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SLのお仕事

SLの元機関士が語るSLのひみつ

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SLの機関士になるためには

火室

――どうして蒸気機関車(SL)の機関士になったのですか。

小学生のとき、新前橋駅で蒸気機関車を見た思い出があります。1987年にD51が復活し、先輩が運転している姿を見て、かっこいいなあと思いました。「SL復活」と「小さいころの思い出」が重なって、自分も運転してみたいと思うようになった…ということかな。それで蒸気機関車の機関士を目指しました。

――どうすればSLの機関士になれますか。

JR東日本の場合、まずは電車の運転士になる必要があります。また合わせてボイラー技士の資格も取らなくてはいけません。電車の運転士としての経験を積みながら、厳しい社内試験を受けてSL機関士の候補生になります。

――SLの機関士になるために大切なことは何ですか。

希望すれば誰でもなれるチャンスがあるわけではありません。いつ来るかわからない限られたチャンスをつかむことができるよう、常に自分の力を高めるよう努力し続けることが必要です。

また、SLの運転は「SLの運転方法とコツ」でも説明するように、チームで力を合わせて行うこと。自分の力を高めるだけではなくて、チームとして最大限の力を高められるよう、人との和を大切にすることが必要だと思います。

――機関士にとってSLとはどんな存在ですか。

蒸気機関車は、整備などにも手がかかります。愛情をもって、いたわりながら、見守り、運転をする。手をかければかけた分だけ、こたえてくれる。そこが、いとおしい。蒸気機関車の魅力でもあります。

蒸気機関車は、鉄道の原点です。D51やC61などの貴重な機関車だけでなく、それを動かす技術も、次の時代へ伝えていってほしいですね。

SLの運転方法とコツ

――SLの運転方法を教えてください。

SLと電車の一番の大きな違いは、電車は運転士が1人で運転するのに対して、SLは機関士と機関助士の2人が協力して動かすことです。

――機関士と機関助士の役割の違いについて教えてください。

SLの運転のために、石炭を釜にくべるシーンを見たことがある人も多いかもしれませんが、この「投炭(とうたん)」をするのが機関助士です。石炭の熱からつくりだした蒸気の力を利用して、機関車を操縦するのが機関士の仕事です。機関士は運転台の進行方向の左側にいるので、右カーブの時に前方を確認することができません。この時、機関助士が機関士の目となり前方の確認をする場合もあり、まさに助士として働きます。

このほか機関車や線路などのメンテナンスをする人たちもいます。SLを動かすためには多くの人が力を合わせなければなりません。

――電車とSLの運転の違いについて教えてください。

電車もSLも運転するための基本的な決まり事はあります。また、天候(雨や雪、風等)や列車の長さや乗車するお客さまの人数によって、運転の仕方を微妙に変えるところは共通しています。

しかしながら、電気と違ってSLを動かすための水蒸気の力は、スイッチを入れただけでいつも同じパワーを得られるわけではありません。例えば、同じ量の水を同じやかんで沸かそうとしても、夏と冬では沸騰する時間が違うのと同じです。釜(火室)や石炭の状態等、多くの条件を頭に入れながら、運転の仕方を工夫する必要があります。

SL機関士

――もう少し詳しくSLの運転で大切なことを教えてください。

もちろんSLにも基本的な操作方法はありますが、蒸気機関車は基本的な操作方法を守りつつも「機関士によって動かし方が微妙に違う」ということです。

特にSLを運転するうえで大切なのは釜(火室)です。「自分の釜をつくる」といって、釜の状態を自分たちが運転しやすいように(必要なパワーをつくり出しやすいように)整えます。主にこれは機関助士の仕事です。

――出発する前にはどんな準備が必要ですか。

機関車が車両基地を出ることを出区(しゅっく)と言いますが、この前に機関車の機器等の点検(出区点検)をします。この時に「釜替え」といって、機関助士は、釜(火室)の中を整理して、投炭をしやすくしておきます。

――いよいよSLの出発ですね。

ボイラーに水を送り、投炭をして火力を強めて、ボイラーの圧力を高め、SLは動き出します。

出発したあとも、ボイラーの圧力を保つために投炭をつづけます。投炭は、蒸気機関車を走らせるための要の仕事で、色々なワザがあります。

――投炭のワザ、おしえてください。

釜のフタを開けると、外からの冷たい空気が入り釜の温度が下がってしまいます。だから、フタを開けた瞬間、釜の中のどこへ投炭すればよいかとっさに判断して、シャベルで石炭を投げいれます。「(釜の中の)白く輝くまぶしいところに入れよ」という格言があります。そこが最も温度が高くなっているからです。シャベルをあやつって、そこをめがけて投炭します。

――機関助士は「シャベルの魔術師」?

