樺細工とは、山桜樹皮を使った細工物のこと。仙北市角館町にある「冨岡商店」は、1970年創業の樺細工の製造元。業界での歴史は浅いものの、伝統工芸品である樺細工を時代の流れに合わせてモダンに進化させ、バラエティ豊かに展開している革新的企業です。
豊かな自然の恵みを享受し、大切につくり継いできた暮らしに根付いた道具が秋田にはたくさんあります。時代の変化とともに、伝統技術と柔軟な発想をもって進化し続ける国指定伝統的工芸品の「樺細工」も、その一つです。
樺細工とは、山桜樹皮を使った細工物のこと。仙北市角館町にある「冨岡商店」は、1970年創業の樺細工の製造元。業界での歴史は浅いものの、伝統工芸品である樺細工を時代の流れに合わせてモダンに進化させ、バラエティ豊かに展開している革新的企業です。
「冨岡商店」代表取締役の冨岡浩樹さん。先代の父が始めた樺細工問屋を引き継ぎ、世界に類を見ない樺細工の価値を広く世界に発信しています。20軒ほどの職人に外注し、コラボレーションした商品を生産。筒を作る技術には絶対の自信を持っているそう。
Q.伝統工芸品「樺細工」が生まれた背景は?
〈マタギの手仕事〉や、〈武士が殿様のために作った〉など諸説あり、はっきりとした起源はわかっていないです。県南部の大曲・仙北地区で盛んに作られていたようで、1976年に伝統的工芸品として仙北市が産地指定を受けました。福井県鳥浜貝塚から出土した縄文時代のかご編物の取っ手に桜の樹皮が使われていたことからも、古くから補強材として利用され、人々の生活の必然性になっていたのではないでしょうか。
Q.山桜の樹皮に機能性があるということですか?
山桜の樹皮は強靭なので、補強材として力を発揮します。また、色艶が良く、ものの良さを引き出してくれますね。形あるものに、いかに樺細工を取り入れていくか。樺細工単体ではなり得ないものを、ほかの素材とどう組み合わせられるか。デザインだけでなく、機能美という付加価値を加えられるのが、樺細工の良いところです。
Q.モダンなデザインが印象的ですが、日常使いを意識していますか?
テーブルウェア、ステーショナリー、アクセサリーなど、暮らしに寄り添う商品づくりを意識しています。筒ものは海外にも通用すると思っていて、パスタケースやコーヒー豆入れなど、素材は日本ながら、デザインは海外風にした商品も展開。北欧に売り込みたいと、今はランプシェードを試作しています。
2018年に登場した最新シリーズ「KAVERS」は、日本の伝統文様をアレンジして施した、ブローチやピアスなどの樺細工アクセサリー。文様を彫ったところに色を流して研ぎ出すことで、唯一無二のデザインに。
Q.なぜこのシリーズを作ろうと思ったんですか?
商品をつくる過程で発生する端材や未利用材を廃棄してしまってはもったいないと思い、作りました。樹皮は、水分を含んで浮いてきたところを毎年伐採計画のある場所で採取しています。樺細工は自然と共生、山と密着した伝統工芸品なんですよね。そんなサステナブルなものづくりをしています。
冨岡商店が手掛ける樺細工商品は、みちのくの小京都・仙北市角館にある直営店「アート&クラフト 香月」などで販売されています。丁寧な仕事から生まれる県内のさまざまな手工芸品、ぜひ手に取ってみてください。
新しいことに目を向けるだけでなく、サスティナブルな社会に貢献している冨岡商店。手に取ると自然に笑みがこぼれる、そんな魅力を持つ樺細工の数々がここにありました。日々の暮らしに根付いた道具を見つめ直してみませんか。
記事作成:あきたタウン情報