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伝統「土崎港(みなと)曳山(ひきやま)まつり」でにぎわう街を楽しむ

秋田市では東北三大祭りの一つ「秋田竿燈まつり」が有名ですが、もう一つ、秋田の夏を語る上で欠かせないのが、毎年7月20日・21日に開催される「土崎港曳山まつり」。地域住民が一丸となって盛り上げる、県内随一のお祭りと、一度は訪れたい土崎地区の名店をご紹介します。

地域が一つになる「土崎港曳山まつり」!

土崎港曳山まつり
あきおとつがにゃんあきおとつがにゃん
提供:土崎みなと歴史伝承館
にぎやかなお囃子とともに、約3トンもある大きな曳山を大人が数十人がかりで引く姿に圧倒されます。これぞまさに夏の風物詩「土崎港曳山まつり」。

秋田市北部に位置し、山形・酒田、新潟とともに日本海側の主要港として栄えた歴史の古い港町「土崎」。そこで毎年7月20日(宵祭)・21日(例祭)に開催されるのが、「土崎港曳山まつり」の愛称で親しまれる神事「土崎神明社祭の曳山行事」です。「ジョヤサ、ジョヤサ」という威勢の良い掛け声とともに、大きな武者人形を乗せた巨大な曳山を引き、土崎の町全体を練り歩く、その圧倒的な迫力が観る者を魅了しています。
「土崎神明社祭の曳山行事」は、地域で崇め敬われてきた土崎神明社の例祭。5月〜9月まで、前後の期間にもさまざまな神事が行われており、何世代にも渡って大切に受け継がれてきました。その歴史は古く、遡ること300年以上前。宝永元年(1704年)に、土崎を訪れる船乗りから、土崎神明社に神輿が寄進されたのをきっかけに、翌年からその神輿を担ぎ歩いたことがお祭りに発展したとされています。それがいつしか地元・土崎の人々にとってなくてはならない伝統行事となり、平成9年(1997年)には国の重要無形民俗文化財に指定、平成28年(2016年)にはユネスコ無形文化遺産に登録されました。
余談ですが、祭りが始まると、土崎地区の各家庭で必ずといっていいほど、「かすべ煮」(エイの乾物を煮込んだ料理)を作って味わうことから、一部では「かすべ祭り」とも言われ親しまれています。

町ごとの個性溢れる曳山が面白い!

曳山
男岩・女岩一対の夫婦岩を土台に、甲冑などを着た人形と、上半身が裸身の人形を並べるのが基本。各町内でどんなシーンが再現されているのか、注目して。

「土崎港曳山まつり」の曳山は、神様が宿る場所であり、それをにぎやかに囃子たてながら練り歩くことで、町内の悪霊や怨霊、疫病などを引き込んで封じ込め、お祭りが終わるとすぐに曳山を解体することで悪霊などを追い払うという意味があります。
この曳山は「ヤマ」「ダシ」とも言われ、30以上ある土崎の町から参加する町内ごとに、毎年新しい曳山が登場するのも見どころの一つ。特に飾り付けが特徴的で、各町内の個性が表れます。前面は、戦国時代の合戦など歴史上のさまざまな名シーンを、武者人形と華やかな装飾で再現。後面は、世相を風刺した〈見返し〉と呼ばれる句とそれを表現した人形を飾り、出来栄えを競うコンクールも行われるなど人気を集めています。コロナ禍以降で初の開催となった2023年は、26町内という戦後最多の参加数を記録。2024年の今年も24町内が参加予定で、各町内の曳山が今から楽しみですね!

「曳山」が年中見られる歴史伝承館も

秋田市土崎みなと歴史伝承館
秋田市土崎の国道7号沿いにある建物。ガラス張りで外側からも曳山展示が見られます。

「土崎神明社祭の曳山行事」の魅力をより深く知るなら、「秋田市土崎みなと歴史伝承館」がオススメ。平成30年(2018年)に開館した同施設では、「曳山展示ホール」「空襲展示ホール」のほか、北前船の模型などの常設展示があり、土崎地区の歴史と文化が学べます。地域の歴史を知ることでより、親しみを持って祭りを楽しめるかも!

特大サイズの曳山にびっくり!

