藩政時代から愛されてきた冬の風物詩藩政時代から愛されてきた冬の風物詩

真冬にアツい! おまけの祭典
黒石市で続く“マッコ市”とは!?

雪国・青森の中でも、積雪が多いことで知られる黒石市。中心部に位置する商店街には、伝統的建造物や日差しや吹雪から人々を守るアーケード「こみせ(小見世)」が藩政時代からほぼ変わらぬ姿で今も残り、散策を楽しむ観光客の姿が多く見られます。国指定文化財や昔ながらの造り酒屋などが並び、情緒豊かなムードが漂うエリアですが、一際にぎわいを見せるのは毎年2月の第1日曜と決まっています。それは、寒さに負けない熱気が漂う「旧正マッコ市」の日。この日ばかりはどのお店も大盤振る舞い! 買い物をすると、各店でおまけをもらうことができるのです。

福まき・抽選・格安・大盤振る舞い
今も昔もにぎわう「旧正マッコ市」

工藤さん
開催日の約1カ月前。「どのお店もお客さんに喜んでもらいたいと、今年のマッコを何にしようかぎりぎりまで悩むんですよ」と楽しそうに話しながら、今年の目玉商品を掲載したチラシづくりに励む工藤さん。

「旧正マッコ市」は、諸説ありますが、“金物屋が1年分の注文予約を受けた際、顧客におまけをあげた”ことが始まりといわれています。黒石商店街協同組合が運営を行い、「マッコ市」の愛称で地元民を中心に今も親しまれ続けています。
そもそも「マッコ」とは、津軽地方で“おまけ”や“お年玉”という意味。商店街に軒を連ねる各店舗が思い思いのマッコを張り切って用意し、お客様を迎えます。さらに、マッコに加えて、購入金額に応じた福引や抽選も行われるため、この日ばかりは皆一様に財布の紐を緩めて買い物を存分に楽しむのだといいます。
 旧正マッコ市の中心スタッフとして尽力する工藤勤さんは、「もともとは中心地の商店街で行なっていた催しですが、今では郊外の大手スーパーなども同日に独自のイベントを実施しています」と教えてくれました。黒石市の冬の風物詩として、県内外から多くの人が訪れ、同エリアのにぎわいを創出する一大イベントになっています。

過去の福まきの様子
写真提供/黒石観光協会
過去の福まきの様子
写真提供/黒石市役所
過去の福まきの様子。同日5:00と10:00の2回、今年は景品と引き換えられる福として6,000個ものキャンディがまかれる。
黒石市役所 わのまちセンター
今年の会場となる「黒石市役所 わのまちセンター」。

「旧正マッコ市」は、福まきが開始の合図。早朝の5時スタートから、多くの人が会場に押し寄せ、寒空の下でその時を待ち受けます。開始が近づくと、同市の観光大使がマッコ市のテーマソングを歌い、カウントダウンと共に会場の熱気が高まります。
例年マッコ市参加店のサービス券や現金などをまいていますが、「オリジナルキャンディを作成中で、それが景品と引き換えになります」と今年は新たな試みも。また、例年は横町の広場にステージを組んで福まきをしていましたが、今年は会場を変更し、新たに地域の交流拠点として誕生した「黒石市役所わのまちセンター」の2階バルコニーから、市長や関係者が福まきを行う予定です。

生マグロの解体ショー
写真提供/黒石市役所
生マグロの解体ショーと即売会の様子
写真提供/黒石観光協会
生マグロの解体ショーと即売会の様子。毎年、大きなマグロが手際良く解体される様子に歓声が上がる。

会場周辺ではおしるこやホットアップルジュース、黒石つゆやきそばなどの無料振る舞いもあり(数量限定)、冷えた身体をホッと温めてくれます。恒例イベントとして定着した生マグロの解体ショーも行われ、捌きたての新鮮なマグロを味わうことができます。「せっかく足を運んだからには、買い物を楽しんで、地の物を味わってほしい」。そんな地元民の気持ちが、この日のにぎわいを創出しているのでしょう。

マッコ市に参加する店舗いろいろ

呉服店に雑貨店、メガネ屋、電気屋、酒屋など、暮らしに欠かせない商品を扱うお店がずらり。地元民に親しまれてきた各店から、店主たちのこだわりを感じます。

靴やカバンの販売店と言えばココ
昔ながらの「ボッコ靴」を製造

外観
工藤さんは同店の3代目。
靴売り場の一角
靴売り場の一角。この時期は、雪道で活躍するブーツや長靴が多く並んでいる。
ボッコ靴
生産が盛んだった頃は、雪山を歩く猟師に愛用されていた履き物だった。復刻後に某セレクトショップとのコラボが話題を呼び、全国に知られるきっかけになったのだそう。
ボッコ靴
一つひとつ手仕事で製造するため、手間暇がかかるボッコ靴。ストーブの熱を利用しながら、板状にした生ゴムを丁寧に重ねて成形していく。
工藤さん
「店頭で履き心地を確かめてからオーダーできます。気軽にご来店ください」と工藤さん。

