乳腺外科

特色

乳腺外科では、乳がん検診の他、乳腺の診断および標準的治療を行っております。外来でのマンモグラフィー・超音波検査は可能な限り、外来受診日に検査を行い、検査結果もその日に説明できるようにしています。乳がんの診断、治療については外来・入院を問わず、他職種の医療者が参加するブレストケアチームによるチーム医療を行っています。
乳がん手術は乳房切除手術、乳房温存手術、腋窩郭清、センチネルリンパ節生検などを行っており、早期乳がんの患者さまのうち、乳房再建のご希望がある場合は、形成外科との協力体制の下、乳房同時再建手術を行っています。また2期的乳房再建手術は当院形成外科が行います。
乳がん手術の入院の場合、5日~10日間と短期間ですが、乳がんは薬物治療(内分泌療法、化学療法、分子標的治療など)や放射線治療が有効なため、長期の外来通院が必要になります。このため、新宿駅南口から徒歩5分という立地も当院乳腺外科の特徴の一つと考えられます。第2・第4土曜日も外来診療を行っています。
当院で乳がん治療を受けておられる患者さま、あるいは治療を終了された患者さまのための「マンマのおしゃべりサロン」を定期的に開催しています。地域包括ケアを推進し、近隣病院やクリニックとの病診連携を行っております。

得意とする疾患と治療

乳腺外科の受診について

乳房に症状(しこり、違和感など)があり受診を希望される方へ

受診を希望する理由はなんですか?もう一度ご自身で症状を確認してみて下さい!

乳がんでよく見られる症状とは?

  • 乳房のしこり
  • 乳房の皮膚のひきつれ・くぼみ
  • 乳頭から分泌物がでる
  • 急に乳頭が陥没してくる
  • 乳頭にただれや変形がある
  • 脇の下にしこりがある

※診察前に必ずご確認ください

乳がん検診について

当院での乳がん検診は自費診療(税込)となります。乳がん術後長期経過した場合、又は良性疾患の定期検査が必要でない場合は、保険診療から検診に代わります。

診察+マンモグラフィ 13,390円
診察+超音波検査 13,070円
診察+マンモグラフィ+超音波検査 17,790円

受診当日の流れ

問診・視触診

診察室にて問診と視触診を行います。
視触診では上半身は脱ぎますので、ワンピースは避け脱ぎ着しやすい服装をお勧め致します。

画像診断(超音波検査マンモグラフィ検査

医師の判断で超音波検査マンモグラフィ検査を行います。
超音波検査は診察室の並びの部屋で行います。所要時間は10分程度です。
マンモグラフィ検査はB2階 画像診断にて行います。所要時間は15分程度です。

乳腺外科Cのイメージ
診察室1のイメージ

結果説明

画像診断(マンモグラフィ検査と超音波検査)の結果をご説明します。
今回の受診で異常なしと診断された方も是非、乳がん検診をご継続ください。明らかに良性と診断できない場合は、医師から病理検査のご提案があります。検査に際しましては同意書を用いて説明させていただきます。

※診療予約して受診した患者さまは当日にマンモグラフィと超音波の結果説明を行っています。
お時間には余裕を持って受診して下さい。

※所要時間は検査、診察時間を合わせおおよそ2時間です。お時間のない方はご相談ください。

病理検査について

医師の判断で、しこりがある場合は病理検査(細胞診・組織診)を行います。
初診日に検査日の予約をお取りします。当日の検査は行いません。
病理検査約10日後以降に医師より病理結果のご説明をさせていただきます。

乳腺にできる病気について

線維腺腫

10~30歳代に好発する良性のしこりです。

葉状腫瘍

大きなしこりを形成するのが特徴です。葉状腫瘍には悪性と境界病変(悪性と良性の中間)とがあります。葉状腫瘍の場合は腫瘍を手術で完全に切除する必要があります。

乳腺症

古い臨床的な疾患概念で、病理学的な疾患名ではありません。乳房の痛みや張り感、乳頭からの分泌物、のう胞(分泌物がたまった袋)ができるなど様々な症状があります。
現在では生理的な変化と考えられています。

