東北、一度は見てほしい風景編
地元の人に愛される
東北の名もなき景色
旅先の景色を選ぶとき、まず目に入るのはその県の名勝地だと思います。でも、東北では、地元の人に「一番好きな景色は?」と聞いてみると、県外の多くの人にまだ知られていないであろう、地域の人に大切にされているスポットを教えてもらえました。
この記事では、そんな地元の人に愛される「青森・宮城・福島の景色」を紹介したいと思います。
特集1【青森】八戸には、忘れられない
ときめく景色があった
八戸には、海沿いの道や港に沈む夕日など、地元の人が日々眺め、愛してきた風景があります。
青森にまだ足を踏み入れたことがない人にとってはよく知らなかった場所でも、実際に訪ねてみると、特に海側のスポットでは「想像していた以上の絶景で驚いた…!」なんてことがありそうです。八戸の風景が、みなさんだけの忘れられない旅の景色に変わっていくかもしれません。
異国のような大パノラマが
広がる種差海岸
種差海岸駅のホームを降りれば、徒歩数分で天然芝と太平洋が広がる「種差海岸」。芝生がそのまま海へと続くような風景は全国でも珍しく、どこを切り取っても絵になり、気づけば何度もシャッターを切っていました。
芝生の上をのんびり歩いたり、海を眺めながら腰を下ろしたり。季節によってはキャンプを楽しむ人や愛犬と散策する人の姿も見られ、それぞれが思い思いの時間を過ごしています。私も波の音に耳を傾けながら、ただ景色を眺めているだけで幸せを感じられました。
特別なことをしなくても、ただ海を眺めて深呼吸するだけで心が満たされる場所。忙しい毎日を少し忘れて、「何もしない時間って、こんなに気持ちいいんだ」と思わせてくれる景色が待っていました(ライター・五勝出ひかる)。
太平洋を見渡す絶景・
葦毛崎展望台
鮫角灯台前の岬に突き出た「葦毛崎展望台」は、太平洋戦争末期に旧日本軍が軍事施設として使用していた場所。現在は展望台として一般開放され、登った瞬間「わっ…!」と思わず息をのむほどに広い太平洋の景色を楽しめるスポットです。
西洋の古城のような趣ある外観と、四季折々の花々が彩る景色が魅力。春のフクジュソウから、初夏のニッコウキスゲやハマナス、秋の北限のハマギクまで、海浜植物と高山植物が隣り合って咲く幻想的な風景は、ここならではの景色です。耳を澄ませば、ウミネコのさえずりが聞こえてきました。
種差海岸遊歩道の起点にもなっているこの場所は、種差天然芝生地と合わせてレンタサイクルなどで巡るのもおすすめなので、八戸の海の雄大さに包まれてみてください(ライター・五勝出ひかる)。
下北半島の海辺に林立する
ミステリアスな奇岩
1922年(大正11年)にここを訪れた文豪・大町桂月がこの景観美を歌に詠んだことから広く知られるようになったという「仏ヶ浦」。下北半島の国定公園内にあり、約2kmにわたって連なる巨岩の群れは、海底火山の噴火や地層の隆起によって生まれたものだそう。
私が最初、この場所を知った時には、遠い国にある場所だと勘違いしてしまったほど、日本国内でも希少な景色だと思います。
この世のものとは思えないインパクト大な奇岩には、「如来の首」や「五百羅漢」など、仏にちなんだ名称がついており、さながら極楽浄土を思わせるスポット。またとないこの絶景を見るために、わざわざ足を運ぶ価値ありです(ライター・五勝出ひかる)。
特集2【宮城】宮城の日常を旅して出会った
地元で大切に育まれる景色
絶景って何でしょう?辞書には「すばらしい景色。非常に美しい景色」と書いてあります。でも、私が宮城を旅して感じたのは、絶景って「愛される景色」のことなのかもしれない、ということ。
地元の人にとって昔から馴染みのある湖や名もなき小さな滝など、宮城には水辺の美しい景色が数多くあります。旅行ガイドブックで表紙になるような名勝地ではないけれど、愛される大切な場所。都市・仙台から、そんな景色を探しに足を延ばしてみると、自分だけの旅日記を書いてみたくなるはずです。
神秘さ漂う美しい湖は
県内穴場の紅葉スポット
蔵王南麓にある周囲2kmの青く澄んだ湖は、湖面に不忘山を映し出す静寂な絶景。紅葉の時期が特に見頃で、県内の人が赤く燃える山々を眺めにわざわざ出向くスポットなんだとか。
もちろん紅葉の季節でなくても、遊歩道散策やSUP体験もでき、通年楽しむことができるそうなので、私も次に行く際は、ただ絶景を見るだけでなくてSUPにも挑戦してみようかなと思っています(冬季は雪の状態により閉鎖の案内など、サイトで確認できます)。
今回は、お弁当を持参して山道を歩いてみました。途中にある小さな売店付近のベンチで、ひと休みした際も、辺りの空気が澄んでいてとても気持ち良かったです。少し歩いた先にある「やまびこ吊り橋」を渡ってみるのもおすすめです(ライター・合志亜希子)。
渡り鳥にハスの群生!
東北最大の低地湖沼
冬になると数千羽のハクチョウや数万羽のマガンが飛来し、夏は一面に蓮の花が咲き誇る「伊豆沼」。知る人ぞ知る東北の絶景地として、宮城の方にお見せと教えていただきました。
毎年7月下旬から8月下旬の蓮の開花に合わせて開催される「はすまつり」には、小型遊覧船が運航。花の園を分け入るように進む船に乗ると、凛とした美しさと香りをすぐそばに感じることができます。花は早朝に開き、昼にはしぼんでしまうため、午前中早めの到着が良いとのこと。
