秋田県由利本荘市の静かな山里に鎮座する「森子大物忌神社(もりこおおものいみじんじゃ)」。奈良時代初期に創建され、秋田県と山形県の県境にそびえ立つ鳥海山の信仰における滝沢修験の拠点となった神社で、本地仏を祀る鳥海山山頂へ通じる滝沢口登拝道が開かれています。拝殿は1855年に再建、2011年には国登録有形文化財に指定されました。
近年大ヒットしたアニメや映画ゆかりの〈聖地〉と言われる場所が秋田県内の各地にあり、注目されています。その一つが、由利本荘市の「森子大物忌神社」。全国から熱心な映画ファンが訪れる神社の魅力に迫ります。
秋田県由利本荘市の静かな山里に鎮座する「森子大物忌神社(もりこおおものいみじんじゃ)」。奈良時代初期に創建され、秋田県と山形県の県境にそびえ立つ鳥海山の信仰における滝沢修験の拠点となった神社で、本地仏を祀る鳥海山山頂へ通じる滝沢口登拝道が開かれています。拝殿は1855年に再建、2011年には国登録有形文化財に指定されました。
五穀豊穣や家内安全などにご利益があるとされているこの神社。2022年に公開された大ヒット映画に登場する、バスケットボール強豪校の主力選手が願掛けした神社に似ているとSNSで話題になり、以来多くの方が訪れています。2008年に設立し、神社の保全と周知を行う「森子大物忌神社文化保存会」の会長に話を聞きました。
「映画のおかげで集客につながっています。若い女性が一人で来ることも多く、『(来るのは)3回目』とおっしゃる方もいましたよ」と語気を強めます。「一ノ鳥居から拝殿までは約300段の石段が築かれています。杉木立に囲まれているので、風や雪の影響をあまり受けず登っていけます」と、精通者ならではの見解もありました。
多田さんらが属する保存会は、2009年の国指定史跡の指定をきっかけに「森子大物忌神社」境内一帯(約3.5ha)の保全整備や活用に向けた取り組みを行い、2016年に「秋田県特別表彰」を受けました。神社までの案内看板を道路の要所要所に設置したり、駐車場を整備したことで、多くの人が訪れやすい場所になっていることは間違いありません。
保存会の取り組みがきっかけで、集落から離れた若者が神社祭に参加するようになったそう。「4月の第3日曜、今年は6年ぶりに例大祭が行われます。米俵10俵分と言われる御輿を若者が担ぎ、約300段を一気に登る姿をぜひ見に来てください」と、多田さんは目を輝かせました。映画ブームの後押しもあって、注目はさらに高まりそうです。
「昨年は宮司が亡くなった年でした…。けれど、親族の2人が神職の資格を取り、今は禰宜として奉職しています。どちらもとてもハツラツとして頼もしいんですよ」と目を細める多田さん。禰宜さんは、同神社の情報はもちろん、神職のことや神社の豆知識などをInstagramで発信しています。訪れる前にそちらもチェックしてみてください。
「森子大物忌神社」のすぐ近くに構える「熊谷寅蔵商店(くまがいとらぞうしょうてん)」は、大正時代に創業。“何でも揃う”お店として地域に親しまれ、今なお住民の暮らしを支えています。現在は3代目が営み、地元のお酒やここでしか手に入らない神社の御札・御朱印などを取り扱い。遠方から訪れる人も後を絶たない商店です。
これまでお店には、何度も京都から訪れた方や、日本各地から東京に集合してバスケの街・能代市に寄った後訪れた女性グループなど、全国から映画ファンが多くいらっしゃったそう。そんな熱烈なファンが思いの丈を綴る「聖地巡礼ノート」があります。イラストやスタンプとともに“推し”を応援する記録の数々…必見です。
