股関節専門外来

特色

股関節専門チーム

長年にわたり豊富な手術症例を積み重ねてきたJR東京総合病院股関節チームは、股関節治療、股関節手術に特化したプロ集団です。
経験豊富な医師、看護師、手術スタッフ、リハビリスタッフが一丸となって全力で股関節治療に当たります。

股関節のイメージ

図1)股関節のイメージ(正面図)

股関節の疾患、治療法は解説をご参照ください。
股関節が痛い、最近動きが悪くなった、他の病院で股関節の疾患と診断され詳しく状況を知りたい、股関節手術が必要といわれた、等々、股関節に関する診察は我々、股関節専門医をお訪ねください。

スタッフ紹介

整形外科担当部長 深谷 英世(ふかたに えいせい)

外来担当日 :(月)(火)

深谷英世(ふかたに えいせい)

変形性股関節症や大腿骨頭壊死などに対する人工股関節手術(THA)、また臼蓋形成不全に対する寛骨臼回転骨切り術(RAO)を専門とします。

とくにTHAでは「一生使いやすい股関節をつくる」ことを信条としています。股関節の状況は患者さんによってさまざまです。人工関節をただ正確な位置に入れるだけではなく、関節可動域をどう改善するか、筋肉のバランスをどう矯正するか、などは術後の活動性を大きく左右します。また、とくに大腿骨の形状は非常に個人差があり、最適なインプラントは患者さんによって異なります。したがって、当院では国内外4社の最も信頼できるメーカーを採用し、さらにそれぞれのメーカーで異なる形のインプラントが複数あるので、術前に綿密にデザインしてその患者さんに最も適したインプラントを選択します。そうした、可動域やバランスの調整、インプラントの自由度を最も行いやすい方法として、当院では「MIS(最小侵襲手術)後方アプローチ」を採用しています。後方アプローチは他のアプローチと比較して、特に大腿骨の操作に非常に余裕があるため、前述のインプラント選択の自由度が大きいのが最大のメリットです。また、視野、展開がよいため出血、手術時間、骨折などのリスクが非常に少ないという利点も見逃せません。

一方で、これまでの一般的な後方アプローチでは、キズや筋肉の切開が大きく回復が遅い、脱臼のリスクがある、といった欠点がありました。それに対して、当院の後方MISアプローチでは、皮膚切開は7~8㎝と小さく、さらに筋肉、靭帯、腱を最大限温存します。とくに関節を安定させる上で重要な梨状筋腱、共同腱(上下双子筋、内閉鎖筋)、関節包靭帯などを切らずに温存する(CPPアプローチとも呼ばれます)ことによって、術後の筋力や歩行の回復が飛躍的に早くなり、また脱臼の心配もほぼ無くなっています。

その結果、これまで術後に必要とされていた様々な日常生活の制限(正座、自転車、しゃがみこみ、などの注意点)は、ほとんど不要で、ゴルフ、テニス、登山、水泳など様々な運動への復帰も可能となっています。もちろんそれぞれの回復状況や時期により程度は様々ですので、診察のさいにしっかり確認、説明いたします。

その他、些細と思われることでも必ず丁寧にお答えしますので、遠慮なくご質問頂ければと思います。

解説

変形性股関節症とは…

加齢変化によって、あるいは生まれつき関節の"かみ合わせ"が悪い「臼蓋形成不全」によって軟骨がすり減った状態です。軟骨がすり減りはじめた「初期関節症」、すり減りが進行した「進行期関節症」、さらには骨そのものの変形も進んだ「末期関節症」へと進行していきます。

変形性股関節症のイメージ

図2)変形性股関節症のイメージ

  • 股関節痛の原因は変形性股関節症だけではなく、大腿骨頭への血流が阻害されて生じる大腿骨頭壊死症、関節リウマチ等さまざまです。したがって、股関節痛はなるべく早めに原因を確かめ、適切に対処する必要があります。
  • たとえば変形性股関節症であれば、初期の段階では副作用の少ない鎮痛剤等をうまく活用しながら、水中ウオーキング等で筋力、筋バランスをアップさせる保存治療が選択されます。進行期~末期の場合は人工股関節手術の適応です。また、若年者の臼蓋形成不全に対しては、自分の骨を利用して関節の形を整える寛骨臼回転骨切り術(RAO)を行います。