一方、冬になると約10万羽のマガンの群れが続々とこの地に集まり、日の出とともに飛び立つマガンの壮大な光景を写真に納めようと、カメラを構えた地元の方や観光客が多く集まるんだそうです。
季節問わず、この辺りを盛り上げようと地域の食や人をつなぐイベントなども行われているそうで、このスポットも通年見どころがあるだなんて、まだまだ東北・宮城について知らないことが沢山あるんだな、としみじみ勉強になりました(ライター・合志亜希子)。
日々の雑音を鎮めてくれる
鳴子峡の清らかな滝
宮城の人気温泉街・「鳴子温泉」の駅からタクシーで約13分の場所にある「鳴子峡」へ。深さ約100メートル、長さ約4キロメートルの大峡谷を見ながらアイスクリームを食べようと売店に入ると、店員さんが「下に小さな滝があるよ」と教えてくださったので、行ってみることに。
近くの階段から渓谷を降りていくと、沢の音と花の甘い香りが心地よくて、自然と呼吸が深くなります。岩肌をつたう水に触ってみたり、小さな植物を眺めてみたり。
教えてもらってすぐに何気なく散策していたので、想像以上に見どころのある山道でびっくり。軽快に下っていくと、ついに小さな滝が現れました。ざーっという音を浴びているうちに、日々の忙しい思考が静まっていくのを感じました(ライター・合志亜希子)。
特集3【福島】自然や文化が織りなす
心に残る福島の風景
福島には長い年月をかけて生まれた渓谷や、山と川の間を走る列車、そして現地の人がお出かけやデートスポットとして愛されてきた「岩壁国情緒あふれる施設まで、自然の歴史や文化が感じられる様々な風景が広がっています。
福島のメインどころとして県外の人に知られている場所だけではない、旅先の意外なスポットに出会えるのも、ここを旅する楽しみです。
100万年以上の歳月を
かけてできた「塔のへつり」
エメラルドグリーンの大川、横には巨大な岩壁。吊り橋からは美しい渓谷を眺めることができる「塔のへつり」を地元の人に教えてもらい、行ってみることに。
「へつりって、どんな意味なんだろう?」と調べてみると、会津地方の方言で「川沿いの険しい断崖や岩壁」を意味しているそう。ここに広がる景色は、隆起した地層が100万年以上の歳月をかけて、岩を削り出してつくられてきたのだとか。
会津にはさまざまな歴史がありますが、この場所には人間の歴史よりはるかに長い時間が残っており、足を踏み入れるとなぜか神秘的なエネルギーを感じました。私たちには想像もつかないような時の長さを感じるここのひとときは、ゆったり贅沢なものでした(ライター・葵月みず)。
大自然の中に列車が通る
第一只見川橋梁
奥会津の玄関口にある道の駅・尾瀬街道みしま宿。ここから遊歩道を登ると、只見川と山々の間を走る、只見線の第一只見川橋梁を一望できます。
展望台から見下ろすと、大きな只見川が心地よく流れていました。奥には山々が連なり、タイミングを合わせて行けば、薄紫色のアーチ状の橋の上を列車が走ります。
自然の中を駆ける小さな列車が作り出す景色は、山と川の中で暮らしてきた会津そのものを表しているような気がしました。次の列車が来るまで、道の駅みしま宿でゆっくり待つ時間も旅の醍醐味。三島町の特産品である桐を使った真っ黒な桐炭ソフトも、珍しい体験のひとつに(ライター・葵月みず)。
“パスポートの要らない英国”
まるで絵本の中の世界へ
もちろん自然の景色も好きなのですが、地元の人に愛されるスポットとして、中世英国の街並みを再現した「ブリティッシュヒルズ」も福島の方に紹介してもらいました。「福島なのに英国の風景?」と意外に思われるかもしれませんが、たしかに、日本に居ながらこんなおとぎの国のような景色をみられるのも珍しく、探索に行ってみることに。
この施設がある「羽鳥湖高原」は、実際にスコットランドのハイランド地方に似た気候であることから、1994年に建てられたそうで、敷地内には貴族の館を模したマナーハウスを中心に、英国民家のようなゲストハウスやローズガーデンなどが並んでいて、どこを見てもとてもフォトジェニック。
アフタヌーンティーを楽しんだり、宿泊棟も施設内にあるので、福島の人もデートなどのお出かけで来られるのだとか。ドラマや映画撮影などのロケーションにもなっているようで、他にない特別な景色なのだと感じました(ライター・葵月みず)。
WRITER

- 五勝出 ひかる[ライター]
旅先で出会った風景や人の想いを、文章と写真で届けるトラベルクリエイター。旅行会社勤務やマルタへの語学留学を経て、現在は全国各地の観光地を取材・発信。その土地ならではの魅力や背景を伝えるとともに、レスポンシブルツーリズムの普及にも取り組んでいる。

- 合志亜希子[ライター]
静岡県生まれ、東京育ち。幼い頃から海外の文化や国際交流に興味を持ち、カメラを片手に旅をするように。カナダ留学、ニュージーランド移住を経て、日本の食や文化の豊かさを再認識。現在は全国各地を旅しながら、土地の風景や旅先での出会いを文章と写真で伝えている。近年は日本の離島巡りに夢中。フォトグラファー/字幕翻訳者としても活動。

- 葵月みず[ライター]
神奈川県生まれ。旅や地域をテーマに執筆するライター。地域に息づく文化や暮らし、人々の想いに関心を持ち、現地での取材をもとに記事を制作している。一つひとつの土地が持つ物語を丁寧にすくい上げ、読者へ届けることを大切にしている。
※2026年11月時点の情報です。実際に訪れる際は、最新の情報をご確認ください。
