呼吸器内科

特色

呼吸器内科疾患には、短期間で治る病気(急性上気道炎〜気管支炎、肺炎、結核、気胸、喘息発作、急性呼吸不全など)から、長い治療や管理を要する病気(気管支喘息、慢性閉塞性換気障害:COPD、肺癌を含めた肺腫瘍、間質性肺炎、肺循環障害、慢性呼吸不全など)まで多くの種類の疾病があり、当科ではすべての疾病を苦手にせず、『不得意分野を持たない』をモットーに診療しております。

外来患者さまは毎日100人以上来院されますが、予約外の患者さまも手伝い当番呼吸器科医師が対応して極力お待たせしない体制を設けております。指定医師のある患者さまは事前に予約していただければ原則予約担当医師が診察いたします。医師を指定せずとも、全スタッフがカルテおよび状況を共有できる体制でありますので、体調が悪いときなど急を要する際には指定医の予約を取れるまで待たずに受診するようお勧めします。指定医師への相談が必要な際には、外来診察医師が必要に応じて連絡を取ることも可能です。

入院患者さまも多く、呼吸器内科病棟(12階)では医師と看護師が連携をとりながら安全な医療を提供しております。毎週2回(月曜、木曜)、夕方からのカンファレンスでは、入院患者さまの画像やデータを確認して検査方法の検討、診断のありかた、治療方針を検討しています。科内の風通しはよく、診る医師によって患者さまの治療に不利益が生じないように、常に指導医が若い先生の診療に目を配っております。

午前外来が終わり次第、午後は基本的に検査時間となっております。肺がんを含めた胸部異常陰影精査、感染症の原因精査、間質性肺炎の精査などを目的として気管支鏡検査を毎週月曜、火曜、(水曜)、木曜に施行しております。また、肺高血圧症を含めた肺循環異常の有無を評価するために、右心カテーテル検査を毎週木曜日に施行しています。右心カテーテル検査を得意としているのも当科の特徴です。多くの呼吸器疾患が進行すると、息苦しさを強く感じるようになってきます。循環動態の異常がさらに状態を悪化させていることもあり、そのような可能性がある場合には、心臓疾患の鑑別も兼ねて右心カテーテル検査を施行して、治療法を工夫するようにしています。

疾患と治療法

◇間質性肺炎・肺線維症
間質性肺炎は肺という臓器そのものの病気です。その原因は、遺伝的要因、膠原病を含めた自己の免疫異常、薬剤性、吸入抗原による過敏性と明確なものから、原因が不明なもの(特発性)まで多岐にわたります。原因を除去できるものは原因除去が治療の最優先であり、それが不可能な例や慢性例では炎症を抑制するステロイド剤や免疫抑制剤が治療の中心になります。一方、肺線維症例は近年では炎症抑制より抗線維化薬投与が有効であることが解っております。大切なことは明確な診断を行い、長期的な観点から治療法を決定することです。本当に薬が必要なのか?もし必要なら、どのタイプの薬をどのタイミングから使用するのか?さらには治療はいつまで続けるべきなのか?を各症例ごとに検討しています。
検査方法として胸部CT、呼吸機能検査が重要で、当院では必要時に即時に検査ができる体制が確立しています。多くの症例は胸部CTから診断の予測が可能で、臨床経過、血液検査、画像所見のみで診断が可能な症例もありますが、正確な診断後の治療方針決定を目的に、必要に応じて気管支鏡検査または呼吸器外科に依頼して胸腔鏡下肺生検を行います。安全かつ適切な診断、治療には多くの経験が必要です。当科は間質性肺炎患者さまが多く、患者さまの病態、全身状態を鑑みて安全な診断治療を提供しています。検査にあたりましては、必ず患者さまの気持ちを配慮しております。もし検査自体が危険を伴うと判断される場合には、臨床診断のみで治療を行うこともあります。

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◇急性呼吸不全・間質性肺炎の急性増悪
基本的には呼吸器内科病棟で治療・管理いたしますが、人工呼吸器管理が必要となるような重症の際には当院の集中治療室(ICU)で対応いたします。
間質性肺炎の急性増悪時には治療を即座に導入することが重要です。早期の適切な治療導入、綿密な全身管理に加えて先進的な医療を施し、治療成績が高くなるよう日々努力しております。

◇サルコイドーシス
全身のいろいろな臓器(頻度が高いのは両側肺門リンパ節、肺、眼、皮膚、唾液腺、心臓、神経、筋肉など)に、「非乾酪性類上皮細胞肉芽腫」と呼ばれる病変が生じる原因不明の病気です。サルコイドーシスの本体は、感染症ではなく個体のもつ異常な免疫反応と推定されており、多くの方が全身治療を要することなく自然軽快する疾患です。肉芽腫がどこに生じるかにより症状は患者さまごとに異なります。眼ではぶどう膜炎が特徴で霧視や飛蚊症から発見されることも珍しくありません。眼病変に対しては点眼薬のみで管理できることがほとんどですが、中には点眼薬のみでは効かないケースもありますので、そのような場合には専門的知識のある眼科医師による診断治療が必要です。両側肺門リンパ節・肺病変に対しては基本的に無治療・経過観察となりますが、呼吸器症状が強い場合や経時的に進行するような場合にはステロイド剤などの全身治療が必要となります。当科は前部長(現副院長)の山口哲生医師および現部長の山田が特に本疾患を専門にしていることもあり、本疾患に関する日本有数の病院・科となっています。

