1998年、町役場などを構える中泊町の中心地・中里エリアに開館した「中泊町総合文化センター パルナス」は、図書館や文化ホールを備えた文化複合施設。奥津軽屈指の旧家「宮越家」の窓口やシャトルバスの発着地点として、観光拠点の役割も担っています。
開館当初から館内に構える「中泊町博物館」は、奥津軽の自然や歴史、民俗、産業など幅広い分野を網羅し、現代へ伝える貴重な施設。“てんとう虫”の愛称で知られる名車「スバル360」を目印にパルナスの奥へ進むと、博物館の入口にたどり着きます。
来館者を迎えるシンボリックなブルーの車両は、日本初の森林鉄道「津軽森林鉄道」を颯爽と駆けたディーゼル機関車の復元モデル。エントランスから特別展示室にかけては企画展を行うギャラリー、その先のスペースには津軽鉄道の終着駅「津軽中里」のある地域らしくストーブ列車の車内が再現され、この地で育まれてきた文化と人々の暮らしを垣間見ることができます。常設展示室は原始・古代・中世・近世・近現代の5つのゾーンに区切られ、それぞれにシアターやゲーム、パズルなど、体験型の仕掛けを配置。見て、触れて、楽しみながら、中泊町を含む奥津軽ひいては青森県の変遷をじっくり辿ることができます。津軽平野周辺の遺跡から出土した土器や歴史を紐解く貴重な資料、寄贈された仏像からレトロな暮らしの道具まで並ぶ展示は、見る者の探究心をそそります。
ぜひ注目してほしいのは、目線より高い位置に掲げられた年表。常設展示室をぐるりと囲むように、世界と日本そして青森の出来事が記されています。世界情勢やその時代ごとのトピックスと照らし合わせて、原始から近現代までの歩みを追うのは楽しいものです。
取材時は、春の一般公開の会期に合わせた企画展「宮越家文化遺産の魅力―奥津軽の至宝―」が行われていました。令和6年7月20日(土)〜9月22日(日)は、「小説『津軽』の旅80周年―旅人がみた中泊―」が開催されます。近現代の著名人たちの視点を通し、その時代背景などを紹介。町を訪れた作家たちが記録した紀行文・小説のほか、太宰治に関わる貴重な資料や小説「津軽」の世界を復元する展示が行われるそうです。