる肝機能を持つ患者さまに対して行われます。ラジオ波の治療が難しい大きな肝がんでは、手術が最も有効な治療と考えます。
肝がんに対して手術を行えるかどうか、どのような切除方法を選択するかは、腫瘍の場所、大きさ、肝臓の機能などを基に決定しています。
肝がんはB型肝炎やC型肝炎などに罹患(りかん)して、慢性肝炎や肝硬変などの障害をきたした肝臓に発生することが多くあります。そのため、ICG負荷試験を行って正確に肝臓の機能を評価するとともに、手術後にどの程度の肝臓が残存するか肝容積を測定するなど、手術前に綿密な計画を立てています。肝がんの手術は、手術中に超音波を駆使して腫瘍の支配血管を系統的に切除することを基本としています。肝切除の適応を判断したり、手術を行ったりするのは、高度な専門性を必要とするため、当院では肝胆膵(かんたんすい)を専門とする2名の医師が診療にあたります。

肝動脈塞栓(そくせん)術(TAE,TACE)

肝がんを根治的に加療できない場合、腫瘍の80%の壊死(えし)を目標にした、肝機能を温存する治療法です。太い動脈から、経皮的にプラスチックの柔らかいカテーテルを肝がんの栄養血管まで先進させて塞栓物質(抗がん剤の動注後のこともある)を注入して、腫瘍の壊死をはかる治療法です。局所麻酔をして加療を行います。治療時間は1時間半~2時間程度です。治療後、発熱等の副作用が軽減してから退院となります(おおむね1週間~2週間)。

化学療法

化学療法は、前記までに解説した局所治療が適応にならない患者さまや、肝外転移を有する患者さまに適応されます。薬物療法は肝動脈から注入する動注化学療法と末梢(まっしょう)静脈や、経口による全身化学療法に分けられます。
経口の抗がん剤としてはソラフェニブが、全世界のランダム化比較試験で初めて生存期間の延長が認められました。当院においても2009年6月より患者さまを選別して加療を行っています。

当院の治療成績

  • 2014年度 ラジオ波焼灼療法(RFA)件数
    • 原発性肝がん…53件
    • 転移性肝がん…8件
  • 2014年肝がん手術
    • 原発性肝がん…6例
    • 転移性肝がん…11例
  • 2014年度 肝動脈塞栓術(TAE,TACE)件数
    • 原発性肝がん…29件
  • 肝細胞がん 経口抗がん剤 ソラフェニブ導入のべ人数…28件

各診療科の対応

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