◇肺癌・肺腫瘍・縦隔腫瘍・胸膜腫瘍
2012年の統計によりますと、わが国の悪性腫瘍の死亡原因として肺がんは男性で第1位、女性で大腸がんに次いで第2位、男女合計で第1位と高いのが現状です。
肺がんの治療方法には、外科的手術、化学療法(抗癌剤治療)、放射線療法がありますが、肺がんの種類(組織型)や進行の程度(病期)によって適切な治療法を選択できるかどうかによりその後の経過が大きく変わってきます。特に外科的手術が可能な症例では、早期診断・早期治療が望ましいため、当科では呼吸器外科との連携を密にし、診断後は速やかに手術を受けれる体制にしています。
以前は肺がんで手術ができないと、あきらめるしかないと思われていました。しかし近年、治療法の進歩に伴い肺がん患者さまの生存期間の延長がもたらされています。多くの抗がん剤が開発され、今後もさらに治療成績が向上することが期待されます。またどの種類の肺がんに、どの抗がん剤が最も効果的であるかもわかってきつつあります。そのため、進行肺がんの場合には、それぞれの患者さまに対して最適な抗がん剤を選択できるか(個別化治療)が生存期間を大きく左右することになります。
当科は指導医すべてが癌治療認定医であり、肺がん治療導入にあたりましてはカンファレンスを通じ、1人1人の患者さまにとっての最適な治療法を決めることにしています。
高齢や既存の合併症などで手術や化学療法が耐えられないと判断された場合には、放射線療法も検討いたします。その際には放射線専門医、日本放射線腫瘍学会認定医と合同協議してライナックによる放射線治療を行います。また定位照射療法が望ましい例や先進放射線療法を希望される例には、専門施設へ紹介しております。
以前はがん緩和とは終末期における医療と考えられていましたが、近年は患者さまの精神的苦痛の軽減を含めてより早期からの緩和医療導入が患者さまの予後を改善することが統計学的にも指摘されています。もちろん症状を伴う患者様に対しても治療初期から症状緩和のための治療を開始しています。症状を取り除くのが難しい場合には緩和ケアチームと協力し、少しでも患者様の苦痛が和らぐように心がけています。
また毎月、呼吸器内科、呼吸器外科、放射線科、病理科による合同カンファレンスにて手術した肺がん・肺腫瘍・縦隔腫瘍症例を中心に診断・治療の評価を行い、さらに良い治療を提供できるよう考え続けております。
外来では一般外来の他、肺がんセカンドオピニオン外来、胸膜中皮腫を含めたアスベスト外来を毎週木曜の午前中に当科部長である山田嘉仁が担当し、少しでも多くの方により良い診断・治療を提供できるよう心がけています。

◇肺炎・胸膜炎を含めた感染症
肺感染症に対する近年の抗生剤治療はかなり進歩し多くの症例が外来で治療・管理可能となっております。もし入院が必要な際には即日入院していただき、安静のうえ即日治療を開始します。治療の最も重要なことは、肺炎の原因微生物を特定し、その微生物をたたくことです。原因が細菌、ウイルス、真菌のいずれかによって、有効な治療薬は全く異なります。原因となっている微生物の見極めは必ずしも容易ではありませんが、適切な治療薬を必要量、必要期間使用し、極力短期間の治療を目指しております。
近年問題となっている誤嚥性肺炎に対しては、肺炎治療だけではなく、入院時に嚥下機能を評価し、必要に応じてリハビリや薬物治療を導入しています。
当科には結核病床がありますが、施設的な問題から2床のみとしているため、長期入院治療を要する際には専門病院へ依頼しています。2床のみでも診断および治療導入には支障がなく、紹介患者さまには十分な医療を提供できております。また病室は完全陰圧室ですので、他者へ感染する危険性はありません。

◇気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)
気管支喘息は、気道の慢性的な炎症と気道周囲平滑筋収縮により気道が狭くなり、ヒューヒューという喘鳴とともに発作性の息苦しさを感じる病気です。深夜から明け方にかけて悪くなり、昼間は比較的おさまることが特徴です。ステロイド吸入薬を始め、多くの吸入薬が登場したことにより、コントロールは飛躍的に改善し、ほとんどの患者さまが日常生活を支障なく過ごすことが可能となっています。コントロールができていない方は、服薬方法、喫煙、ペット飼育などの生活環境に問題がないかの確認が必要です。また喘息症状を呈する他の病態が潜在している可能性があります。特に小児喘息の既往がない方はアレルギー以外の原因が関与していることがあります。
一方慢性閉塞性肺疾患(COPDは長い喫煙生活が原因となる病気です。肺はスポンジのように空気が入っている小さな袋、すなわち肺胞がつまっている臓器ですが、喫煙によって肺胞の壁が壊れて大きな袋(気腫化)を形成するようになると酸素のやり取りが不十分になります。また気道にそった肺胞の壁は縮もうとする気道を引っ張る糸のようなもので、肺胞が壊れることで糸がちぎれて気道が狭くなってしまいます。喘息と違って、COPDの気道狭窄は時間による変化がないのが特徴で、喫煙歴があって階段や坂道などを登るときに息切れを感じる方は、COPDが隠れていることがありますので医療機関でご相談下さい。COPDを罹患されている人は、健常の人よりも加齢による呼吸機能低下が著しいことがわかっています。COPDの治療も吸入薬による治療が主体ですが、治療の目標は症状の改善だけでなく、将来の呼吸機能低下を予防することにあります。

