KEIYO TEAM6 クロストーク Vol.18

西村文男(千葉ジェッツふなばし/バスケットボール)&坂口裕(オービックシーガルズ/アメリカンフットボール)

西村文男
(千葉ジェッツふなばし/バスケットボール)

&

坂口裕
(オービックシーガルズ/アメリカンフットボール)

6チームの注目選手や共通点を持つ選手・スタッフが、競技の枠を越えて様々なテーマでトークを行う、『京葉線プラス』限定のスペシャル企画「KEIYO TEAM6 クロストーク」。
第18回は千葉ジェッツふなばしの西村文男選手と、オービックシーガルズの坂口裕(ひろし)選手の対談です。優勝で見えたもの、アスリートの発信力、そしてお二人のもう一つの顔についてもお話をうかがいました。

優勝という頂点の存在。
そして試合ができることの喜び。

身体をぶつけて得点シーンを生み出し、優勝に大きく貢献(坂口選手は写真中央77番)
©オービックシーガルズ

オービックシーガルズは、長らく目の前に立ちはだかっていた富士通フロンティアーズの壁を打ち破り、2021年のライスボウルで関西学院大学に勝利をおさめて7年ぶりに日本一を奪還しました。一方、千葉ジェッツは、天皇杯3連覇や地区優勝などの華やかな成績が記憶に新しいチームです。

──ライスボウル優勝おめでとうございます!

西村:おめでとうございます!

坂口:ありがとうございます。高校からアメフトを始めて、ライスボウルで勝ちたいと目指しながらも、大学から負け続けて10年。だからやっと勝てたという感じで、涙あり、最高の瞬間でした。

西村:ジェッツも千葉県に優勝カップを持ってこられるように頑張りたいと思います。

──頂点に立った人だけが見える景色や得られることはありますか?

西村:自分の中で、天皇杯と地区優勝はテッペンだと思っていません。だから自分はまだテッペンの景色を見られていないと思っています。天皇杯は一発勝負であり、獲ったときは達成感がありました。でもやっぱりBリーグのファイナルで勝って、リーグ制覇をしたときに初めて、テッペンを獲ったと言えると思っています。

坂口:僕は頂点に立ってみて、思ったほどは実感がないなと思いました。ただ優勝したときのことを考えると、こういう30代の男たちが、汗だくで涙を流して抱き合うわけで、それは貴重な体験だと思いました。ここ7年間というもの、オービックシーガルズは負け続けるのが当たり前になっていたかもしれません。それが優勝したときに、いろいろな方から「おめでとう」という言葉をいただいて、応援されていたことを改めて実感し、感謝の気持ちを持つことができました。

──そもそも、試合ができること自体を幸せだと感じることはありますか?

西村:それは思います。試合ができるだけでも幸せです。僕らの仕事だからというのもありますが、元気をもらうにしても与えるにしても、試合ができなければ意味がないと思っています。あとはたとえ半分でも、お客さんが入ってもらえているのがすごく助かっています。一度無観客試合を経験しているからこそ、あの異様な雰囲気は二度と味わいたくない。いろいろ感謝をしながらバスケットをしています。

坂口:アメフトも試合ができる喜びはありますし、去年は練習ができること自体が、「ありがとう!楽しい!」という感じでした。日々感謝ですね。実は僕はバスケが大好きで、今日を楽しみにしていました。千葉に住んでいるし千葉のチームにいるので、千葉ジェッツが一番。とにかく応援していて、優勝するのが楽しみです。

西村:ありがとうございます。優勝を目指せるポジションにいるので、ただ勝つのみです!

競技の魅力と共通点。
二人をつなげる、あの作品。

小柄ながらも高いバスケIQで相手チームを翻弄
©CHIBAJETS FUNABASHI / Atsushi Sasaki

バスケットが大好きで、何度か千葉ジェッツの試合を観戦しているという坂口選手。一方西村選手はあまりスポーツ観戦をしないそうですが、アメフトに詳しいある理由が……。

──坂口選手はバスケットボールがお好きということですが、どこに魅力を感じていますか?

