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世界自然遺産の恵みで造るお酒とは?

青森県と秋田県にまたがる世界自然遺産・白神山地は、世界最大級の規模で原生的なブナの天然林が分布しています。貴重な動植物が息づく森は今もなお、豊富な水資源の源に。白神山地の麓にある秋田県・八峰町では、その天然水をいかした酒造りが行われています。

大自然が生み出す清らかな天然水

白瀑
男滝と女滝から成る白瀑は、白瀑神社の裏手に位置。八峰町の夏の風物詩である例大祭・通称「みこしの滝浴び」が行われる。

美しく連なる山々と日本海に抱かれ、自然豊かな八峰町。日本海ができた頃の堆積岩と海底火山活動により噴出した溶岩が隆起して形成されたこのエリア一帯は、名滝・白瀑(しらたき)をはじめ、白神山地を源に発する湧き水のスポットとしても知られています。ブナ林に降った雨は地下にゆっくりと浸透し、天然のフィルターを通って再び地表に。長い時間を経て、余分なミネラルを含まない超軟水が湧出するのです。

豊かな湧き水をいかした酒造り

山本酒造店
なまはげくんなまはげくん
令和2年4月、先祖に対する敬意と創業時に立ち返るという意味を込めて、創業時の社名「山本酒造店」に。酒蔵を含めた社屋の装いも一新。

現在、6代目蔵元・山本友文さんが営む「山本酒造店」は、町唯一の酒造店。八森や峰浜一帯の田畑を所有する地主だった曽祖父が、明治34年に創業しました。「広大な土地があったからか、米がたくさん手に入るからか。そこから酒造りが続いています」と、山本さん。海岸そばに建つ酒蔵敷地内の地下水が酒造りに適さず、昭和7年に多くの村民(旧八森村)の手を借りて、2km以上に及ぶ自家水道を設置しました。
白瀑の中腹ほどに湧き出る天然水を引き、仕込み水にしたことで酒の品質が劇的に向上。広く名の知れる蔵元となり、その仕込み水は今も変わらず受け継がれています。

“地元愛”を持った造り手たち

山本さん
アメリカで機械工学を学んだ経歴をいかし、田んぼでは農機具を運転する山本さん(左)。酒造りに関する機器メンテナンスなども自ら担っているそう。

自身が代表になってから杜氏制を廃止し、製造工程の全てに携わる山本さん。力仕事の多い酒蔵では珍しく、同社のスタッフの男女比は同等で、20代・30代の若手が中心。ロボットアームを導入するなど、男女隔てなく働ける環境づくりへの工夫を惜しみません。また、酒造りに励むのは、八峰町、能代市、県境の深浦町(青森)から通う生活圏の人ばかり。地元に愛着を持った造り手たちが楽しく仕事にまい進しています。

この土地、この水だからこその味わいを

純米吟醸 山本 ピュアブラック
あきたこまちちゃんあきたこまちちゃん
凛としたたたずまいのラベルが目を引く、看板商品「純米吟醸 山本 ピュアブラック」720ml。グレープフルーツを思わせる爽快な口当たりとキレのある後味がたまらない。

杜氏制度の廃止から程なくして、醸造アルコールの添加物を全廃。純米酒に特化した酒造りに大きく舵を取って試行錯誤の末に誕生したのが、“山本”のブランドでした。「ミネラル分の少ない天然水を使うと発酵が緩慢になるけれど、低温でじっくりと醸造することで“山本”の味わいになるんです」。同社の日本酒は、フレッシュな酸味とキレのある後味が特徴。多くの日本酒ファンをうならせるその味わいは、この土地ならではの天然水やこだわり抜いた米の持つポテンシャルを最大限に引き出し生まれたものだったのです。

全員がオールラウンダーを目指して

山本さん
「事務方は少し長めに担当してもらうけれど、2〜3年で担当を変えます」と山本さん(左)。産休を経て復帰するスタッフも多く、社内は明るく活気に満ちている。

酒造りは工程ごとに担当が割り振られ、黙々と同じ作業を担うのが一般的です。しかし、いずれもポジションも数年で変えるのが山本さんのこだわり。「酒造りは全体を把握すると、とても複雑で難しくて…でも、そこが面白いんです」。 そんな酒造りの楽しさをスタッフ全員と共有し、一丸となって誇れる日本酒を生み出したいと考えています。

感謝と応援の気持ちを込めた限定酒

限定酒
とうじくんとうじくん
2021年初夏に出荷し、好評を得て年末に第二弾を出荷。50%まで磨き上げた美郷錦と自社酵母が織りなすリッチな味わいを破格で楽しめる。全国の一部飲食店で提供。

同社では社屋から程近くの田んぼを借りて、秋田県独自の酒造好適米・美郷錦を育てています。生産を始めた頃は今とは異なる棚田でしたが、より良い品質を目指して数年前に現在の場所へ。白瀑の真上から引いた天然水で育てた酒米は、一部の限定酒に使われています。コロナ禍に〈いつもお世話になっている飲食店を応援したい〉との思いで出荷した、「コロナウイルスの馬鹿やろー!!」もその一つです。このお酒のラベルには一日も早い収束を願った山本さんの思いが綴られています。飲食店はもとより、外でお酒を嗜むことを楽しみにしている消費者にまで、その思いはきっと届いているはずです。

「日本酒は頭で飲むな。心で飲め」

酒造り
山本酒造店が掲げる〈楽しく、真面目に、酒造り〉。酒蔵にはいつも音楽が流れ、スタッフたちは楽しい雰囲気の中で仕事に励んでいる。

その味わいはもちろん、遊び心あふれるラベルデザインでも知られる山本酒造店。ラベル裏には、お酒の紹介として原料のこだわりなどを明記するのが一般的ですが、同社では造り手である山本さんの思いが書かれています。「先入観を持ったり難しいことを考えずに、心から楽しく飲んでほしい」。元々は、音楽業界で国内外を飛び回っていたという山本さん。これまでの経験に裏打ちされたアイデアが、ブランディングに生きているよう。白神山地の恵みを受けて、“山本酒造店らしい”楽しい酒造りに励んでいます。

もっと日本酒が好きになる

木桶
ガラス窓越しに、醸造の様子が見られるそう。四合瓶で約200本分になる比較的コンパクトな木桶を並べ、行く行くは酒造り体験もできるよう計画中。

ファンを喜ばせるための新たなプロジェクトが始動! 2022年8月、自社製品のテイスティングを楽しんだり、酒造り体験ができる施設を社屋に併設しオープンします。JR東八森駅そばにあることもあり、町の観光がてら立ち寄れるようにと構える同施設には、マイクロブルワリーさながらのこぢんまりとした醸造スペースも。飲むだけではなく体感することで、よりこの地で醸す日本酒に愛着が湧くことでしょう。

データ

  • 施設名:山本酒造店
  • 住所:秋田県山本郡八峰町八森字八森269
  • TEL:0185-77-2311
  • 酒造見学:不可
  • 直販:一部販売あり(平日8:00〜17:00)
  • 通販:https://sakeyamamoto.theshop.jp ※焼酎やグッズの販売のみ

世界自然遺産の豊かな恵みと、地元愛にあふれる造り手から生み出される山本酒造店の日本酒。一本に込められたバックグラウンドを知ると、正においしさもひとしお。白神山地に思いをはせながら、じんわりしみる味わいに浸ってみてはいかがでしょう。

写真提供:山本酒造店、八峰町

記事作成:あきたタウン情報

※本記事はブナの学校運営協議会の企画で制作しております。

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