同じところにばかり投炭すると、石炭がたまって不完全燃焼をおこし「クリンカー」と呼ばれるかたまりができてしまい、こうなると、釜の中の空気の流れが悪くなってしまいます。この状態を、人間と同じように「消化不良」と呼びます。

それから、釜全体が同じように温まらないと、ボイラーのねじれや、ひび割れの原因になり、貴重なSLを傷めてしまいます。

――投炭って難しいんですね。

均等に投炭しているつもりでも、右ききの人はどうしても左側に投炭してしまいます。慣れるまでは、左2回・右3回…と右側に注意して入れます。それからなるべく奥に。見習いの時は「(釜の奥にある)のど板に向かって投炭せよ」と教えられます。そうしないと釜全体、ボイラー全体があたたまりません。

火室を覗く機関士

――やっぱり上り坂の方が多くの石炭を使うんですか。

上り坂の方がたくさんのエネルギーが必要になるので、投炭も忙しくなります。上越線の場合、高崎から水上に向かう時と、水上から高崎に向かう時では、上り坂になる高崎から水上に向かう時の方が約3倍の石炭を使います。

私たちの間では「水をとる」とか「水に追われる」という言い方をしますが、投炭だけでなく、蒸気が足りなくならないように、ボイラーにも水を送り続けます。

――機関士も難しい仕事ですか。

蒸気機関車の機関士の仕事でむずかしいのは、時刻どおりに運行することです。スピードを調整するためにハンドルを操作して、蒸気を送る量を加減します。

駅に着くときは、どれくらい手前でハンドルやブレーキを操作して、どのようにして正しい位置・正しい時間に止めるかを判断します。その日によって気候や列車の重さなど条件が変わるので、とても熟練のいる作業です。

止まるとき、動輪のロッド(棒)の位置の止め方というのもあります。次に出発するときに、出だしのいいロッドの角度というのがあるのです。停まっている時のSLの必見ポイントですので、ぜひ注目してください。

機関士直伝!SLの楽しみ方

SL D51498

――機関士だけが知っているSLの楽しみ方ってありますか。

「SLの運転方法とコツ」でもお話しましたが、駅に停車している時の動輪のロッドの位置には注目してほしいですね。その他、上り坂と下り坂で使う石炭の使用量が違うことを話しましたが、これは煙の量で比較することができます。ぜひ上越線のSLに乗ったときは水上行きと高崎行きの両方に乗って比べてほしいです。ただ、危ないので絶対に窓から手や顔を出さないでください。

――その他にはありますか。

「蛇動」とか「蛇行動」と私たちは呼んでいますが、SLの走行中、蛇が体をくねらせるような動きをします。SLに乗っていると、この動きはまるで「生きもの」のように感じられると思います。

「生きもの」といえば、冷えた状態で釜に火を入れると、ボイラーが伸びて「パキッパキッ」って音がするのです。残念ながらこれは皆さんは聞くことができませんけどね。

――D51とC61の違いは感じられますか。

D51はもともと貨物列車を引くため、C61は客車を引くための機関車としてつくられました。だから、動輪の大きさと数がちがうことは皆さんも知っているかもしれませんね。D51は小さい動輪が4軸、C61は大きい動輪が3軸。動輪が小さいと、走りに「ねばり」が出て坂道に強い。動輪が大きいと、振動が少なく乗り心地がよくなる。SLに乗ると、このちがいがわかると思うので、ぜひ乗り比べてみてください。

答えてくれた人

SL元機関士 後閑治人

後閑治人
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