坂口:最後まで勝敗の行方がわからないところが面白いですね。それにアメフトでは点数の入るペースが遅いのに比べて、バスケは早い展開でゲームが進んでいき、目が離せません。僕は身体が大きいのですが、ポイントガードというポジションにはずっと憧れがあります。かっこいいですよね。ドリブルでゴール下を切り抜いていくところも、勝負どころでアウトサイドのシュートを決めるところも。日本人だとシュートを打つギリギリのところでパスをしがちかと思いきや、積極的に打つ。西村選手を、いつもすごいなって見ています。

西村:ありがとうございます。さすが、見る目が違って、プレーする側の目ですね。そういう評価してもらえるのは、すごく嬉しいです。

坂口:バスケもそうだと思いますが、アメフトは大きい人から小さい人まで、誰にでも適したポジションがあるのが魅力的です。僕みたいに190cmで125kgの体格で担うポジションもあれば、小柄な選手のポジションもあり、みんなが熱中できます。こんな大きい身体で、小さい選手に向かって思い切り突っ込む。そういうスポーツは珍しいと思います。でもそれは、バスケにも共通するかもしれないですね。

──大きな選手にぶつかる怖さはありますか?

西村:オフェンスに限っては当たっても負けるだけなので、僕は逃げるようにしています。ディフェンスはもちろん身体を張って止めなきゃいけないので、そこは身体を張ります。慣れなので、もう怖さはないですね。オフェンスでは、いかにぶつからないかを意識してやっています。坂口さんはどのポジションでしたっけ?

坂口:オフェンス側のライン、いわゆる壁ですね。

西村:『アイシールド21』(アメフトをテーマとする漫画作品)でいう「栗田良寛」のポジションですね。僕は『アイシールド21』が大好きで、知り合いが競技していたこともあり、大学のときにアメフトを見に行っていました。僕はラグビーにもアメフトにも友達がいたので両方見ていましたが、それぞれの良さがある中で、アメフトはまた違う盛り上がりがありました。比べられると嫌かもしれないけど、アメフトはラグビーと違って前にパス出せるじゃないですか。だから、より戦略が広くて、見ていて楽しいですね。素人目線ですけど、だまし合いが楽しい。あとは『アイシールド21』の登場人物に、実際の選手のポジションを重ねて見ていました。

坂口:いやぁ、嬉しいですね。まさか西村さんが『アイシールド21』を見ていたとは!実際、『アイシールド21』の誰々だよねって言われることも多いです(笑)。

西村:そうですよねぇ(笑)。ほぼ漫画で得た知識ですけどね、僕の場合は。

──アメフトもバスケも、戦略・戦術の多いスポーツなのではないでしょうか。

坂口:そうですね。ある程度デザインは決まっていて、何十通り、何百通りあるデザインの中から、相手のディフェンスを読んで選択していくイメージですね。僕はボールを持たないポジションなのですが、よく見ている人ほど僕たちのポジションを見てくれます。

西村:バスケでもボールに触るのが少ない選手は出てきますが、その選手は違うところでの貢献度が高い。そういう人たちがいないと、チームは強くなれないわけで、そういう意味でアメフトもバスケも同じかなって思います。玄人というか、よく知っている人ほど評価をしてくれるところはありますよね。でも坂口さんのポジションは、見ていてもわかりやすいと思います。思いっきり身体ぶつけてガッツリ相手を止めているシーンが見られるので。僕はそこが大好きです。身体張って止めるのは、自分には絶対にできないこと。そうやって道を作るとか。やっぱり男が見ると興奮するものがありますから、見ていて楽しいです。

坂口:西村さんがオービックだったら、クォーターバックになるのかなあ。

西村:僕は『アイシールド21』の「蛭魔妖一」のポジションが好きです。相手をだますというか、自分の作戦一つで点数に結びつくみたいな、あのポジションは楽しいですよね。

坂口:やっぱりポイントガード的なポジションですね。ぜひ、やってみてほしいです。ディフェンス力もすごいと思うので、ディフェンスバックもできそうです。

西村:細いから、一回タックルされただけで粉々ですけどね(笑)。

アスリートとしての顔。
付加価値を生み出すもう一つの顔。

バスケ大好き!終始にこやかに、優しく話す坂口選手

トップアスリートであると同時に、それ以外の顔も持ち合わせるお二人。さまざまなキャリアを持つからこそ、得られる付加価値があると言います。

──地域活動やファンサービスは、どのようなことを行っていますか?

