KEIYO TEAM6 クロストーク Vol.24

林香奈絵・鴨川実歩(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース/サッカー)&筏井りさ・平井成美(バルドラール浦安ラス・ボニータス/フットサル)

林香奈絵・鴨川実歩
(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース/サッカー)

&

筏井りさ・平井成美
(バルドラール浦安ラス・ボニータス/フットサル)

各チームの注目選手や共通点を持つ選手・スタッフが、競技の枠を越えて様々なテーマでトークを行う、『京葉線プラス』限定のスペシャル企画「KEIYO TEAM6クロストーク」。
第24回は、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースの林香奈絵(はやしかなえ)選手と鴨川実歩(かもがわみほ)選手、バルドラール浦安ラス・ボニータスの筏井りさ(いかだいりさ)選手と平井成美(ひらいなるみ)選手の4選手で座談会を開きました。共通点の多い4人だからこそわかり合えることやそれぞれの競技への想い、チームの見どころなどについて、語り合ってもらいました。

サッカーとフットサルから見た両チームのイメージとは?

――まずはお互いの印象を教えてください。

林香奈絵選手(以下、林):昨年のジェフ千葉レディース試合の前にオリプリ(ゼットエーオリプリスタジアム)で、ラス・ボニータスさんが明るく本気でイベントを盛り上げていて、とても印象に残っています。ジェフ千葉レディースもすごくイベントは積極的にやるのですが、それを超えるようなモチベーションで子供たちが楽しんでいたので感動して。とても勉強になりました。

筏井りさ選手(以下、筏井):あのとき、私たちもシーズンに2度しかないホームゲームを控えていたので、チラシを配りたくて三上(尚子)監督にお願いして、何かできないかと相談していました。それで、子どもたち向けのボウリングイベントをやらせていただいて。全力でやって良かったです。

鴨川実歩選手(以下、鴨川):私は、ラス・ボニータスさんにユース(ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18)で一緒だった松本(直美)選手がいるので、インスタを結構チェックしています。あとは、代表選手が多い印象があります。フットサルの中でもすごく強くてすごいですよね。

筏井:次の試合で勝てば優勝で、リーグ4連覇です。(取材時は優勝前。12月3日に優勝が決定し、4連覇を達成)

平井成美選手(以下、平井):私はジェフのハイライトをよく見ています。鴨川選手がよく点を取っているイメージがあります。センタリングに合わせるのが上手いので、すごいなと思ってプレーの参考にしています。

筏井:私は、元々ジェフでサッカー選手をやっていました。鴨川選手とは、一緒にプレーしていました。同じFWのポジションだったので、最後にジェフをやめるきっかけになった選手です(笑)。

鴨川:いや、そんな申し訳ないです。

筏井:申し訳なくないですよ。当時は若かったけれど成長して、活躍してチームを支え続けている。ずっと「頑張ってね」と思っていました。私のなかでは存在の大きい選手です。林選手は入れ違いですよね。

:そうです。練習参加のときは一緒にプレーしていましたが、正式加入と同時に入れ替わって。

筏井:対戦相手として戦っていましたね。林選手の出身の尚美学園大学で元GKコーチをしていた大友(麻衣子)さんが「すごくいいDFの選手がいる」と言っていました。私もそうですが、大学から(当時トップリーグの)なでしこリーグで活躍するのはとても大変です。そこからジェフの中心選手になって、なでしこジャパンに選ばれて「やっぱりすごい選手」という印象です。

リーグ連覇・今季無敗のバルドラール浦安ラス・ボニータスが強いチームであり続ける理由

――バルドラール浦安ラス・ボニータスは日本女子フットサルリーグで連覇して、トップを走り続けています。

平井:リーグでも今、無敗で絶対に負けちゃいけないというプレッシャーが強いです。

:勝ち癖がついているということですよね。

平井:でもここまで来るのも大変でした。私が入ったのが5年前で、そこからチームが優勝し始めて。戦術もきっちり監督が落とし込んで、それをみんなで体現していきました。練習は夜11時に終わって、その後すぐに練習動画が全員に送られてくるので帰宅直後にチェックできるので日々チーム全体で意識を高められて、強くなっていると感じています。試合ではフィールド4人でセット交代するので、その4人のコミュニケーションがすごく取れているというのもあって団結力がすごいです。

