1. JR東日本トップ
  2. 企業・IR・採用
  3. IR情報
  4. 社長インタビュー

社長インタビュー

Question 1

JR東日本が発足する契機となった国鉄改革を振り返るとともに、発足後30年間の成果と今後の課題を聞かせていただきたい。

Answer
  • JR東日本は、会社発足の原点である「自主自立」、「お客さま第一」及び「地域密着」の方針もと、「鉄道の再生・復権」に取り組んできた。
  • 今後も経営環境の変化に適切に対応していくため、「安全・安定輸送のレベルアップ」、「収益力向上への挑戦」及び「『TICKET TO TOMORROW』の推進」を「横断的な重点課題」に据え、具体的な施策を推進していく。

あっという間に30年が経ったという印象です。私も国鉄で仕事をしていたのでよく覚えていますが、国鉄の末期には、ストライキや運賃値上げが繰り返され、お客さまからの信頼は地に落ちていました。毎年のように大きな赤字を出し、財政的にも黒字化の展望が全く見えない状況で、働いている職員一人ひとりにとっても、どれだけ頑張ってもなかなか先が見えない苦しさがありました。展望が無ければ組織は活力を失います。能力を発揮できないもどかしさを感じながらも、自分たちはもっとやれるという気持ちも強かったと記憶しています。

私は1974年に国鉄に入社しましたが、当時、日本の交通市場は大きな転換期にありました。旅客輸送においては、モータリゼーションの進展や高速道路の整備により、マイカーを中心とする自動車のシェアが拡大しました。また、空港の整備も進められ、航空輸送が大衆化しつつありました。国鉄はこのような経営環境の変化に的確に対応することができず、1964年度に赤字に転落して以降、年々、経営が悪化しました。

代表取締役社長 冨田哲郎 画像

国鉄は、公社という公共企業体であり、鉄道という公共性の高い事業を、民間企業のように効率的に運営することを期待されていました。しかし、経営責任が不明確であり、経営の自主性も失われていたため、実態として、公共性と効率性のどちらの観点からも不十分な状況に陥っていました。また、地域の足を守るべく一生懸命頑張っている職員も少なくありませんでしたが、労使の不毛な対立を背景に、やがて職場規律は乱れ、職員の士気も低下していきました。

なぜ国鉄が破綻したかといえば、経営環境の変化に適応できなかったからです。全国一元的な組織だったために、各地域の特徴に即した経営や、お客さまのニーズへのきめ細かな対応ができませんでした。また、公社という企業形態の中で、経営の自主性が確保されない一方、経営責任も不明確でした。これらの問題点を解決し、「鉄道の再生・復権」を実現するためには、国鉄の分割・民営化というドラスティックな退路を断った改革が必要でした。これにより、職員の中に蓄積されていたエネルギーが、自らの責任で自らの未来を切り拓いていくという使命感や情熱として顕在化したのではないかと思います。

そして、国鉄改革後、当社が順調な成長を続けることができているのは、何よりも社員の意識が変わったことが一番大きな要因です。国鉄の分割・民営化という「仕組みの改革」は、社員の「意識改革」があったからこそ、初めて効果を発揮することができました。会社発足の原点である「自主自立」、「お客さま第一」及び「地域密着」の基本理念のもと、社員一人ひとりが国鉄時代の「乗せてやる鉄道」から「お乗りいただく鉄道」へと意識を改革し、輸送品質の向上などにつなげていきました。また、国鉄職員から民間会社の社員に立場が変わり、自らの賃金をお客さまからいただいているということを社員が意識して業務にあたるようになりました。さらに、会社の方向性や、それに向けた社員一人ひとりの努力を、お客さまや地域の皆さまが評価し、応援してくださったことも忘れてはなりません。

さらに、JR東日本が発足した1987年は経済が好調で、日本全体に活気が溢れており、その後の5年間で順調に収入を増やすことができました。これだけ短期間にお客さまに戻ってきていただくことができたのは大きな意味があったと思います。一方、1990年代に入ると、日本経済が低迷し、金利も低下しました。発足当初のJR東日本は、約1.5兆円の売上規模に対し、実質6兆円を超える債務を抱えていましたので、金利負担は年間で約4,000億円にも達し、かなり重たいものでした。これを低利率の資金に借り替え、金利負担を減らすとともに、設備投資を最小限に抑える努力もしました。現在も低い金利水準が続いていますが、JR東日本にとっては恵まれた経営環境であると考えています。

このような幸運をきちんと活かすことができたのは、社員一人ひとりの努力はもちろん、それを温かく見守っていただいたお客さまと、地域の皆さまのご支援があったからこそです。国鉄の長期債務処理や職員の再雇用問題でも、国や地方自治体、民間企業から大きな支援をいただいていますから、このことは決して忘れてはいけません。自分たちの力だけでここまで来たのだという驕りだけは持たないようにしたいと思います。

加えて、当社の経営体力が蓄積されるにつれて、安全性向上やサービス品質の改善などに向けて、キャッシュ・フローを投資に振り向けることができました。具体的には、鉄道事業では、新幹線ネットワークの拡大や高速化で交流人口の増加を図るとともに、首都圏の輸送力を増強し混雑緩和を進めるなど、サービス強化に力を注いできました。安全面でも、耐震補強対策を含めて30年間で3兆円を超える安全投資を行い、長い目で見れば事故が減り、安全度が高まっています。ただし、足元では重大インシデントや輸送障害が発生しており、気を引き締める必要があります。また、非運輸業のエキナカやショッピングセンター、オフィスなどの収益も着実に増加しています。3番目の柱と位置付けるIT・Suica事業についても、サービス向上のみならず、お客さまのライフスタイルに変化を促し、当社も機器メンテナンスコストの削減や駅スペースの効率化を同時に達成できました。中長期的には日本の人口は減少するため、鉄道以外の事業で着実に伸びていく基盤を作らなければなりません。

当社グループは今日、大きな変化点を迎えています。具体的には、より一層の人口減少や高齢化、東京圏への人口集中に加えて、技術革新や経済のグローバル化の進展が想定されるほか、鉄道のシステムチェンジや社員の世代交代など、社内外で大きな変化点に直面しています。これらの変化に適切に対応していくために、2016年10月に、「横断的な重点課題」として、「安全・安定輸送のレベルアップ」、「収益力向上への挑戦」及び東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を契機とした「『TICKET TO TOMORROW 〜未来のキップを、すべてのひとに。〜』の推進」の3つを設定しました。

安全・安定輸送のレベルアップを図り、お客さまや地域の皆さまからの信頼を確固たるものとするとともに、収益力向上への挑戦や「TICKET TO TOMORROW」の推進を通じて持続的な成長を実現し、将来にわたり自主自立の経営を貫いていく。この3つの「横断的な重点課題」は、国鉄改革の原点への回帰を意味しており、「自主自立」、「お客さま第一」及び「地域密着」を今の時代に合わせて表現しているものです。

 JR東日本グループ発足から30周年 画像

ページの先頭へ