乳がん

乳房の乳管組織(母乳を乳首まで運ぶ管)から発生する悪性の腫瘍です。乳房の変化に気づかずに放置しているとがん細胞が増殖しリンパや血液の流れに乗って肺や肝臓、骨など乳房から離れた臓器にまで及びます。患者さまそれぞれのがんのタイプを調べ、効果的な治療を組み立てていきます。

乳がんと診断されたら

初めて乳がんと診断された患者さまに行われる治療(初期治療)を中心として解説します。
乳がんの治療には手術放射線療法薬物療法があり、個々のがんのタイプに合わせて必要な治療を組み合わせて行います。

乳がんの診断

画像診断(がんの場所、大きさ、転移の有無を調べる)
  • 転移の有無をCTで確認します
  • 乳房内でのがんの広がりをMRIで確認します
  • 治療を始めるにあたって準備の検査を行います
    (血液検査・尿検査・胸部レントゲン検査・心電図・心エコー・呼吸機能検査 など)
病理検査・生検(がんの性質を調べる)
  • がんの詳しい特徴を確認します
  • がんに有効な治療薬を選択するための組織検査を行います
  • さらに詳しくがんのタイプを確認するため、ER・PgR・HER2などのホルモンレセプターやタンパクの発現状況を検索します

治療の流れのイメージ

2013年には人工乳房による乳房再建も保険適応となりました。
当院では形成外科と協同して患者さまのニーズに答えています。

遺伝性乳がん卵巣がん症候群のスクリーニング

遺伝性乳がん卵巣がん症候群(Hereditary Breast and Ovarian Cancer : 以下HBOC)とは先祖からの遺伝要因がはっきり分かっている乳がんや卵巣がんのことで、その一つにBRCA1 あるいは BRCA2 遺伝子の変異があります。乳がんを発症した人の3-5%はHBOCであることが知られています。当科では乳がんと診断された患者様に対して、HBOCのリスクが高いかどうかを紙媒体のアンケートによるスクリーニング(かんたんチェック)をしています。またBRCA遺伝子検査を希望する患者様には血液を採取します。BRCA遺伝子変異がある方はHBOC認定施設(http://johboc.jp/)でカウンセリングを受けて頂くことがあります。HBOCについてはHBOCコンソーシアムの発行するパンフレット(https://johboc.jp/wp/wp-content/uploads/2022/02/hboc_ver_2022_1.pdf)をご覧ください。

当科の活動と成績

当科活動

乳腺ヨガ・プログラム

乳がんの手術や化学療法後に慢性的な疲れ・しびれ・痛み・不眠などの症状が多く見られます。抗がん剤の副作用のほか、治療後のホルモン環境の劇的な変化が原因の一つと考えられていますが、最近の研究では運動療法がこうした症状緩和に効果があるだけでなく、乳がん再発の抑制にもつながるとされ、乳癌診療ガイドラインでも運動療法が推奨されています。さらに運動療法に加えてヨガ(呼吸法・瞑想・ストレッチ)による身体的自覚症状の改善が期待できると報告されています。
当科ではリハビリテーション介入を進め、JR東グループのフィットネスジムJEXER新宿店が隣接している利点を生かし、継続的な運動及びヨガ・プログラムを取り入れることで患者様のQOLの向上と治療への満足度を高めていきます。乳がん術後の方だけでなく、乳腺症などでお悩みの方もご相談ください。JEXER新宿店については以下をご覧ください。(https://www.jexer.jp/fitness/shinjuku/index.html

ジャパンマンモグラフィサンデー:J.M.S

J.M.Sプログラムは、子育て、介護、仕事など多忙な平日を過ごす女性のために認定法人J.POSH(日本乳がんピンクリボン運動)が全国の医療機関に呼びかけて「10月第3日曜日」に全国どこでも乳がん検査をできる環境づくりへの取り組みです。欧米と比較してまだまだ乳がん検診受診率の低い日本においては、休日を利用した乳がん検診や啓蒙活動が必要です。私達もこの活動に賛同し、J.M.Sに毎年参加しています。J.M.Sについては以下をご覧ください。(http://jms-pinkribbon.com/13tky.html

