国見山の麓で、冷風が吹き出る「長走風穴」。かつてはその冷風を生かした冷蔵倉庫が20棟以上作られ、津軽りんごを貯蔵して関東方面へ出荷していたそう。周辺には高山植物が群生し、現在は「長走風穴高山植物群落」として、国の天然記念物に指定されています。風穴のしくみや利用方法、歴史などを学べるのが、2018年4月にリニューアルした「長走風穴館」です。多言語表記が充実したミニシアターやパネル展示などがあり、3Fからは屋外の散策路「発見の小径」に出ることができます。
大館市の北部、青森県へと向かう国道7号沿いを走ると現れる建物と温度計。よく見ると、うだるような暑さの日でも、5℃以下が表示されています。0〜5℃の冷風を吹き出す「長走風穴(ながばしりふうけつ)」と、合わせて巡りたい周辺スポットをご紹介。
国見山の麓で、冷風が吹き出る「長走風穴」。かつてはその冷風を生かした冷蔵倉庫が20棟以上作られ、津軽りんごを貯蔵して関東方面へ出荷していたそう。周辺には高山植物が群生し、現在は「長走風穴高山植物群落」として、国の天然記念物に指定されています。風穴のしくみや利用方法、歴史などを学べるのが、2018年4月にリニューアルした「長走風穴館」です。多言語表記が充実したミニシアターやパネル展示などがあり、3Fからは屋外の散策路「発見の小径」に出ることができます。
今回案内してくれたのは、施設を管理する虻川さん。あきた北部風穴研究会の会員でもあり、2023年に開催された「全国風穴サミットin大館」では発表も行ったそう。虻川さんは、「長走風穴館には①電気がなかった時代を知る産業遺産 ②風穴のしくみの解明と紹介 ③高山植物の保護の3つの役割があります」と話します。
長走風穴館の3Fから外に出て、散策路「発見の小径」へ。所要時間約20〜30分の「お手軽コース」では、高山植物の観察やかつて使われた倉庫跡の見学ができます。最初に現れた4号倉庫跡は、散策路内では一番の広さ。風穴冷蔵倉庫は、一帯を掘り起こし、石を四方に積み上げ、その上に屋根を架けて作ります。4号倉庫跡では積み上がった石を間近に見られ、倉庫建設の苦労が伝わってくるようでした。
周辺には、標高1,000m程度の亜高山帯に分布するような植物が自生。長走風穴周辺は標高が170〜240mと低地でありながら、高山植物が見られるということで、登山にはなかなか行けないという人も気軽に訪れて四季の草花を楽しんでいます。
造林用の種子貯蔵庫として、1955年に電気冷蔵施設が導入するまで長く使われた2号倉庫と3号倉庫は、2022年に林業遺産として登録。大正から昭和初期の東北地方における造林事業および山林種苗事業の歴史を理解する上で重要なものであると評価されました。
「発見の小径」散策の終盤に出会うのが、「風穴王」と呼ばれた佐々木耕治の顕彰碑です。秋田県大内町(現・由利本荘市)出身の佐々木は、1902年に長走を訪れた時、当時「化物屋敷」と呼ばれていた風穴の話を聞き、興味を持ちました。高山植物が咲き誇る光景に魅了された佐々木は、風穴について研究し、風穴冷蔵倉庫の建設に着手。1912年に最初の冷蔵倉庫を建設し、その後20年で7棟を建築しました。風穴冷蔵倉庫の経営と高山植物の保護に尽力した「風穴王」の功績を称え、顕彰碑が建てられています。
散策の最後、「長走風穴館」に一番近いところにあるのが、1号倉庫です。入口には風穴と外気の温度が表示され、夏場はその温度差に驚きます。石が積まれた倉庫内は天然の冷気でひんやり! 夏季はドライブ途中に暑さをしのぐ大勢の人でにぎわいます。
冷蔵庫がなかった大正〜昭和初期にかけて、天然の冷蔵倉庫として活用された長走風穴。立ち寄らずに国道7号を走ってはもったいない! 虻川さんは、「毎年夏季にクイズラリーを行っているので、子どもと楽しく回るのもオススメです」と、多くの来場者を心待ちにしています。「風穴王」が心奪われた、不思議な冷気を体験してみてはいかがですか。
長走風穴を訪れたらぜひ立ち寄りたいのが、旧鳥潟家住宅・庭園であり、2024年秋に庭園が国指定名勝となる「鳥潟会館」です。1600年代初めころから続く旧家・鳥潟家は、花岡村の肝煎(村の中心的存在)を代々務め、医者や学者など多数の偉人を輩出しました。中でも、第17代・鳥潟隆三は、コクチゲン(鳥潟軟膏)創製の功績によりノーベル賞候補や京都大学名誉教授となるなど、日本の外科医学界の発展に貢献。拠点としていた京都の暑さから逃れるように、1935年から5年をかけて庭の造営及び邸宅の増改築をしました。述べ1,000人を超える京都の大工・左官を引き連れ、この辺りにはない京風の庭園を造り上げました。いずれは地域に寄贈し、地元の人に活用してほしいと、社交場の意味も込めて「会館」と付けたそうです。鳥潟隆三の願いどおり、1951年、当時の花岡町に寄贈されてからは、結婚式場として利用されていた時期もありました。現在も一部の部屋は有料で貸し出していて、お茶会や結婚式・成人式の前撮りなどのほか、コスプレ撮影のロケ地としても好評だそう。
鳥潟会館には管理人が常駐していて、場合によっては無料でガイドをお願いすることができます。一町田さんは、長年勤めるベテラン。建物や庭園の造りから鳥潟一族についてまで、ユーモアを交えながら楽しく解説してくれます。もちろん配布しているパンフレットにも説明はありますが、一緒にまわりながら話を聞くと、鳥潟会館がどれだけ贅を尽くした施設なのか、鳥潟一族がどれだけの名士を輩出したかを実感することができました。天井や柱、畳など、個人でまわると見落としてしまいそうな部分まで説明してくれるのも魅力です。「観光施設に行く時は、できるだけガイドをお願いするようにしています。見て、知って、まわると、楽しくて夢中になっちゃうんです」 と一町田さん。庭園が国指定名勝になる秋には、庭の紅葉も美しく染まり、より忙しくなりそうです。見学の際は、ぜひガイド付きでまわってみてください。
小腹が空いてちょっと休憩したい時、せっかくなら大館市ならではのグルメを味わいたいですよね。可愛らしい秋田犬と出会える観光交流施設「秋田犬の里」では、大館市の特産・枝豆を生かしたスイーツやお土産品が充実! 中でもオススメは、県産の朝採れ枝豆100%使用の「枝豆ソフトクリーム」です。ほんのりと緑色で、ツブツブの食感が楽しく、枝豆の豊かな香りが口に広がります。県産生乳を使った濃厚なソフトは、リッチなワッフルコーンにピッタリ。ミルクソフトクリームとのミックスも選べるのがうれしいポイントです。お土産の一番人気は、「秋田の枝豆(スナック)」。こちらも県産朝採れ枝豆を100%使用し、ノンフライで焼き上げています。塩味が効いたサクサクと軽い食感のスナックは、おつまみにも◎。いずれも、「秋田犬の里」開館当初からの定番商品です。
冷気が吹き出す不思議な「長走風穴」に今も残る数々の倉庫からは、「風穴王」の情熱がひしひしと伝わりました。ひんやり涼しい「長走風穴」と、2024年秋に国指定名勝となる熱いスポット「鳥潟会館」。大館市のクール&ホットなスポットを満喫してみては。
記事作成:あきたタウン情報