八郎太郎伝説 ~龍の伝承が息づく秋田三湖を巡る旅~八郎太郎伝説 ~龍の伝承が息づく秋田三湖を巡る旅~

龍とともに、伝説の湖を巡る

秋田県には男鹿のナマハゲを始め様々な伝説がありますが、十和田湖・八郎潟・田沢湖を巡る壮大な物語「八郎太郎伝説」も有名です。そして、それぞれの湖は観光地としても人気で、特に自然豊かな情景は訪れる人を癒してくれることでしょう。
八郎太郎の波乱の物語と一緒に、3つの湖を巡ってみませんか?

十和田湖 ~龍となった八郎太郎と南祖坊~

十和田湖
あきおあきお
霧が立ち込める幽玄な湖面(写真:秋田県提供)
997展望所
白地山登山コース「997展望所」より。山が色づくころのハイキングもオススメです。(写真:秋田県提供)

その昔、今の鹿角市のあたりに八郎太郎という、身の丈6尺あまりの力強い若者がおりました。ある日、八郎太郎は仲間と一緒に山奥へ入りました。炊事番だった八郎太郎は仲間の分のイワナを焼き始めましたが、あまりに美味しそうだったものですから、すべて平らげてしまいます。すると、あえぐほど喉が渇き始め、沢の水をがぶがぶと飲んだところ、仲間の分までイワナを食べてしまった罰なのでしょうか、いつの間にか八郎太郎は龍となっていたのでした。
泣きながら仲間と別れざるを得なかった八郎太郎は、沢の流れをせき止めて作った湖「十和田湖」に住むようになりました。しかし、南祖坊という修行僧と湖の主の座をかけて熾烈に争うも負けてしまいます。居場所を失った八郎太郎は西へと流れていくのでした。
さて、八郎太郎と南祖坊との戦いは幾日幾晩も続き、湖は荒れ、山は震えたといいます。実は十和田湖は数万年前の火山のカルデラ湖で、何度も噴火を続けており、平安時代にも一帯で噴火があったとされていますから、その大災害の言い伝えが物語の下地にあるのかもしれません。
地質的な楽しみ方もできる十和田湖ですが、自然豊かな湖畔は春夏秋冬訪れる人々を芳醇な風景で迎えてくれます。秋田県の鹿角市と小坂町の境にある発荷峠は絶好のビューポイントで、十和田湖の全貌と、湖を抜けて青森側の南八甲田の山々までを抑えることができます。

データ

  • お問い合わせ先:小坂町観光産業課観光商工班
  • 電話番号:0186-29-3908

八郎潟 ~二つ目の湖、安住の地~

八郎潟
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八郎潟の干拓によってできた広大な農地(写真:大潟村干拓博物館)
菜の花ロード
春の桜並木と菜の花ロードは圧巻の一言(写真:大潟村干拓博物館)

十和田湖を追われた八郎太郎は、米代川を下りながら西へと向かっていきます。ところどころで留まろうとするも、その土地の神様に追われ、なかなか落ち着くことはできませんでしたが、南の方へ向かえば広い土地があると耳にし、更に歩みを進めていきます。
やっとか八郎太郎は目的の土地に着きますが、そこにはとある老夫婦が住んでいました。八郎太郎は、「ここは湖になってしまうから早く逃げなさい」と告げます。老夫婦が荷物をまとめて土地を離れると、大地が割れ、瞬く間に大水がやってきました。しかし、お婆さんが忘れ物を取りに戻って来てしまいます。八郎太郎はえいやっとお婆さんを放り投げて川の向こう側に飛ばし、その命を助けたのでした。
その後、八郎太郎は大水によってできた湖、八郎潟の主となります。
八郎潟の成り立ちは伝説とは違うようで、北の米代川と南の雄物川から、当時は島だった男鹿にまで砂などの堆積物が溜まった結果できた湖です。琵琶湖に次ぐ日本第二位の面積がありましたが、世界でも稀な大規模干拓事業により、現在は広大な田園風景が広がっています。
計画的に作られた大規模な農地はそれだけで壮観ですが、春に満開となる大潟村の桜並木と菜の花ロードはドライブポイントとして大勢の観光客が訪れ、秋から冬にかけては白鳥、ハクガン、オオワシなど、野鳥観察地としても有名です。

データ

  • お問い合わせ先:大潟村干拓博物館
  • 電話番号:0185-22-4113

田沢湖 ~辰子姫と八郎太郎の二人~

たつこ姫像
あきおあきお
田沢湖畔に佇むたつこ姫像(写真:仙北市観光課提供)
997展望所
湖畔のビーチは家族連れやアウトドアで楽しむ人たちでいっぱいです(写真:仙北市観光課提供)

八郎太郎が八郎潟に落ち着いたころ、田沢湖のあたりに辰子という見目麗しい娘が暮らしていました。辰子はその若さと美しさを永遠に留めたいと願い、観音堂に百日願掛けをしたところ、山奥の泉の水を飲むよう示されます。辰子はその通りに水を飲みますが、耐えがたいほどの渇きを覚えて飲み続けると、いつしかその身は龍となっていたのでした。身の丈を超えた願いへの報いに悲しみにくれる辰子は、田沢湖に消えて行き、その主となります。
一方、八郎太郎は風のうわさで辰子という美しい娘がいると聞き、田沢湖へ向かいます。そこで辰子と八郎太郎は出会い、同じような境遇だったからでしょうか、良い仲となったそうです。八郎太郎は冬になると田沢湖で暮らすようになり、そのためか厳冬でも湖は凍らないようになりました。
田沢湖といえば一時期クニマスが話題となりましたが、辰子が龍となったことを悲しんだ母親が湖に投げ込んだ灯りがクニマスとなったという伝説もあります。湖畔の田沢湖クニマス未来館では、生きたクニマスの展示や、昔の湖畔の暮らしなど様々な展示が行われています。
また、カヤックやカヌーなどのウォータースポーツが盛んですが、最近は湖畔で入れるテントサウナやグランピングなど益々アウトドアでも楽しめる地域となっています。

データ

  • お問い合わせ先:仙北市観光情報センター「フォレイク」
  • 電話番号:0187-43-2111

伝説にも諸説ありますが、今回ご紹介したお話では、身の丈以上のものを求めたり、欲をかいたりしてしまうと罰が当たるというのは昔話の常ですが、八郎太郎もずいぶんと苦労をしてしまいました。とはいえ、最後には辰子という素敵な相手を見つけられたのは良かったのかもしれません。今でも八郎太郎は神様として神社やお祭りで祀られています。
そんな八郎太郎、そして辰子が作った三湖は、ご紹介した通りの風光明媚、たくさんの方々が訪れる人気の観光地となっています。八郎太郎の物語の足跡を巡りながらの三湖の旅は、今度は貴方の素敵な物語を作ってくれるかもしれません。

記事作成:JR東日本秋田支社

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