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「グループ経営構想Ⅴ 〜限りなき前進〜」では、「変わらぬ使命」と「無限の可能性の追求」を2つの重要な柱としている。まず、「変わらぬ使命」について聞かせていただきたい。

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「『究極の安全』に向けて」、「サービス品質の改革」、「地域との連携強化」の3つの方向性で、当社グループに対する社会的な要請にしっかりと応えていくために不断の努力を続けます。
「変わらぬ使命」を一言で言えば、「安全で品質の高い輸送サービスの提供を通じて、地域の発展に貢献すること」です。この使命は、時代を超えて果たさなければなりません。これは、今までの経営構想でも取り組んできた課題ではありますが、あらためて経営の重要な柱として位置づけ、さらなる強化・深度化を図っていきます。
「安全」に完璧はありません。鉄道140年の歴史の中で、私たちは、日々の一つひとつの仕事を積み重ね、「鉄道の安全」を築き上げてきています。その取組みは永遠に続くでしょう。地道な努力を続けることで安全性を維持・向上させていく、これが「究極の安全」を目指す取組みなのです。特に1995年の阪神・淡路大震災以降、4万本を超える高架橋柱の補強を行うなど、計画的かつ着実に大規模地震対策を進めました。こうした取組みが奏功し、東日本大震災でも営業運転中の新幹線の脱線や高架橋の倒壊は発生しませんでした。現在は、震災の経験を踏まえた対策に加え、首都直下地震にも備えた対策など、2012〜2016年度の5年間を重点的な整備期間とした、総額約3,000億円の耐震補強対策等を推進しています。高架橋柱に加え、盛土や切取、電化柱、駅・ホームの天井などに対策の範囲を拡大するとともに、地震計の増設など地震観測体制の強化を図ります。多額の投資になりますが、予見しうるリスクへの対策を着実に進め、安全性の高い鉄道、特に災害に強い鉄道をつくることが、中長期的には当社の収入を支える重要な要素になると考えています。
さらに、駅のホームの安全対策として、2015年度までに大規模改良工事予定駅を除く山手線23駅でホームドアの使用を開始する予定です。山手線のお客さまの数は当社の中でも特に大きなウエイトを占めており、また東京圏の鉄道ネットワークは他社も含め山手線を中心に広がっています。山手線に優先的に対策を施すことで、首都圏の鉄道輸送全体の安全性の向上につながると考えています。
鉄道事業において、安全の確保は最重要課題でありますが、それだけでは不十分だと考えています。安全を確保したうえで、安定的で快適な輸送サービスを目指さなければなりません。これが、私たちが進める「サービス品質改革」です。まず、輸送障害の発生防止に全力を尽くすとともに、事故等が発生した場合にも、迅速な折返し運転の実施など、影響の拡大防止、早期運転再開に取り組みます。部門や系統を越えたチームワークでサービス品質を改革し、目標である「顧客満足度 鉄道業界No.1」をぜひ実現したいと思います。また、「サービス品質改革」には、鉄道ネットワークの拡充も大きな要素です。2014年度に常磐線・宇都宮線・高崎線の東京駅・東海道線方面への乗入れを可能とする東北縦貫線が開業すれば、現在の上野駅での乗換えが解消され、約11分の時間短縮と通勤時間帯の混雑緩和の効果が見込まれます。このようなシームレスな直通サービスを整備することで輸送品質を向上させる計画です。都市間ネットワークでは、2014年度末の北陸新幹線金沢開業、2015年度末の北海道新幹線新函館(仮称)開業により、首都圏と北陸、あるいは首都圏と北海道、北東北と北海道における旅客流動が相互に活発になることが期待できます。このことは地域経済の発展にもつながりますし、同時に、「地域に生きる。」私たち鉄道事業の価値向上にもつながるでしょう。
「地域との連携強化」も重要な経営課題の一つです。特に、観光の力で被災地を、そして日本全体を元気にしたいと考えています。2013年度も「仙台・宮城」や「秋田」でデスティネーションキャンペーンを展開しますが、観光資源の掘り起こしや情報発信など、多くのお客さまに東北を訪れていただけるよう、地元と一体となって取り組んでいきます。そのほか、全席レストラン列車「Tohoku Emotion」、「SL銀河鉄道(仮称)」など、「乗る」こと自体が目的となる新コンセプト列車を順次導入し、鉄道の旅の幅を拡げ、観光流動の活性化を図りたいと思います。また、「駅を中心としたまちづくり」も地域連携の重要な柱です。首都圏の大規模ターミナル駅を、単なる乗降や乗換えの場所ではなく、人が集まる魅力ある場所に変えたいと考えています。2012年10月に丸の内駅舎の保存・復原が完成した東京駅が好事例ですが、同様に品川、渋谷、新宿、横浜、千葉、仙台など、「駅が変わる」ことの波及効果により、周辺の街が賑わい、地域の発展につながる「まちづくり」を推進します。そのほか、地方中核都市では、住宅や介護、医療、子育てなどの様々な生活ニーズに応える施設を駅周辺や沿線に集約することで地域に貢献していく考えです。
そして、地域産業の活性化を支援することも私たちの大事な使命だと考えています。年間のべ2,000日以上首都圏の駅などで開催している「産直市」、上野駅の地産品ショップ「のもの」など、地方の名産品の首都圏での販売に力を入れています。「のもの」については、2013年度中に上野駅に続く2号店を開業する計画です。加えて、一次産業の六次化については、青森でシードル酒を製造する「A-FACTORY」を設立したほか、秋田の名産品を首都圏で販売する「あきた食彩プロデュース」の支援などを行っています。今後もこうした取組みを積極的に拡大し、地域経済の活性化、さらには地域の新たな雇用の創出に貢献していきたいと考えています。
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