「TRAIN SUITE 四季島」を支える想い
Vol.702025/6/6
角谷 公博
ねぶた囃子の響きと共に伝えたい、青森のこころの鼓動
現在駅長を務める角谷公博はこの地の魅力を伝えたいという思いを胸に、毎回、駅のホームに立っている。
「TRAIN SUITE 四季島」を迎え続けて
青森駅に着任したのは、現在の新駅舎が完成した2021年10月でした。駅舎の目の前には、かつて函館を結んだ青函連絡船が発着した青森港があり、やはりここは港町なのだと感じました。現在は毎週のように大型クルーズ船が寄港し、海外のお客さまが列車を利用して弘前までいらっしゃる。そんな具合にここにもインバウンドの波が訪れています。
私は青森県下北半島の付け根に位置する野辺地町の出身です。北前船の寄港地として栄えた湊町としての歴史があり、祇園祭など当時の文化が伝えられています。
1982年に新卒で当時の国鉄へ入社しまして、初任地は岩手県にある山田線の川内駅という小さな駅でした。その後、八戸駅、盛岡支社、東京駅などを経て、釜石駅長、一ノ関駅長を務め、二十数年ぶりに故郷・青森に戻ってきました。
ホームを揺らす、ねぶた囃子のお見送り
「TRAIN SUITE 四季島」で青森駅へ到着されたお客さまをホームでお迎えし、ねぶたの提灯を掲げてバスまでご案内するのが、まずは私の最初の役目です。近隣の小学生やボランティアの方々が旗を振り、一体となって歓迎してくれます。そして夜9時頃、観光とお食事を終えて青森駅に戻ってこられたお客さまを、JRねぶた囃子会の粋なねぶた囃子と一緒にお見送りしています。
青森の夏といえば「ねぶた祭」です。祭りにはJRグループのねぶたも毎年参加しており、囃子会のメンバーは約160名。JR社員のほか、地域の方も数多く関わってくださっています。
歴代の青森駅長は団体責任者として、跳人の衣装を着て提灯を掲げ、隊列の先頭を歩きます。もしかすると、これが青森駅長としてのいちばん大きな仕事なのかもしれません(笑)。それほど、「ねぶた」という行事は青森という土地にとって大切なものなのです。
ねぶた囃子は、太鼓と笛と手振り鉦の三重奏。行列が進んでいく時の進行囃子、どことなく哀愁を帯びた戻り囃子、最終日に演奏する七日日囃子を組み合わせて、お見送りの際には、その場の雰囲気に合わせて演奏してもらっています。祭りの期間中は、「TRAIN SUITE 四季島」の運行が一時お休みになります。そこで昨年、クルーの方たちもJRグループのねぶたに、「ラッセラー!」の掛け声に乗って跳ねる“跳人”として参加されました。その経験が生かされたのか、その後の駅ホームでのお見送りの時に、囃子が鳴り始めた瞬間、クルーも私もつい跳ね出してしまい、それに合わせてお客さまも跳ね始め、ホーム全体が小さなねぶた祭のようになったこともありました。
ねぶた、雪、りんご――青森の良さを感じてほしい