今、“ハードサイダー”がアツい! いで湯とリンゴの郷今、“ハードサイダー”がアツい! いで湯とリンゴの郷

津軽のいろいろ 「平川市」

青森県の南部、津軽平野の南端にある青森県平川市。東に八甲田山、西には岩木山を望むこの地域は古来から農業に適した肥沃(ひよく)な土壌で、青空を映す水田と広大なリンゴ畑がのどかな風景を作り出しています。名所旧跡や湯巡りを通じて歴史に触れながら、地域を巻き込んだ新たなカルチャー“ハードサイダー”との出会いを楽しんでみませんか。

津軽の旅に欠かせない 旅情をかきたてるローカル線

JR弘前駅の「城東口」
弘南鉄道の改札口があるJR弘前駅の「城東口」。ICカード乗車券は利用不可。券売機で切符を購入の上、改札口へ。
弘南鉄道
通勤や通学に欠かせない交通手段の一つとして、地元民に親しまれている。

「弘南鉄道」(こうなんてつどう)は、現在国内最北となる私営の電気鉄道会社。青森県弘前市を中心に隣接する市町村を結ぶ、弘南線(弘前駅―黒石駅間)と大鰐線(大鰐駅―中央弘前駅間)の2つの鉄道路線を運営しています。
秋田方面(JR奥羽本線)から平川方面へアクセスする際は、JR弘前駅改札(2F)を出て「城東口」へ。エスカレーターもしくは階段を降りた先にある、弘南鉄道弘南線の改札口から乗り換えできます。沿線の風景が美しいローカル線として鉄道ファンの人気が高く、趣向を凝らした季節ごとのイベント列車が訪れる人々を喜ばせているそうです。

データ

  • 弘南鉄道 弘前駅
  • 住所:青森県平川市本町北柳田23-5(弘南鉄道株式会社)
  • TEL:0172-44-3136
  • 営業時間:窓口5:40〜22:00

リンゴの価値を新たな角度で発信 未来を創る“ハードサイダー”

醸造所
温浴施設に隣接する醸造所。遠くに岩木山、手前にはリンゴ畑が広がるのどかな風景が、同社のシンボルマークになっている。
CRAZY CIDER DRY
爽やかな香りとシャープな喉越しで、食中酒にもピッタリの「CRAZY CIDER DRY」330ml・660円(中央)などの定番商品。今夏、グァバやマンゴーを使った新商品をリリース。
シードルやブランデーを醸造するタンク
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シードルやブランデーを醸造するタンク。試飲体験や商品購入ができるショップやタップルーム、ブランデー貯蔵庫が誕生する予定なのでお楽しみに。
専務取締役の佐野さん
醸造長を担う専務取締役の佐野さん。「温泉と醸造所で職種は違いますが、人手が足りない所に人員を配置し助け合う体制を確立しています」と、地域の雇用を守る酒造事業の舵を取る。
アップルブランデー「CRAZY DAYS WHITE DREAM EDITION」
アップルブランデー「CRAZY DAYS WHITE DREAM EDITION」700ml・4,840円。封を開けると、みずみずしいリンゴの香りに包まれる。
リンゴの実
リンゴの実が小さなうちにボトルに仕込む、国内では珍しい果実入りブランデーづくりに着手。特別感漂う商品の完成が待ち遠しい。
ブランデー
醸造所一角のスペースで熟成させているブランデー。世界各国のコンペティションへ参加し、国際的な評価を受けて品質を証明していきたいと意気込む。