◇慢性呼吸不全・在宅酸素療法
肺結核後遺症、肺気腫、肺線維症などで在宅酸素治療が必要な方には月曜日午後(天野)と火曜日午後(山口)で在宅酸素外来を開いています。
同じ時間帯に集まっていただくことで情報交換の場ともなっています。御持参の酸素で足りない場合には、内科処置室のベッドで酸素吸入してお待ちいただきます。

現在、当科で在宅酸素療法を施行されている患者さまは90名(平成21年4月現在)です。
また在宅で人工呼吸を使用されておられる患者さまは6名で訪問看護を行っています。

◇睡眠時無呼吸症候群(SAS)
朝方の熟眠感の欠如や日中の眠気の原因としてSASが潜在していることがあります。いびきのひどい方や肥満傾向のある方に多く、家族や周囲の人から睡眠中に呼吸が止まっている、と指摘された場合には検査をお勧めします。夜間の無呼吸からくる低酸素やストレスが3大成人病である高血圧、高脂血症、糖尿病の原因・悪化要因となっていることも指摘されています。SASの治療方法はCPAPという器械を睡眠中にマスク装着のうえ使用する方法が主ですが、耳鼻咽喉科での口蓋形成手術、歯科口腔外科でのマウスピース装着療法など患者さまにあった治療法を考えます。検査方法はまず自宅で行える簡易スクリーニング検査を外来で行います。正確な診断が必要な場合や、簡易検査で治療方針判定が難しいような場合には1泊入院のうえ精度の高いポリソムノグラフィー(PSG)検査を施行しております。

■PSG検査の実際はこちら

スタッフ紹介

役職・医師名 得意な分野 認定等
担当部長 河野 千代子こうの ちよこ 日本呼吸器学会認定呼吸器専門医・指導医
日本呼吸器内視鏡学会認定気管支鏡専門医・指導医
日本内科学会認定総合内科専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
主任医長 鈴木 未佳すずき みか 日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本呼吸器内視鏡学会認定気管支鏡専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
医長 福岡 みずきふくおか みずき 日本呼吸器学会認定呼吸器専門医・指導医
日本内科学会認定総合内科専門医
医長 田中 健介たなか けんすけ 日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
医長 梅澤 弘毅うめざわ ひろき 日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本呼吸器内視鏡学会認定気管支鏡専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
医長 川述 剛士かわのべ たけし 日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
特任医師 田中 萌たなか もえ 日本内科学会認定医
特任医師 桑原 聖和くわばら きよかず
特任医師 北原 慎介きたはら しんすけ 日本内科学会認定医
専攻医 石田 友邦いしだ ゆうほう 日本内科学会認定医
専攻医 佐久間 典子さくま のりこ 日本内科学会認定医
専攻医 コ永 将勝とくなが まさかつ
顧問 山田 嘉仁やまだ よしひと
山田 嘉仁
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医・指導医、評議員
日本呼吸器内視鏡学会認定気管支鏡専門医・指導医
日本内科学会総合内科専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本肺高血圧学会評議員
日本サルコイドーシス学会評議員
専攻医 藤谷 有希ふじたに ゆき

スタッフによる著書

「EBM呼吸器疾患の治療2006―2007」(分担執筆;サルコイドーシス)
「今日の治療指針2004」(分担執筆;びまん性汎細気管支炎)
「薬剤性肺疾患」(分担執筆;NSIPを呈する薬剤性肺炎)
「研修医のための「レジデントノート」」編集委員(胸部画像Q&A執筆)
「日経メジカル胸部画像Q&A」編集   等


呼吸器内科からのメッセージ

日本の医療は、医師のヒューマニズムで支えられているといっても過言ではありません。
医師としての使命をはたすためには、かなり厳しい労働条件の中でも冷静に、かつ親切・優しさを失わずに患者さまを診て行かなければなりません。

当科では,お互いが協力して全ての患者さまが満足できる医療が受けられるように努力しています。
当呼吸器内科のモットーは、「呼吸器疾患の診療で不得意分野をもたないこと」、「患者さま診療を第一に優先すること」、「医師・看護師が人の和を大切にして協力して医療に取り組むこと」です。毎週2回、月曜、木曜の午後5時半からカンファレンスを行い、入院患者全ての写真とデータをみるということを継続していくことは大変なことですが、全ての医師が全ての患者さまのことを理解しておくためには必要なことです。

また学会活動、論文執筆を積極的に行い、更に質の高い呼吸器疾患診療をめざしています。