:聞くだけで強いのがわかりますね。

平井:あとは絶対に体を張るとか、フィジカル面は体脂肪率20%以下じゃないと試合に出られないとか、日本だけじゃなく世界で勝つための目標を監督がテーマを決めています。

筏井:指導者が良いのは大きいですね。プロじゃなくてアマチュアなのですが、意識が高くてオフもトレーニングしていますし。

――バルドラール浦安ラス・ボニータスのみなさんは働きながら競技を続けています。

平井:そうですね。私の本業は歯科衛生士です。月2回は大人のサッカースクールとフットサルスクールをしてフットサルを広めるために活動しています。1週間で5回練習があって、あとの2日の休みですが、パーソナルトレーニングや自分の足りないところを補う練習をしています。

筏井:私は個人事業主なのでスケジュールをうまく組み立てて、毎日の練習のスケジュールを入れています。それに、30歳の時に前十字靭帯を切ってしまって、再断裂したくないのでパーソナルトレーニングもしています。サッカーをやっていたときは正社員でしたが、今は自分で仕事と競技を両立させるように工夫しています。

――筏井選手は得点王争いをしています。

筏井:チームのためにできるだけゴールをして、得点王を目指します。

今季のジェフ千葉レディースは「走る」「闘う」に加えてアグレッシブに主導権を握るサッカーを展開

――ジェフユナイテッド市原・千葉レディースは今季、戦い方が変わりました。主導権を握る時間帯が多くなりました。

:スペイン人のイスマエル オルトゥーニョ カスティージョヘッドコーチが来てからずいぶん変わりました。ジェフ千葉レディースの伝統である「走る」「闘う」をベースにして、自分たちが長くボールを保持できるようトライしています。本当の意味でトップ3(日テレ・東京ベレーザ、INAC神戸レオネッサ、三菱重工浦和レッズレディース)に食らいついていくために、取り組んでいます。

©JEFUNITED

鴨川:戦術的に全員が考えてサッカーをしています。今までは、1人が頑張って個の能力でどうにかしていました。中心選手が欠けると勝てない時期もあって、危機感があった。でも、今季から、誰が出てもある程度はジェフ千葉レディースのサッカーができるというのが、すごく強みになっている。変革の時期にありますが、その中心となっていきたいと思っています。

:ヘッドコーチが自分たちの意見をすごく引き出してくれるのもいいですね。コミュニケーションの量が圧倒的に増えました。

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鴨川:ミーティングが3倍ぐらいになりました。回数も時間も。毎日30分以上は絶対にやります。ヘッドコーチがいろんなことを教えてくれるのですが、自然と自分たちで考えることが多くなった。ピッチに立ったときの選択肢が増えて、すごく面白いなと思います。

:もう少し時間はかかるかもしれないですけど、結果に左右されずに信念を持ってやり通したい。選手もブレずにやっていきたいなと思っています。

千葉県のクラブとして地域貢献や連携も積極的にしていきたい

――今はシーズン中ですが、同じ千葉のチームとして協力したいことはありますか?