由利地域(旧由利町)で栽培された秋田酒こまちを原料米とし、同市内の齋彌酒造店が仕込んだ純米吟醸「百竈」が手に入るのは、同店を含む由利地域の4店舗のみ。「爽やかでフルーティーな味わいですよ」と店主の奥さんが太鼓判を押す1本を、ロゴ入りのヒノキ枡と合わせてお土産にしてみてはいかがでしょうか。
先に紹介した「森子大物忌神社」と「熊谷寅蔵商店」は、由利高原鉄道・黒沢駅より徒歩約25分の距離にあります。秋田県外からもファンが訪れる、全長23kmのローカル線『由利鉄』を利用するなら、沿線に広がる四季折々の景色はもちろん、地元グルメも楽しみたいところ。オススメの飲食店2軒をピックアップします。
由利高原鉄道・前郷駅(黒沢駅の隣)から徒歩約5分のところにあるその名も「前郷食堂」は、定食や丼を中心に幅広いメニューを揃えています。和食店などさまざまな飲食店に長年勤めた店主が昨年構えた、念願の自店舗です。アットホームな雰囲気が魅力で、四季折々の山海の幸を使った料理をリーズナブルに味わえると好評を得ています。
駅近という利便性の良さからか、学生も多く訪れるという同店。通し営業なので、いつでも立ち寄れるのがうれしいです。店内に入ると、かつて寿司ネタが並んでいたであろうL字のカウンター席が目に留まります。さまざまなメニューの中から、何を食べようか悩むのは至福のひととき。次回の楽しみにもつながります。
地元の食材を取り入れた丼や定食、一品料理など豊富なメニューの中でも、オススメは「レバニラ定食」。冷水で洗い、牛乳に漬け、再び冷水で洗って血抜きをしっかり行ったレバーは、「苦手だけどこれなら食べられる」と話す人もいる、店主自慢の一品です。メニューのほとんどテイクアウトできるので、ご自宅でもぜひ。
店主は「お腹いっぱいになってほしい」、「地域に貢献したい」という思いで料理を提供し、その盛りの良さには定評があります。サービス精神豊富な「前郷食堂」に今後もメニューが増えそうな予感がします。大学生までは、丼や定食が学割でなんと500円に! 長く通いたくなる理由がお店にはたくさんありました。
由利高原鉄道・吉沢駅から徒歩約10分のところにある、地元で人気のラーメン店「仁平(にへい)」。羽後本荘駅前で営んでいたものの、店主が由利高原鉄道沿線ののどかな立地に魅了され、昨春にお店を移転しました。燕背脂ラーメンの味に惚れて最近スープを一新し、煮干しの風味を存分に味わえる一杯を提供しています。
京都「麺屋棣鄂(ていがく)」から仕入れる麺、ヒゲタ醤油や秋田県仙北市にある安藤醸造の醤油など、素材選びに余念がありません。スープベースは、その時々の煮干し2種類、サバ節、ムロアジ節、宗田節、昆布、香味野菜などで丁寧にとった魚介ダシ。煮干しの芳醇さが際立ちます。それに味の決め手となる返しと、麺4種類を使い分けたメニューの数々に何度でも通いたくなります。
限定麺を含む7種類のメニューがあり、店主のオススメは「背脂煮干し中華」。スープをまとった太麺をすすると、口いっぱいに煮干しの風味が広がり、良質な背脂によるまろやかな後味に、ふわっと岩のりの香りが漂います。玉ネギや穂先メンマの食感が小気味良く、最後まで飽きずに食べられるのもポイントです。
「スープを変えたことで、煮干し感のあるラーメンになりました! ぜひ何度も足を運んで、お気に入りの一杯を見つけてください」と店主。「味噌らあめん」など、季節ごとの限定麺も人気という同店。ブラッシュアップした一杯の今後にも期待が高まります。景色を見ながら味わう店主渾身のラーメンは格別なはずです。
映画をきっかけに多くの人を引き寄せる「森子大物忌神社」には霊験あらたかな雰囲気があります。心温まる人との交流や、地元で人気のグルメに出会えば、力がさらにみなぎってくるはずです。心身ともにパワーが宿る旅へ出かけてみませんか。
※掲載内容は2025年3月時点の情報です。
記事作成:あきたタウン情報