「Kボッコ」は、マッコ市を取りまとめている工藤さんが代表を務める販売店。広々とした売り場は主力である靴、カバンと玩具のフロアに分かれています。看板商品は受注生産の「ボッコ靴」。ボッコ靴とは同店が創業した1950年頃、このあたりでは冬の定番だったというゴム製の履き物です。「父が店を切り盛りしていた1970年代には当店でまだ製造していたのですが、現在の長靴やブーツの普及で徐々に需要がなくなり見ることがなくなりました。しかし、時を経て『売っていないか』『作ってほしい』という声を受けるようになったんです」。原料探しからはじめ、当時の靴職人に協力を要請。10年ほどかけて復刻し、現代人の足にフィットする仕様へ改良・復刻しました。現在は工藤さん一人で製造を担っているため、完成は数年先という受注生産のみながら、生ゴム100%でつくられたボッコ靴は足を包むようなフィット感があり温かく、オーダーが絶えません。

データ

  • Kボッコ
  • 住所:青森県黒石市大字横町1-2
  • TEL:0172-52-2181
  • 営業時間:9:00〜18:00 ※「旧正マッコ市」は5:00〜営業
  • 定休日:不定休

店主はバンドマンの観光大使
個性豊かな味噌ラーメンの店

外観
店主自身が一番好きな味という「味噌ラーメン」にこだわり、専門店として店を構えている。
カウンター席側に置かれたギター
目を引くのはカウンター席側に置かれたギター。手書きのメニュー表やライブの告知などが壁面をにぎやかに彩っている。
メニュー表
「音楽もラーメンも含め、とにかく“つくること”が好き」と話す相馬さん。こだわりを伝える自作のメニュー表を眺めるのも楽しい。
黒千石のもやし好きラーメン
炒めた玉ネギの香油が食欲をそそる、「黒千石のもやし好きラーメン」850円。味わいに惚れたというモヤシとの出会いは、生産者の持ち込みから。一期一会を大切にしている。
相馬大輔さん
ラーメン店主、観光大使、バンドマンなど、さまざまな顔を持つ店主。カウントダウンのステージに加え、自店も早朝からオープンしてマッコ市を盛り上げる。

マッコ市で開始のカウントダウンを盛り上げているのが、黒石市の観光大使を担い、「鉄マン」の愛称で活躍している相馬大輔さん。東京でロックバンド「ホイドーズ」として活動しながら、ラーメン店でアルバイトに励んでいた経験を生かし、帰郷後にラーメン店を構えました。提供するのは、鶏ガラ100%の鶏白湯と津軽味噌でまろやかな旨みを醸す味噌ラーメン。なるべく地元の食材を取り入れたいとの想いで、自ら栽培を手掛けたゴボウをトッピングに取り入れるなど、随所にこだわりが感じられます。その月ごとに入れ替わる季節メニューも含めてラインアップは常時15種ほどあり、この時期のオススメは温泉熱で作ったモヤシの「黒千石のもやし好きラーメン」850円です。ザクザクとした独特の歯応えのモヤシを主役にした一杯は、玉ネギの甘さやゴボウの香ばしさがアクセント。プリッと食感の良い縮れ麺がコク深いスープによく絡み、箸が止まらぬ味わいです。

データ

  • みそラーメン 鉄満堂
  • 住所:青森県黒石市上町61-5
  • TEL:0172-53-6225
  • 営業時間:11:00〜17:00 ※「旧正マッコ市」は6:00頃〜営業。スープがなくなり次第終了
  • 定休日:月曜

眠りに関するスペシャリスト
西川チェーンの老舗寝具店

外観
店舗の外観。敷地内には、布団の打ち直しなどを行うレンガ造りの倉庫もある。
羽毛布団
例えば、羽毛布団と一口に言ってもそのグレードはさまざま。悩みや要望に寄り添い、最適な寝具を提案してくれる。
首や頭の高さを測定
睡眠環境や悩みをヒアリングし、首や頭の高さを測定。好みに合った素材を選べるオーダー枕を丁寧に仕立てている。
布団カバーや毛布
マッコ市では布団カバーや毛布など、寝具店ならではの気遣いが感じられるおまけが好評。購入金額に応じて内容は異なる。
工藤さん
「気軽に相談しに来てください」と工藤さん。布団に使われている羽毛やマットレスの素材に触れながら、その特性を丁寧に説明してくれた。

創業時から布団の打ち直しを行い、祖父の代から100年を超えるという老舗「工藤寝具店」。数々のトップアスリートが愛用していることで知られる、寝具メーカー・西川の商品を主に扱い、オーダー枕や布団、マットレスなどを販売しています。「羽毛ふとん優良診断士」や「ピローアドバイザー」の肩書きを持つのは、店主の工藤豊秀さん。「人生の3分の1は寝ている時間。寝具にこだわることが良い睡眠につながります」と話し、眠りを支えるプロとして親身にアドバイスをくれます。購入時の相談はもちろんのこと、購入者には長く心地良く愛用してもらいたいとメンテナンスにも熱心。除菌・消臭のほか、市の景観遺産にもなっているレンガ造りの倉庫で、現在も布団打ち直しを行なっています。近年はインバウンド観光客が増えている影響から温泉宿からの要望もあり、「昔ながらの日本らしい意匠や質の高い寝具を求められている」と教えてくれました。