曳山展示
あいにゃんあいにゃん
令和5年にリニューアルした曳山展示。安東実季(さねすえ)とその従兄弟・安東通季(みちすえ)が争った戦国時代の「湊合戦」を再現しています。現在のお祭りで使用されるものよりも大きく、高さ11.5m、重さは約5トンにも及びます。
提灯
土崎神明社の神紋、秋田市の市章、土崎各町内の紋が入った提灯がずらりと並びます。
町名の由来
町名の由来には、港町としての歴史が色濃く反映されているので、歴史好きはチェックしてみて。

ガラス張りで高い吹き抜けのある1F「曳山展示ホール」には、高さ約11.5メートルの特大サイズの曳山が!
年間を通して見学でき、眼前にそびえる曳山をゆっくりと眺められます。ほかにも、土崎各町内の紋入り提灯や同館主催の「見返し大会」の作品も展示されており、お祭りの雰囲気を肌で感じることができます。

「土崎みなと街づくり協議会」の石井さん
施設の指定管理団体「土崎みなと街づくり協議会」の石井さん。

土崎の歴史に詳しいスタッフも在籍していて、希望があれば丁寧に歴史や展示物について解説をしてくれます。取材時は、地元土崎の祭りに魅了された一人である、スタッフの石井さんがお話を聞かせてくれ、「毎年5月を過ぎると各町内で準備が始まり、お祭りが近づいてきたなぁとソワソワし始めますね。今年も多くの町内が参加予定なので楽しみです」と、祭りへの期待を募らせていました。

お囃子
世代を超えて引き継がれるお囃子は、どこか懐かしさがあります。体に響く音をぜひ生で体感してほしいです。

同施設では、4月から毎週日曜日に「港ばやし」「踊り」の実演会も開催しています。石井さんは、「生の演奏や踊りを間近でゆっくりと見学できるので、ぜひ来館して土崎港曳山まつりの雰囲気を感じてください」と話してくれました。

データ

  • 秋田市土崎みなと歴史伝承館
  • 住所:秋田県秋田市土崎港西3-10-27
  • TEL:018-838-4244
  • 営業時間:9:00〜17:00 ※港ばやしと踊りの実演は4月〜の日曜11:00〜。詳細はHPで確認を
  • 休館日:火曜(火曜が祝日の場合は翌日)、12月29日〜1月3日
  • 入館料:無料
  • 駐車場:28台 ※大型バスは事前に連絡を
  • URL:https://tuchizaki.com/

“土崎グルメ”も味わおう!

白帆
旧羽州街道沿いにある店舗。落ち着きのある上品な佇まいに期待が高まる。

「土崎港曳山まつり」の開催に向けてにわかに色めき立つ土崎地区で、港町ならではのグルメも楽しみたいところ。ここでは、地元・土崎で長く愛される老舗を紹介します。

創業から60年以上! 地域に愛される“フグ”の老舗

白帆
テーブル席や座敷席を備えるほか、プライベートな時間を愉しめる半個室も人気。

秋田港の程近く、商人町の歴史が残る旧羽州街道沿いに、土崎地区で長く愛される老舗の呑処「白帆」があります。創業からなんと60年以上。親子三代でバトンをつないできた同店は、現在三代目の早川さんが切り盛りし、今なお地元の呑兵衛たちのお腹と心を満たしています。

三代目店主・早川さん
笑顔が素敵な、地元・土崎出身の三代目店主・早川さん。調理の難しいフグの魅力を、長年磨いてきた確かな技術で伝えている。

白帆と言えば、フグ。そう語られるほど、お客さんの大半はフグ料理を目当てに訪れます。「初代の祖母が営んでいたスナックを、二代目の母が居酒屋に転向してフグと寿司の提供を始めました。それが反響を呼んでいつしかフグ料理が看板になっていったんです」と店主・早川さん。フグと言えば、九州地方で水揚げされるイメージがありますが、実は秋田県は日本最北端の隠れたフグの名産地。中でも土崎地区は、秋田沖で獲れる「北限の秋田ふぐ」が隠れた人気を誇っていますが、提供を始めた当時は地元の人にフグを食べる習慣がなかったそう。そこで、フグの美味しさを知ってもらい、地元の新たな名物にしようと二代目が始め、受け継いだ三代目も現在に至るまで、腕によりをかけたフグ料理で訪れる人々を唸らせています。