リンゴの栽培面積・生産量ともに日本一である青森県。平川市は栽培が盛んな中南エリアの中でも、とりわけ高品質なリンゴが収穫される地域として知られています。しかし近年は、高齢化による担い手不足や日本国内の生食用リンゴの消費量減少など、産業として継続するのが危機的な状況に。そんな中、新たなカタチでリンゴの価値を発信しようと、“ハードサイダー”づくりに乗り出した企業がありました。
平川市で温泉施設などを運営する「タグボート」は、2020年に新型コロナ感染症拡大の影響から経営の危機を迎えました。代表取締役を務める水口さんはアフターコロナを見据え、従業員の雇用を守るため、さらには同時に地域課題の解決を図る一助になればと新たな事業である酒造に着手。国や県の補助金を活用した大きな投資を試みて、2021年に自社の温泉施設へ隣接する土地に工場を建設し、シードルとブランデーの製造設備を導入しました。
酒造りに関してはスタッフの誰もが素人でしたが、近郊にある醸造所の協力を得てシードルの製造を学び、平川市を中心とした農家からリンゴを仕入れる体制を整え、商品化への試行錯誤を重ねました。そして、驚きの推進力を発揮し、2022年5月に自社製造のシードルをリリース。現在、青森県内で製造されているシードルは果実の甘さを生かしたものが主流ですが、アメリカで“ハードサイダー”と呼ばれ親しまれている辛口の味わいが受け入れられ、同年の青森県特産品コンクールにおいて最高賞の「青森県知事賞」を受賞しました。さらに翌年、ブランデー製造の免許を取得し、ドイツ人技師を招いて醸造技術を学び、仕込み水に白神山地から湧き出る超軟水の天然水を用いて、2024年1月にアップルブランデーの販売を開始。現在も販路拡大と並行し、精力的に商品を生み出し続けています。
同社の商品名に使われている、“夢中になる”という意味の“CRAZY”。それには「この味わいに夢中になってほしい」という造り手としての想いはもちろんのこと、リンゴ作りや酒造り…すべてをひっくるめて「夢中になって頑張る人を応援する企業でありたい」という決意が込められています。平川市はもちろん、ひいては青森県を盛り上げたいという情熱から生み出すシードルやブランデー。造り手の想いを感じながら、一度は味わってほしい逸品です。

データ

  • 醸造所 CRAZY CIDER
  • 住所:青森県平川市新屋町道ノ下37-5
  • TEL:0172-55-0201
  • 商品販売:県内の一部スーパーや物産店、道の駅など
  • 見学:見学可 ※要予約。一般見学はショップやタップルーム完成後(来春予定)。

心身リフレッシュできる エンタメ要素に溢れた“美人の湯”

エントランス
出入り口は茅葺きの民家を思わせる佇まい。手入れの行き届いた日本庭園風のエントランスには、涼を感じる「ししおどし」などが配されている。
露天「竹林の湯」
露天「竹林の湯」。総ヒバ製の屋根と板塀で囲われた空間は、開放感がありながら心が安らぐ。ほかにも床から浴槽にわたり青森ヒバで作られた半露天もある。
内湯
男女共に浴場には湯の花が浮かぶ内湯のほか、高温サウナや源泉ミストサウナを完備している。
美人の湯
わさおわさお
時折湯の花が見られる無色無臭の源泉。アルカリ性の湯ならではのクレンジング効果で、皮脂の汚れや油分を落とすとされる“美人の湯”。
営業支配人の畳指さん
営業支配人を任されている畳指(たたみさし)さんは、フロント業務から自社製品の販路拡大など、幅広く事業に携わるマルチプレーヤー。
卓球スポット
入館者がフリーで利用できる卓球スポットは、グループ客に好評。子連れにうれしい駄菓子コーナーもあり。
日帰り湯治
湯上がりものんびりくつろげる「日帰り湯治」(8:30〜22:00)1,650円がイチ押し。選べる浴衣or作務衣、タオルのほか、シャンプーなどの無料貸し出し付きプラン。

尾上・平賀・碇ヶ関と3つの地域に分類される平川市ですが、市街地は「平賀温泉郷(ひらかおんせんきょう)」と呼ばれ、多くの温泉が点在しています。どのエリアにも魅力的な温泉があり、その数は20ヵ所以上! 地元民に長く愛されてきた温泉や銭湯から知る人ぞ知る秘湯の一軒宿まで、個性豊かな湯処が多数存在しています。
前オーナーから「タグボート」が事業を引き継ぎ、今年10周年を迎えた「津軽おのえ温泉 日帰り宿 福家」もそのひとつ。どこか懐かしく江戸情緒が漂う佇まいで来店客を迎える温浴施設は、おもてなしの心遣いが感じられる充実の設備と天然温泉が評判です。施設内は広く、男女共に露天風呂やサウナを構える大浴場、内風呂付きの個室に加えて、レストランや休み処、さらにはフィットネスルームや仮眠室まで完備しています。何と言っても最大の魅力は、毎分600リットルもの豊富な湧出量を誇る源泉かけ流しの湯。美肌効果があるとされる「アルカリ性単純温泉」は、湯上がりの肌をつるりとなめらかに整えてくれます。
 同社の営業支配人を務める畳指(たたみさし)さんも、入社以前は施設を利用していたファンの一人。「パソコン一つあればどこでも仕事ができるフリーランスだったので、個室をリモートワークに活用することがありました。業務に励んで疲れたら温泉に入り、英気を養っていましたね」と当時を振り返り、にっこりと微笑みます。まるでテーマパークに来たかのようにはしゃぐ家族連れ、家事の合間にリフレッシュしようと足を運ぶ主婦、雨の日にじっくり温泉に浸かり心身を休める農家など、さまざまな客層で連日にぎわいを見せる湯処。街の散策に疲れたら、のんびり湯に浸かり心身を癒やすひとときを過ごしてはいかがでしょうか。売店に並ぶ「CRAZY CIDER」で、湯上がりの喉を潤すのもオススメです。