院内患者サロン「マンマのおしゃべりサロン」

診断された時、治療を受ける時、経過観察中の検査結果を聞く前、だれもが不安に押しつぶされそうになることはあります。そして、乳がんを受け止めて治療していくにはたくさんの支えが必要です。もちろん、医療スタッフは全力でサポートします。
しかし、患者さま同士にしか分かち合えない気持ちもあるのではないかと考え、平成25年度より、院内患者サロン「マンマのおしゃべりサロン」を立ち上げました。
同じがん体験をした仲間が語り合い、不安や心配事を軽減したり、治療や療養中の工夫を共有できる場になったらいいなと思い立ち上げた患者さまと一緒につくる手作りの会です。
参加を決めるのは少し勇気が必要かも知れませんが、初めは皆同じ気持ちです。
開催はホームページ、乳腺外科待合室でのポスター掲示にてお知らせします。
みなさまの参加をお待ちしています。

過去のおしゃべりの内容
  • 治療の副作用と対処方法(ホットフラッシュ・脱毛など)
  • 術後の生活について
  • 補整下着の購入方法、ちょっとした工夫
  • 病気について職場や友人に話すか

など

おおよそ15名前後の参加があり、おしゃべりしています。

参加者の声
  • 『楽しい情報が沢山あって、勉強になった』
  • 『悩み、不安を話せて気持ちが楽になりました』
  • 『また、参加したい!と思いました。継続してほしい』

など

「マンマのおしゃべりサロン」開催中のイメージ

手術成績

乳腺の手術件数は年々増加しています。私達は乳癌診療ガイドラインを遵守し、患者様に最適な手術法を提示します。

2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
手術数 104 128 115 88 106
乳がん 86 105 90 73 91
センチネルリンパ節 生検 61 76 80 68 76
良性腫瘍 18 8 15 7 11
人工物再建手術 4 3 3 6 8

治療成績

当科の乳がん手術を含む治療後の生命予後についてステージ別に調査した結果です。「無再発生存率」とは術後から観察期間内に再発せずに過ごされた患者様の割合を、「全生存率」とは術後から観察期間内に生存していた患者様の割合を%で示したものです。下の表では当院の成績の右側に全国統計の成績を並べています∗。

∗両者は観察期間や時期が異なります

無再発生存率(%) 全生存率(%)
病期 当院1 全国統計2 当院1 全国統計2
ステージ0 100 96.34 100 97.58
ステージ1 94.8 92.17 98.7 96.63
ステージ2A 82.9 81.62 92.3 90.93
ステージ2B 73.7 80
ステージ3A 65.4 58.42 83.1 72.48
ステージ3B 63.3 79.3
ステージ4 - - 38.4 42.65
1当院で手術をした1,248症例の8年後予後解析結果
22004年次日本乳癌学会乳癌登録188,265 症例の5年後予後解析結果

スタッフ紹介

役職・医師名
部長 上田 重人うえだ しげと
認定等
医学博士
日本外科学会認定外科専門医
日本乳癌学会認定乳腺専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
マンモグラフィ読影認定医
乳房再建用エキスパンダー/インプラント責任医師

平成24年度 第13回日本乳癌学会機関紙Breast Cancer優秀論文賞受賞
平成27年度 第21回日本乳癌学会研究奨励賞受賞
平成29年度 第55回日本癌治療学会学術集会優秀演題賞受賞
平成30年度 第12回日本ITヘルスケア学会学術大会優秀演題賞受賞
役職・医師名
医長 小倉 拓也おぐら たくや
認定等
医学博士
日本外科学会認定外科専門医
日本乳癌学会認定乳腺専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
マンモグラフィ読影認定医
乳房再建用エキスパンダー/インプラント責任医師
役職・医師名
非常勤医師 尾辻 和尊おつじ かずたか
認定等
日本外科学会認定外科専門医
日本乳癌学会認定乳腺専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
マンモグラフィ検診精度管理中央委員会マンモグラフィ読影認定医