迷ったらフグの刺身&唐揚げ

てっさ
とうじくんとうじくん
ファーストチョイスは「てっさ(トラふぐ刺)」2,980円が鉄板。店主が一枚一枚丁寧に引き、お皿の模様が透けて見えるほど透明感のある身が美しい。
名物ゴマふぐの唐揚げ
「名物ゴマふぐの唐揚げ」980円。一個が大きく食べ応え抜群。淡白な味わいと思いきや、下味でしっかりフグの旨みを引き出していて、何度でも味わいたくなります。

白帆では、フグに限らず新鮮な魚介を使った炭火焼きの焼き魚や寿司などを単品やコース料理で提供していて、さまざまなシーンで楽しめるのが魅力ですが、初来店ならまずは看板のフグ料理を! 中でもおすすめは、「てっさ(トラふぐ刺)」と「名物ゴマふぐの唐揚げ」です。大きなお皿にきれいに盛り付けられ、贅沢な気持ちにさせてくれる刺し身は、天然で活きの良いフグの淡白な味わいとコリコリとした食感が美味。ランチタイムの定食でも人気を集める唐揚げは、刺し身とは異なりゴマフグを使用。厳選した珍しい片栗粉をまとわせ揚げた一品は、竜田揚げ風のサクッと軽い衣からあふれる、フグの身の強い弾力と旨みに思わず笑みがこぼれます。そのほかフグ料理は、アラ炊きやしょっつる蒸し、ヒレ酒もあるのでぜひお試しを。

祭りと並ぶ、夏の風物詩

かすべ煮
6、7月頃から期間限定で登場する「かすべ煮」780円。老舗ならではの地酒や東北の銘酒とともに味わって。
かすべ煮
手間暇かけて煮込んだカスベは、ぷるぷるとした身とコリコリとした軟骨の食感がたまりません。甘辛い味付けが酒の肴にぴったり。
くじらかやき
もう一つの夏の定番「くじらかやき」980円もぜひ。塩くじらとナス、みず(山菜)を、地元・那波商店の味噌で煮込んでいます。

「土崎港曳山まつり」が近づく夏の時期になると、常連がまだかまだかと登場を心待ちにしている料理があります。それはお祭りの愛称「カスベ祭り」の由来にもなっている「かすべ煮」(エイの干物を甘辛く柔らかく煮込んだ料理)です。「冷蔵庫が普及していない時代、保存の利くエイの乾物が重宝されたようで、各家庭でよく作られていたんです。冷めても美味しく、暑い時期でもいたみにくいから夏のごちそうだったんですよ」と、地域で親しまれてきた理由を語る早川さん。祭りを目前に控えた6月頃になると、仕込みを始めるそうですが、「大量のエイの干物をまずは2日かけて水で戻すんです。その後、醤油や酒、生姜などでたっぷり6時間ほどかけて煮込むから実は結構手間がかかってるんですよ」と大変さをにじませながらも、「毎年楽しみにしてくれる常連さんもいますし、準備しないとね」と笑い、訪れるお客さんと同様、一年に一度のお祭りを愉しみにする“港っ子”の横顔になんだかほっこりしました。
三代目の早川さんになってから独自のルートを開拓し、貴重な地酒や全国から仕入れる日本酒も豊富に揃えていて、これがまた「かすべ煮」によく合うんです。一度「かすべ煮」と地酒を味わって、地元の風情を感じてみてください。

データ

  • 酒肴旬菜 白帆
  • 住所:秋田県秋田市土崎港中央1-14-11
  • TEL:018-847-0189
  • 営業時間:11:00〜14:00(LO/13:30)※ご飯がなくなり次第終了
    17:30〜22:00(フードLO/21:00、ドリンクLO/21:30)
    ※金曜・土曜は〜23:00(フードLO/22:00、ドリンクLO/22:30)
  • 定休日:日曜・祝日、第2・第4月曜 ※「土崎港曳山まつり」期間(7月20日・21日)は休み
  • 席数:74席
  • 駐車場:12台

地域全体が一丸となって楽しむ「土崎港曳山まつり」は、観る人をアツくさせるエネルギーにあふれています! ぜひ祭り当日だけでなく、地域の歴史に触れたり、地元グルメを味わうことで「土崎」の魅力を感じてみてくださいね。

記事作成:あきたタウン情報

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