データ

  • 津軽おのえ温泉 日帰り宿 福家
  • 住所:青森県平川市新屋町道ノ下35-2
  • TEL:0172-55-0200
  • 営業時間:5:00〜22:00
  • 定休日:不定休
  • 料金:「朝風呂」(5:00〜8:00)300円、「入浴のみ」(8:00〜22:00)450円、ほか各種プランあり

明治文化の面影を感じる 国指定の名勝をじっくり散策

盛美館
庭園へ足を踏み入れると一番に目を引く「盛美館」は、ドーム状の屋根や尖塔、棟飾りが印象的。
和室
当時の面影を残す1階の和室。靴を脱いで上がり、貴重な資料を眺めることができる。
庭園
わさおとつがにゃんわさおとつがにゃん
手入れの行き届いた見事な庭園。全体を見渡せるようにと、北と東の2方向に縁側を廻している。
盛美館
敷地内には神社や石橋、枯滝など、見どころが盛りだくさん。高台にある東屋や「盛美館」など、さまざまなスポットから庭園を眺めよう。
夕暮れの社殿
写真提供:平川市観光協会 「御宝殿」の一般公開は、保存のために入園時間内の30分に1回(約3分)と限られる。

津軽地方に数多く見られる大石武学流の造園を代表する「盛美園(せいびえん)」。京都の無隣庵や清風荘に並ぶ、明治時代の三名園の一つに数えられる国指定の名勝です。北条氏の家臣の血を引く大地主・清藤盛美が小幡亭樹宗匠を招き、明治35年より約9年の歳月を費やして作庭されました。3,600坪に及ぶ園内は、〈真〉と〈行〉を表す築山に松やカエデ、ツツジなどを添えて趣豊かに、そして〈草〉を表す平庭には見事なイチイの大刈り込みが。白砂で池を模した枯池と地泉が二段に構成された庭園内には80種1,300本もの木々が植えられ、四季折々に表情を変える情景の中に、和洋折衷の意匠が美しい「盛美館」がよく映えます。
庭園を鑑賞するために建てられた「盛美館」の1階は数寄屋造りの純和風。一部資料室として公開されており、縁側に腰を下ろしてじっくりと庭の風景を眺められます。現在は一般公開されていませんが、2階はルネッサンス調の洋館。異なる様式が上下で重なる建物は日本においては他に例がないと言われ、美しい外観を眺めるだけでも明治文化の面影を感じられます。また、ジブリ映画『借りぐらしのアリエッティ』に出てくる古い屋敷や庭の舞台イメージとなった場所ということもあり、映画の世界に想いを馳せて見学を楽しむ来園者の姿も多く見られるそうです。
併設する「御宝殿」は、清藤家の特別な位牌堂。大正6年に造営され、その形式は重層入母屋造り唐破風の廟建築。内陣には、鎌倉幕府執権・北条時頼の側室である唐糸御前を祀り、ご本尊に鎌倉時代の彫刻・金剛界大日如来を安置しています。堂内は金箔に覆われ、河面冬山が生涯をかけて作った三部五枚から成る蒔絵が見る者を圧倒します。中でも、桜に孔雀の意匠が施された蒔絵は日本最大であり、漆芸の最高峰として謳われています。

データ

  • 国指定名勝 盛美園
  • 住所:青森県平川市猿賀石林1
  • TEL:0172-57-2020
  • 営業時間:9:00〜17:00 ※10月・11月9:00〜16:30、冬季(11月中旬〜4月中旬)は予約制10:00〜15:00
  • 定休日:無休 ※年末年始(12月29日〜1月3日は休み)
  • 料金:観覧(40分)大人500円、中・高校生330円、小学生220円、小学生未満無料 ※冬季(11月中旬〜4月中旬)は料金が異なる

※営業時間や定休日などは、2024年8月末時点の情報です。紹介施設の都合により、変更になる場合があります。

記事作成:あきたタウン情報

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