
整備士の1日は点検に始まり点検に終わる。点検は人間で言えば健康診断のようなもの。トラブルを未然に防ぐもっとも大切な作業になる。ハンマーで駆動部各所を軽く叩き、その音で車両の健康状態を判断する。高い音なら良好、鈍い音なら異常のサイン。SLを待つ全てのお客さまに最良のひとときをお届けできるよう、様々な安全確認は出発の直前まで続く。
SLが走り出すと、走行チェックを行う。機関の異音やにおいから異常を感じ取るため、精神を研ぎ澄ませる。
1日の運転が終了すると、目視による機関チェックと給油を行い、各パーツの損耗を徹底的に点検し、次の出番に備える。

高校生の頃から鉄道が好きで、よく写真を撮っていたのを鮮明に覚えている。入社のきっかけには十分すぎる理由だったと思う。SLとの付き合いもC58の整備担当の頃から換算すれば、早23年になる。これまで本当にたくさんの人たちに支えられてきた。整備士の諸先輩方や同僚たち、運転士や車掌たち。SLを取り巻く全ての環境が今の自分を支えている。SLの色あせない魅力に間近で触れることのできる歓びは、何物にも代えられないやりがいとなり、自分を動かす原動力となっている。
SLは生き物である、と思っている。同じものは2つと無い。損耗した部品を交換するとしても、量産パーツなんてものも無い。すべてワンメイク品であり、そのどれもが手作業となる。大規模修繕ともなれば、その作業量は尋常ではない。しかしその「唯一無二」がたまらない。時間をかけ自分が整備したSLが走り出した時、この上ないやりがいと達成感を感じる。整備士としてSLをメンテナンスさせてもらっていること自体が、それだけで私には誇りに思えてくる。
SLはJR東日本で3台所有しており、「D51 498」「C61 20」2台のSLを高崎車両センター高崎支所で現在管理・整備を行っている。SLでの運転が主であった時代を知る者も少なくなってきている。
SLは普通の電車とは根本的に異なり、その整備性は必ずしも良いとは言えない。手間がかかるがそのやりがいは大きい。既成のルールに則っての整備というものはほとんどなく、ほぼすべてが手作業となるSLにおいては、やはり経験に裏付けられた技術と感覚が物を言う。電子部品よりも機械的な要素が多いので、部品製作の腕も必要になる。摩耗した部品の癖を見極め、その癖に合った部品を作らなければならないこともある。しかしもっとも大切なのは「事」が起こる前に察知し、適宜対応できるようなることだ。
そんな技術の継承も、SL整備士の大きな課題となる。
実はこの車庫の近所に自宅があり、毎日のように整備士を見て育った。そのうち憧れるようになり「いつかは自分も整備士に」と思ううちに、本当に整備士になっていた。まだまだ勉強中の身でありながら、仕業検査と保守管理は全て任せてもらっている。完璧にこなしているつもり、と言うより完璧でなくてはならない。マニュアルはあるものの、経験に裏付けされた技術を必要とするところが多いため、全て先輩に教わりながらの作業になり、その度に技術の高さに圧倒される。今自分にできないことを全てできる先輩を尊敬しているし、自分も頼られるような存在になることが目標。自分も部品製作にはこだわりを持っているし、パッキン1つにも妥協はしない。一歩一歩先輩に近づいて、早く頼られるような人材となってSLと向き合いたい。
※このホームページの掲載情報は、平成23年7月現在の情報です。
列車時刻等は駅係員にご確認いただくか、最新の時刻表にてご確認ください。