:女性アスリートとして、共通点が多いので一緒にイベントができたらいいですね。

筏井:お互いにアイデアを出し合いたいですね。

:サッカーとフットサルの選手が入れ違ってみるのもいいかも。

――筏井選手も平井選手もサッカー出身だからできそうですよ。

筏井:いやいやサッカーはできないですよ。フットサルはできると思うけど。

平井:コートが広いのでちょっと難しいかも(笑)。

鴨川:怪我のリスクがなければやりたいですね。でも、サッカーとは動き方が全然違うのでボロボロにやられるだろうなと思います(笑)。

――どちらも地域貢献を意識しているチームですね。

:ジェフ千葉レディースは積極的にやっていますね。プロとしてやっている以上、イベントや清掃活動など自分たちの存在意義を理解しながら積極的にやっています。

筏井:地域貢献は続けていきたいですね。ジェフとは、元所属チームで思い入れもありますし、両チームでやっていけるといいですね。

――この機会にお互いに聞いてみたいことはありますか?

:キャプテンとして感じるのは、同じ目標設定を持つ難しさです。ジェフ千葉レディースは18歳から32歳までの選手がいて、プロ選手も働いている選手もいます。さまざまな年代や環境の選手が同じ方向を向くだけでも大変だなと痛感しています。例えば、先ほどの体脂肪率20%の設定は難しくないですか?

平井:それじゃなきゃチームに入れないですから。監督が体脂肪率20%以下の設定をしているので、みんな必死にどうしたらいいか考えるところから始まります。ある選手は監督の顔写真を冷蔵庫に貼って食欲をなくす工夫をしているといいます。体脂肪はプレーに連動するといわれていて。関係ないという人もいるかもしれないですけど。

筏井:サッカー選手はプロになっていく過程で色々学んできていると思いますが、フットサルは年齢的にまだ学んできてない選手もいて。私たちは、日本一になって、日本代表を8人出したいというチームです。フットサルのレベルを自分たちが上げていくという目標を置いている中で、条件もすごく厳しくしている。ストレスもあると思うけど、試合に出るためにみんな努力しています。みんなが好きでフットサルをやっていますし。

:やっぱりすごいですね。というか、夜11時以降にご飯を食べられます?

筏井:お腹がすくので、食べられます。

平井:私は一日4食を食べています。昔は細すぎると言われていたので、しっかり食べてないといけないので、練習が終わった後に夜12時までには食べるという感じです。

:すごいですね。


――就寝は何時ごろですか。

平井:2時ぐらいに寝ますね。朝は8時とか7時とかに起きるので。

鴨川:いや、私だったら仕事にならないかも。

――どのくらい働いているのですか?

平井:私は9時半から夕方5時ぐらいまで働いています。チームメイトの中にはもっと大変な人がいます。朝5時に起きるOLの子もいるので。4、5時間睡眠の人もいます。人によってはきついですよね。

:それで日本一ってすごすぎます。かなり強度の高い練習をしていますよね。

筏井:かなり強いですよ。

:こうやってお話ししないと絶対知らなかったことです。

筏井:なでしこリーグ時代よりもきついですよね。だから、私は何でやっているんでしょうね(笑)。

――女子サッカーはWEリーグができて環境も整いました。

:プレーの強度や身体の質もリーグ全体で変わりました。環境が良くなってくるとそれが与える影響がすごいと思っています。


――最後に、これから「推し」になってくれる人に自分の「推し」ポイントを教えてください。

:今季でジェフ千葉レディースのキャプテンになって3年目です。1年目は がむしゃらにやって結果がついてきた。2年目はどん底に落ちてなかなかうまくいかなくて。3年目は勝負の年だと思っています。ここで結果が出なかったらキャプテンをやっている意味がないという覚悟でやっています。ジェフ千葉レディースのキャプテンとしてどういう戦い方をしているか、発言や振る舞いをしているかを知ってもらいたいです。名前よりもジェフ千葉レディースのキャプテンとして覚えてもらえたらな、と思っています。

鴨川:私は今ジェフ千葉レディースで10番を背負わせてもらっています。本当に偉大な選手がつけてきた、チームとしても大事な番号です。それに恥じないプレーというのは絶対しなきゃいけないと思っています。これまでより必ず成長して、「また見たいな」と思ってもらうのが目標です。それを達成できるよう日々頑張っているところです。

