スペシャルコンテンツ 03

新幹線の直上に新たな線路を建設し鉄道ネットワークを強化する


最悪の結果を予測し、事前に対処する

それだけ入念な配慮をしても夜中に作業を行っている途中には、やはりその場で判断しなければいけない問題も生じる。計画していた方法で作業ができず、急遽手順を変更せざるを得ないなど、作業時間が限られているなか、即座に判断することが求められることもある。「事前に何が問題になりそうか、何が起こると最悪の結果に繋がるのかに気付ける力が、この仕事ではもっとも必要な資質」と山田は言う。また、リスクに気付くには毎日現場を見て、今回の橋は、勾配・角度や重量が違う、架設機の重心や柱の形状が異なるといったことを図面だけでなく実際に確かめることが大切で、それを計算に入れてあらゆる事態に迅速に対処していく。作業が始まってから迷うようなことは許されない。作業が終わるのは早朝4時過ぎ、現場で始発電車の通過を確認するまで、一瞬たりとも気を抜くことは許されない。つねに最悪の結果を予測し、事前に対処することが求められる。


土木技術が実現する鉄道ネットワーク

山田はこれまでも湘南新宿ラインの大増発を目的とした池袋駅構内の埼京線・山手貨物線立体交差化や汐留地区のレンガアーチ部の橋りょう新設、辻堂駅のホーム拡幅工事など、困難な建設プロジェクトに挑戦し続けてきた。いずれも一晩で橋や駅の切換工事を完了し、無事に朝の始発電車を見送ると涙が溢れたという。東北縦貫線のすべての橋桁を架け終えて、「また一つ陣地を拡げたぞ」と思いながら完成した高架橋を渡るとき、山田はまた男泣きするのかもしれない。「私はこうした建設プロジェクトを通じて鉄道ネットワークを変えていくことに大きなやりがいを感じます」と山田は言う。湘南新宿ラインがそうだったように、東北縦貫線の実現で首都圏の輸送事情は大きく変わるだろう。そしてこれはJR東日本の高い土木技術がなければ成し得なかった仕事である。山田はプロジェクト完遂後も都心の輸送改善プロジェクトにかかわり、「一層便利になったJR東日本を利用してもらいたい」と抱負を語った。


JR東日本の大動脈が一つにつながる

東北縦貫線完成後のダイヤ編成はまだ検討段階だが、新聞や雑誌などに何度も取り上げられ、各支社の列車ダイヤを作成する担当者も周りからの期待やプレッシャーを実感している。東海道、宇都宮、高崎、常磐線といったJR東日本の大動脈が一つにつながるという類を見ないプロジェクトだけに、失敗は許されない。直通列車の混雑解消をいかに実現するかは列車ダイヤを作成する担当者の腕の見せどころだ。各支社ではそれぞれの線区を良くしたいと願うが、すべてに100点満点という解はない。「何とか良い編成にしようとみんなで今必死に取り組んでいます」と古高は言う。各線の沿線住民を合計すれば、何十万人にもおよぶであろう多くの人々の通勤、通学、レジャーなど生活を変える可能性を秘めたプロジェクト。「そうした人々の反応、声がダイレクトに私たちに伝わってくるのが、やりがいのあるところ」と古高。2014年度、人々の期待を乗せ、東北縦貫線は開通する。