坂口:個人として何かをしているわけではないのですが、チームとしてのイベント活動は積極的に参加しています。実は以前、南船橋にあるスポーツショップで働いていて、そこに会いに来てくださるファンの方もいらっしゃいました。街で会っても、「がんばって」と応援してもらえて、地域の方々と仲良くさせてもらっています。

西村:この1年はコロナ禍なので出会いがまったくない状態なのですが、ZoomとかSNSとかYouTubeとか、情報発信に力を入れて触れ合ってきました。ただ従来の地域密着という形は、正直なところ難しくはなってきています。

──おふたりとも、アスリートとは別の顔もお持ちですね。

西村:そうですね。いろいろと。アパレルとイベントの会社の代表取締役、YouTuberもそうですね、去年始めました。もともとバスケットだけと言われるのが好きではありませんでした。親にも「バスケットをしていなかったらただの人だよ」と言われていました。だから自分に付加価値をつけたいと、いつも思っていました。洋服が好きだったのでアパレルを。そして以前から個人的に一般の方を入れてイベントをしていたので、仕事として一つの形にしようとしたのが始まりです。ファンの方とのイベントについて言えば、去年はいままで以上に大きな企画を立てていたのにコロナ禍でできなかったので、Zoom飲み会を4回ほど開催しました。完全に個人の活動として、僕を知ってくれている方に向けて行っている活動です。

──誰もができることではないと思いますし、アスリートとして意味のある活動ですね。

西村:自分をもっと知ってもらいたいということもありますね。その中で始めたのがYouTubeです。オフシーズンはファンの方がバスケに触れる機会がなくて、ファンの人が離れがちでした。だからオフシーズンにバスケをやる企画も立てました。とても達成感があるし、やることで感謝の言葉をいっぱい頂けるから、やっていてよかったなと思います。また開催できる日が来たら、坂口さんもぜひバスケのイベントに来てください。坂口チーム作りますから(笑)。

坂口:ぜひお願いします。アメフトはプロ契約ではないので、平日に働いて、平日の夜や土日に練習や試合をする生活です。アメフトにガッツリ時間をとられているというよりは、好きでやっていると言ったほうがいいかもしれません。現在の仕事は友達と立ち上げた会社で、プロテインの営業をはじめ、あらゆる業務をこなしています。ジェッツさんはすでにスポンサーがついているので、営業できませんが(笑)。

西村:よくご存じで、大人の事情がね(笑)。でもそういうサポートは、アスリートにとっては本当に大きいですね。バッシュ、プロテイン、ジムと、サポートしてくれる人たちがいないと成り立たないですから、感謝しています。

坂口:僕たちも、メインは学生ですが、いろいろなアスリートのサポートをしていきたいと思っています。

──アスリートのほかにも仕事があることで、得られるメリットはありますか?

坂口:ありますね。現役選手であることが付加価値になっていますし、人間的な部分でも競技は自分を成長させてくれます。チームスポーツなのでいろいろな人がいて、いろいろな考えがあって、いろいろな仕事をしているので、出会いや気付きがあります。アメフトをやりながら仕事をしている僕に魅力を感じていただいて、仕事の案件につながることも多いです。さまざまな場面で活かされていると思います。

西村:僕は優先度で言うとバスケットが一番高くて、その中でできる範囲で洋服とイベントをやらせてもらっています。違うことをやっているがゆえに、バスケットがおろそかになったら叩く人もいます。だからこそ、余計にバスケットに気持ちが入るし、バスケットで結果を出さなければという気持ちにしてくれるので、僕はイベントも洋服もやっていてよかったなと思います。選手という立ち位置で、そういう経験が説得力を増すこともあります。僕はやれるならやりたいことが、まだまだいっぱいあります。