データ

  • 工藤寝具店
  • 住所:青森県黒石市浦町1-1
  • TEL:0172-52-3059
  • 営業時間:9:00〜18:00 
  • 定休日:第1・第3日曜

せっかくならご当地グルメに舌鼓

街のあちらこちらで見かける地元馴染みのローカルフード。足を延ばしたならぜひ味わいたい、「黒石つゆやきそば」が食べられる店舗をピックアップしてご紹介。

地元民から観光客まで人気
創意工夫に富んだ和食処

外観
老若男女を問わず、親しみやすい和食をラインアップしている。
店内
落ち着いたムードの中で食事が楽しめる。小上がりのほか、テーブル席もあり。
スタッフ
黒石市への愛が強い、地元出身のスタッフが多いそう。皆笑顔で迎えてくれる。
黒い石つゆ焼きそば
1日10食限定の「黒い石つゆ焼きそば」1,200円。半ライスまで付いた、食べ応え抜群の名物メニュー。
黒い石つゆ焼きそば
別添えのトッピングに加え、昆布からとった和風スープにも玉ネギやキャベツ、ネギ、豚肉などの具材がたっぷり。

和の趣が漂う落ち着いた空間で、寿司や天ぷらといった和食が味わえる「レストラン御幸」。今もなお昔ながらの小見世(こみせ)の雰囲気が息づく、中町こみせ通りの一角に店を構えています。「花かご御膳」や「御幸御膳」といった、色とりどりの献立で目も舌も楽しませてくれるメニューが好評。50人ほど収容できる客席があり、郷土料理を求めて訪れる観光客に加えて、地元の常連客も多く訪れるランチタイムはにぎわいを見せます。
オーダーに迷ったら、15年ぶりに復刻した「黒い石つゆ焼きそば」をぜひ。トッピングを自身で乗せて完成するスタイルは珍しく、大きなエビの天ぷらと温泉卵がインパクト大! 石鍋からグツグツと湯気が上がる様子とあたり一帯に漂うスープの香りに、食欲がそそられる逸品です。半ライスがついているので、締めはぜひおじやで。店舗2Fにも客席があるので、大人数での利用も対応してくれます。気軽に問い合わせを。

データ

  • レストラン御幸
  • 住所:青森県黒石市中町36
  • TEL:0172-52-2558
  • 営業時間:11:00〜14:30 17:00〜19:30(金・土曜、祝前日は〜20:00)
  • 定休日:不定休

シンプルな旨さを追求した
専門店ならではの味わい

外観
角地にある「すずのや」。観光客を中心ににぎわいを見せる。
店内
テーブル席4卓を配した、こぢんまりとした店内。テイクアウトも可能。
店内
店内には、文化庁 令和5年度食文化機運醸成事業の100年フードとして「黒石つゆやきそば」が認定された際の証しも掲示されている。
鈴木さん
厨房に立つ店主の鈴木さん。シンプルながら、こだわりを込めた一杯を提供している。
黒石つゆやきそば
香りはスパイシーながら、スープをすすればどこか懐かしくホッとするような味わい。天かすでマイルドな風味に。

黒石やきそば専門店である「すずのや」の前身は居酒屋。メニューの1つとして、「黒石やきそば」や「黒石つゆやきそば」を提供していたものの、15年ほど前に現在の場所に店舗を移して専門店の看板を掲げるようになりました。現在、厨房で腕を振るうのは、店を継いだ2代目の鈴木正人さん。創業時から親しまれてきた変わらぬ味わいを提供したいと、「黒石つゆやきそば伝紹会」の一員として知名度拡大に貢献した父の意志を貫きます。同店の「黒石つゆやきそば」は、まさに王道と言えるシンプルさが魅力。やや酸味のあるつゆは、ウスターソースをベースにしたオリジナルブレンドのソースが味の決め手。太めでもっちりとした食感の麺は、スープとの相性にこだわった県産小麦使用の特注です。具材はキャベツ、玉ネギ、豚肉とシンプルながら、シャキシャキとした食感の良さでテンポよく食べ進められます。

データ

  • 黒石やきそば専門店 すずのや
  • 住所:青森県黒石市前町1-3
  • TEL:0172-53-6784
  • 営業時間:11:00〜15:00
  • 定休日:火曜

昔ながらの風景と風情が漂う、黒石市街地の商店街。街中を白く染める雪景色の中、おもてなしの気持ちとソウルフードがあたたかく迎えてくれます。年に一度のにぎやかなムードに包まれる「マッコ市」を体感しに、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

データ

  • 「旧正マッコ市」
  • 開催:令和7年2月2日 (毎年2月第1日曜 福まき1回目5:00〜・2回目10:00〜)
  • 場所:黒石市の中心商店街(横町、中町こみせ通りなど)、黒石市役所わのまちセンター
  • ※随時振る舞い等のイベントあり。当日の開店時間は店舗により異なる

※営業時間や定休日などは、2025年1月末時点の情報です。紹介施設の都合により、変更になる場合があります。

記事作成:あきたタウン情報

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