スペシャルコンテンツ 02

東京駅丸の内駅舎保存・復原が完成グローバルに魅力ある世界の東京へ、進化は続く


3.11を乗り越えて

屋根部分の多くは天然スレートという粘板岩の石を薄く割った材料からできている。今回の工事では約45万枚必要なため、新規の国産材以外に、もともとあったものを再利用したり外国から輸入したりした。国内では石巻市の雄勝町のみ生産されており、再利用する材料も石巻市で加工していた。ところが屋根の工事が行われていたさなかに東日本大震災が発生、雄勝町も被災し、材料の一部も流されるというアクシデントに見舞われた。やむなく輸入材の比率を少し増やし、緊急の対応を図った。震災では建物自体の損傷は一切なかったが、物流全体が麻痺したことから排水管などさまざまな資材が不足し、施工手順や代替材料への変更を図ることで、どうにか工期を遵守した。


ドームに浮かびあがった苦労の結晶

10月1日に予定していた開業式典の前の晩、土肥はプロジェクトの関係者らと丸の内駅舎のドームの1階から天井を見上げていた。実は開業当日までドームのレリーフを一般には公開せずテントで覆っていたのだが、いよいよ前日となり、除幕のための夜間作業が行われていた。そこで土肥らも一つのけじめとしてみんなでテントが取り払われるのを見届けることにしたのだった。それまでもお客さまをご案内するために上からは何度もレリーフを見ていたが、下から見上げるのはこのときが初めてだった。テントの重みで周りを傷つけないようゆっくり、少しずつテントが引かれていった。そして、その全貌を目にしたとき土肥は「ああ、ようやくこのプロジェクトが完成したんだな」と全身が震えた。開業後も東京駅の駅前広場やドームのなかは、駅舎を眺めたり記念写真を撮る人でごった返している。人々が楽しげに昔話に花を咲かせているのを見ながら土肥は「このプロジェクト携われて誇りに思います」と語った。


日本の東京からグローバルな視点で魅力のある東京へ

新たな丸の内駅舎にはグレードアップした東京ステーションホテルや海外からのお客さま向けのサービスを提供するJR EAST Travel Service Centerも入り、国際都市東京の新しい顔としての機能も提供する。ニューヨークのグランドセントラルターミナルやロンドンのセント・パンクラス駅など、国際都市のセントラルステーションは、19世紀の駅舎を改修し、一足先に一大観光スポットとなっている。今回の保存・復原事業の完成で東京駅のポテンシャルはより一層高まることになった。大西はこう語る。「東京ステーションシティは今後、日本の東京からアジアの東京という存在に変わっていかないといけません。周辺には環境に配慮した高層ビルや国際会議が開催できるホテルがあり、多彩な生活文化の香りもする。より一層都市空間としての価値を高め、国際的な都市間競争のなかで選ばれる存在になっていく必要があります」。世界が憧れる魅力的なまちづくりの推進に向けて、東京ステーションシティの進化は続いている。