人工関節とは…

人工股関節図のイメージ

図3)人工股関節図のイメージ

  • 痛みの原因となるすり減った関節を取り除き、チタン合金でできた図のようなインプラントを骨に埋め込みます。(骨盤側はカップ、大腿骨側はステムと呼びます。)さらに関節の接合部分には、カップにはポチエチレンでできたライナーと呼ばれる受け皿を、ステムにはセラミック(または合金)でできた骨頭ボールを付け、合体させて完成です。

当院の症例

右側術前

右側術前

右側術後

右側術後

寛骨臼回転骨切り術(RAO)とは…

寛骨臼回転骨切り術のイメージ

図4)寛骨臼回転骨切り術のイメージ

上図のような、骨盤側の受け皿の「かぶり」が生まれつき浅い「臼蓋形成不全」の場合、軟骨がすり減りやすく、痛みが出ても放置していると若くして変形性股関節症となりやすいため、受け皿の一部を骨切りして外側にスライドさせ、右図のようにしっかりかぶせてあげる手術が適応となります。これによって変形性股関節症への進行を防ぎます。ただし、軟骨がまだすり減っていない症例、軟骨がしっかりしている50歳代未満の方が適応となります。

当院の症例

右側術前

右側術前

右側術後

右側術後

当院の人工股関節手術の特長

(1)豊富な症例数

  • 2018年~2022年 年間平均347例

(2)短い手術時間と少ない出血量

長年の技術の積み重ねと、手術スタッフとのスムースな連携によって無駄が省かれ、結果として短い手術時間が実現しています。手術時間が短いことは、出血が少ない、術後の痛みが軽い、リハビリの進行が早い、感染や肺塞栓といった合併症リスクが低減する、等、大きな利点があります。もちろん、手術を急ぐことが目的ではありませんので、難しい症例では相応の時間を要します。

(3)最小侵襲手術(MIS)

通常7~8cm程度の短い皮膚切開で行います。キズが小さいこともまた、治癒が早い、痛みが少ない、外観がよい、等メリットが大きいため、当チームでは原則MISを採用しています。また、皮膚だけでなく、筋肉や腱などの大切な関節周囲組織を最大限に保護することにより、脱臼などの合併症を予防し、ほとんど制限のない日常生活への復帰を支援します。

(4)長寿命インプラント使用

原則的にチタン合金を用いたセメントレスタイプのインプラントを用い、関節面(摺動面)はセラミックとポリエチレンの組み合わせを用いています。このポリエチレンの摩耗が直接寿命にかかわる部分ですが、現在最も長寿命と考えられる素材、経年劣化を予防する“ クロスリンク超高分子量ポリエチレン  ”、MPCポリマーと呼ばれる表面加工を施し、摩擦を極力排除した“ アクアラ ”等)を使用して、症例ごとに最適なインプラントを検討し選択しています。これらにより、若年者であっても積極的に人工股関節手術をご提案できるようになりました。

クロスリンク超高分子量ポリエチレンライナー

クロスリンク超高分子量ポリエチレンライナー

アクアラライナー

アクアラライナー

(5)専門病棟での入院、および術後リハビリテーション

股関節手術に特化したノウハウを持つ看護チームが常駐する専門病棟にて、安心して入院生活を送って頂けます。また、広大なリハビリテーションフロアにて、専属の理学療法士、作業療法士が股関節専門プログラムに基づいて最も効率的な筋力回復、日常生活への復帰を支援します。

リハビリテーション1

リハビリテーション1

リハビリテーション2

リハビリテーション2

診療

(火)(木)14時~ 股関節専門医が診察

事前に電話予約センター(03-3320-2211 午前9時~午後4時30分 休診日を除く)にて電話予約を受け付けております。