平井:小さい頃から、元サッカー女子日本代表だった母親のためにサッカーをやっていました。いつか母と同じなでしこジャパンになるためにやっているという感じでした。でも、フットサルは自分のためにやると決めて選んだ道で、人生をかけてやっています。フットサルで自分のプレーを見てもらいたいなと思います。どちらもチームスポーツなので仲間と日々の練習で得てきたものを出していきたい。そこを見てもらいたいです。

筏井:私はサッカーもフットサルも両方を経験してきました。サッカーでは日本代表を目指してやってきて、それが叶わずに終わった時にフットサルを始めてチャレンジさせてもらって35歳で日本代表になる夢が叶いました。日々の成長や自分の可能性を高め、年齢も関係なく仕事も楽しんで、フットサルも楽しんで、いろんな人と関わって仲間とやっているところを見てください。それから、この2つのチームでイベントをしたいです。まずは1月21日のバルドラール浦安アリーナでのホームゲームに向けて何かできたらいいですね。応援ぜひよろしくお願いします!

選手プロフィール

ジェフユナイテッド市原・千葉レディース

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林香奈絵(はやしかなえ)
兵庫県出身
1994年2月27日生まれ
ポジション DF
経歴 西宮少年SC→西宮女子FC→西宮少年SC→西宮女子FC→神戸FCレディース→尚美学園大学→ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
 ボール奪取能力が高く、ピンチをチャンスに変えられるDF。2022年7月なでしこジャパン初選出、デビュー戦で左膝前十字靭帯損傷の大怪我を負う。懸命なリハビリで復帰し、ディフェンスリーダーとしてチームを牽引。

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鴨川実歩(かもがわみほ)
茨城県出身
1997年8月27日生まれ
ポジション FW
経歴 KASHIMA-LSC→FC波崎→KASHIMA-LSC→ジェフユナイテッド市原・千葉L U-18→ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
 高度なテクニックとしなやかなドリブルが魅力のアタッカー。好機を逃さず自ら仕掛けるだけでなく、的確なパスでチャンスメイクもできる。筏井りさ選手と同じく、筑波大体育専門学群を卒業し大学院で学んだ。

バルドラール浦安ラス・ボニータス

筏井りさ(いかだいりさ)
神奈川県出身
1988年8月12日生まれ
ポジション FP
経歴 東小倉チェリーズ・川崎ウイングスFC→大和シルフィード→鳳凰高校→筑波大学女子サッカー部→ジェフユナイテッド市原・千葉レディース→浦和レッズレディース→さいたまSAICOLO→バルドラール浦安ラス・ボニータス
 筑波大在学中にユニバーシアード日本女子代表に選出され、2大会連続準優勝に貢献。大学卒業後、なでしこリーグで7年間活躍。29歳でフットサルに転向し、持ち前の技術と的確なキックで得点を重ねる。2022年からフットサル女子日本代表に。

平井成美(ひらいなるみ)
静岡県出身
1992年6月24日生まれ
ポジション FP
経歴 江尻サッカースポーツ少年団→清水第八スポーツクラブ→常葉大学附属橘中学校・高校学校→ゴリラシズオカ→バルドラール浦安ラス・ボニータス
 高校女子サッカー選手権でベスト8。22歳でフットサルを始め、2019年バルドラール浦安ラス・ボニータスに入団。同年の関東女子フットサルリーグ優勝、得点王に。19年よりフットサル日本代表。

構成・文/砂坂美紀(スポーツジャーナリスト)
1975年生まれ。福岡県出身。高校時代は女子サッカークラブ「大分ミラクルレディース」でプレー。大学在学中の1997年からスポーツ専門誌や児童誌でサッカーを中心に記事を執筆。著書『なでしこ つなぐ絆 夢を追い続けた女子サッカー30年の軌跡』(集英社)。共著書『なでしこゴール! 女子のためのサッカーの本』(講談社・日本サッカー協会推薦図書、全国学校図書館協議会選定図書)など。