日本一の伝統と技術の高さを誇り、日本三大花火大会の一つとして称される「全国花火競技大会(通称:大曲の花火)」。8月の最終土曜、全国屈指の花火師が大仙市・大曲へ集結します。その技をひと目見ようと、およそ70万人もの観覧者が訪れる大会なんです。
全国から選抜された一流の花火師たちが日本一の座をかけて技を競う「全国花火競技大会」。その舞台となる秋田県大仙市・大曲は、四季を通して花火が楽しめる“花火のまち”。そこには、大会に熱い思いを抱く地元の花火職人がいます。
日本一の伝統と技術の高さを誇り、日本三大花火大会の一つとして称される「全国花火競技大会(通称:大曲の花火)」。8月の最終土曜、全国屈指の花火師が大仙市・大曲へ集結します。その技をひと目見ようと、およそ70万人もの観覧者が訪れる大会なんです。
日本各地で行われる花火大会のほとんどが、祭りや地域のイベントなど夏の風物詩の一つとして数えられる一方、「大曲の花火」は花火師の競技会として開催。現在は、全国から選び抜かれた30社以内の花火業者により、「昼花火の部」と「夜花火の部」に分けて競技が行われます。
感染症の拡大で花火大会等のイベントが軒並み中止となり、苦境に立たされた花火業界。皮肉にも、花火は疫病退散や鎮魂のために打ち上げられたのが始まりと言われています。新たなライフスタイルが浸透しつつある中、「第94回全国花火競技大会」の開催がついに決定! 誰よりも楽しみにしているのは花火職人ではないでしょうか。
同大会が行われる大仙市にある花火業者4社の中でも、「株式会社 小松煙火工業」は創業130年余りの老舗で、花火の製造・販売から、打ち上げや花火大会の演出までを行います。4社で結成される「大曲の花火協同組合」の代表理事でもある小松忠信さんの元で現在修業に励む小松智昭さんに、ものづくりや「大曲の花火」への思いを聞きました。
花火の魅力について尋ねると、「妻に初めて『大曲の花火』へ連れて来てもらった時、音楽付きのワイドスターマインに感動したんです。(花火を打ち上げるって)すごい職業なんだな、と。それにフィナーレに行われる花火師とのエール交換でお客さんの感謝が伝わってきて…、花火ってそれだけ魅力的なんだと肌で感じて、この世界に飛び込みました」と話してくれました。
歴史に裏打ちされた伝統の技を、最新ツールを駆使した演出と融合し、光と音で届ける同社。主役の花火は火薬を調合する「配合」に始まり、火薬の玉を作る「星掛け」、火薬の玉を込める「玉込め」、仕上げの「玉貼り」の4工程で、一つひとつ手づくりされています。
花火づくりはすべて手作業なので、一つひとつの工程が出来に直結します。「玉込めは1日でできるとしても、玉貼りには1週間…。玉一つ作るのに10号(直径30cm)だったら1カ月くらいかかるんです。それが打ち上がると7、8秒で終わってしまうんですよね。その一瞬を見てもらうために、思いを込めて作っています」。
今年は11月まで、約80カ所のイベントで打ち上げ予定とのこと(取材時は6月下旬)。「コロナ禍ではありますが、感染状況が落ち着いてきたことをうけて、イベントの開催が続々と決まってきました。例年ですと4月から繁忙期に入りますが、急に繁忙期が来たといったところです」と教えてくれました。
これから花火師としての経験を積んでいく小松さんに、〈伝統を受け継ぐこと〉について伺いました。「火薬類の爆発や発火の事故を起こしたら130年の会社の歴史を失ってしまうので、安全は第一です。しっかり受け継いで、次の世代にもつなげていきたいです」。
2022年夏、待ち望む声が多く聞かれる中で3年ぶりに開催される「大曲の花火」について、小松さんは話します。「各花火業者はこの3年近く休業等を強いられる中で、たくさんの構想を広げられたのではないかと思います。『大曲の花火』は私たちにとってもやはり特別な思いがあります」。
大会の見どころについて尋ねると、「夜花火の部は10号玉・芯入割物、10号玉・自由玉、創造花火の順番で行われます。『大曲の花火』が発祥となっている創造花火は、その年の最新技術やアイデアを盛り込んでくるので、見たことのない演出が見られ、この競技会ならではだと思います」。
気になるのは、「小松煙火工業」の花火の特徴です。「多重芯※ですね。10号玉・芯入割物は今のところ最高レベルが五重芯。毎年この大会で最高を目指して、芯がいかに綺麗になるかの挑戦です。〈芯が綺麗に出てこそ小松!〉の評価をいただけたらと思っています。ぜひそこに注目して見てください」。
※多重芯…外側の大きな円の中に小さな円が見える花火の、内側の円を「芯」と言い、割物の花火で芯があるものは「芯入」と呼ばれる。それが複数入ること。
10号玉・自由玉の見どころについて、「美しさと新しさ。あとは玉名と花火のイメージが合っているかに注目してみてください。そういうポイントがわかると楽しいですよね」と話してくれました。
最後に、「昼花火の部」で「小松煙火工業」は3連覇を果たしています。「光と音と煙で魅せる昼花火は、全国で『大曲の花火』のみの演目です。4連覇はもちろん、狙うは夜花火の部との総合審査による最高位『内閣総理大臣賞』です」。
「いずれは自分が考案した玉を『大曲の花火』で打ち上げられるようになりたい」と力強く話してくれた小松さん。時間をかけて作った花火玉が瞬時で消える儚さはありつつ、一瞬で多くの観衆を魅了する大曲の花火、この夏こそ見に行くのが楽しみです。大仙市・大曲では、春夏秋冬にわたって花火が打ち上げられているのでぜひ注目してみてください。
記事作成:あきたタウン情報