発信力が求められる時代。
ビジネスとしての発信へと進化を。

愛犬の話になると、自然と笑みがこぼれる西村選手

チームが公式に発信するだけではなく、スポーツ選手自らがオンラインで情報発信を行うようになりました。選手自身もそれを楽しみ、かつ仕事にも活かしていこうとしているようです。

──SNSやYouTubeなど、バスケは発信力の高い選手が多いイメージがあります。

坂口:確かにそうですよね。

西村:ここ数年で増えましたね。Bリーグの研修でSNSの講義があったのも、一つの大きな理由だと思います。あとはネットで情報発信をするのが当たり前のいまの時代で、自分を発信することが重要になっているのだと思います。発信者が増えるのはいいことですよね。バスケをするだけでは知名度は知れたものなので、自分を知ってもらえる場所があるのであれば、積極的になったほうがいいと僕は思います。

坂口:アメフトではそういう講義はなくて、悪いことはするんじゃないよと言われるくらいでしょうか。ただ会社としてはSNSを頑張っていきたいと思っていますし、コロナ禍で何かSNSを通じてできることがないかと、チームの中でも考える動きがありました。いままでやってこなかったコミュニケーションの量はすごく増えたと思います。そういう活動もあって、日本一になれたのかなという想いもあります。
またオンラインを通じて、ポジションの解説をするという話をしたところ、30~40チームから反響をいただきました。普段はできないことをやったなという感触はありますね。学生の悩みを聞き、僕たちも初心に立ち返るいい機会になりました。ただそれはアメフトの悪いところでもあると思います。プロのコーチや選手がいないとは言え、やはりビジネスとして成立させていかないと先がないのかなと思っています。

西村:僕の場合は、西村文男という個人事業主が千葉ジェッツと選手契約をしているので、自分でとってきた仕事は千葉ジェッツに報告をすれば、ある程度はOKが出ます。かつて所属していた選手も、子どもたちへのバスケットボール教室をシリーズ化して開催していました。多少の縛りはあれど、自由度はあります。

──その自由度が、発信の多さにもつながっているという印象があります。

坂口:僕は千葉ジェッツのYouTubeも、よく見させてもらっています。西村選手に愛犬がいらっしゃるとか。

西村:ありがとうございます。ニコルとロイドですね。今日はロイドの2歳の誕生日です。

坂口:おめでとうございます!かなり前になると思いますが、アウトレットに行ったこともありますよね。面白いなと思うし、この場に遭遇したかったなとも思います(笑)。

西村:行きましたね。ぜひ坂口さんも千葉ジェッツのYouTubeに参加してください(笑)。

──最後に、ファンの方や読者のみなさんにメッセージをお願いします。

坂口:応援してもらっていることが力になっていると、改めて感じています。それに対して感謝は忘れてはいけないと思っていますし、2年連続の優勝を目指し、オービックシーガルズが日本で一番強いチームだと証明していきたいと思います。ぜひ引き続き応援して、一緒に闘ってください!

西村:自分たちも、応援の力に支えられているのは確かです。できる範囲で、無理のない範囲で、引き続き熱い応援をお願いします!

──楽しいお話をありがとうございました。

オービックシーガルズは新たなシーズンを迎え、2連覇を目指して始動。千葉ジェッツふなばしは優勝を目指し、シーズン終盤へ突入。これからもコート内外での活躍に注目を!

選手プロフィール

西村 文男(にしむら ふみお)
(千葉ジェッツふなばし)

背番号/11
ポジション/ポイントガード
生年月日/1986年9月24日
ニックネーム/ふーみん
出身地/三重県
身長/177cm
体重/72kg
出身校/北陸高校→東海大学

坂口 裕(さかぐち ひろし)
(オービックシーガルズ)

背番号/77
ポジション/オフェンスライン
生年月日/1991年10月2日
コールネーム/グッチ
出身地/神奈川県
身長/190cm
体重/130kg
出身校/横須賀学院高校→立命館大学

取材・文/元盛恵(まいぷれ)