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社長インタビュー

代表取締役社長 深澤祐二 画像

今こそ変革のとき

――JR東日本は2018年7月、グループ経営ビジョン「変革2027」を策定しました。新たなビジョンに込められたメッセージについて聞かせてください。

「変革2027」は、30年先を見据えて策定したビジョンです。これからの30年、日本全体がめまぐるしく変わっていく中で、当社グループが持続的な成長をしていくためには、どのような企業グループへと進化しなくてはならないのか。そのためには、この10年間で何をする必要があるのかを意識してつくりました。このビジョンで伝えたいのは、今こそが「変革」のときだということ。「変革」の主役はグループの社員一人ひとりだということ。そして、その「変革」の先に、すべての人の「心豊かな未来」を目指したいということです。

――なぜ、今、「変革」に取り組む必要があるのでしょうか。

これまでの30余年、当社グループは“鉄道オリエンテッド„のビジネスを推進してきました。鉄道のインフラや技術・知見を起点として、鉄道ネットワークや駅の利便性向上を図り、より多くのお客さまにご利用いただくことにより、成長を遂げてきたのです。

しかしながら、次の30年は、これまでとは比べものにならないほど厳しい現実が待ち受けています。本格的な人口減少社会の到来に加えて、在宅勤務やサテライトオフィスの浸透などによる働き方の変化、インターネット社会の進展、それから自動車業界における自動運転技術の実用化などにより、鉄道による移動ニーズそのものが縮小する可能性が非常に高まっています。これまでのビジネスモデルのまま、その延長線上で成長を続けることは困難です。

そうした環境において、今こそ「変革」に挑戦しなければいけない。求められるのは、強烈な危機意識をグループ全体で共有し、時代の変化を先取りして、価値創造ストーリーそのものを「変革」することです。これまでの鉄道のインフラ等を起点としたサービス提供から、ヒトの生活における「豊かさ」を起点とした、社会への新たな価値の提供へと転換していく。つまり、「鉄道」起点から「ヒト」起点への大転換です。

「鉄道のインフラ等を起点としたサービス提供」から「ヒト(すべての人)の生活における「豊かさ」を起点とした社会への新たな価値の提供」へと「価値創造ストーリー」を転換していく。 画像

――では、「ヒト」起点とは、どのようなことなのでしょう。

当社グループのあらゆるビジネスの基盤は、お客さまや地域の皆さまからの「信頼」です。その源がどこにあるかといえば、安全に他なりません。私たちは引き続き、安全を経営のトッププライオリティに据え、日々、愚直な努力を積み重ねることにより、「究極の安全」を追求し、「信頼」をより盤石なものにしていく。さらに、「ESG(環境・社会・ガバナンス)経営」を実践し、ビジネスを通じた社会的な課題の解決に取り組み、地域社会の持続的な発展に貢献していきます。まずは、この基本を押さえた上で、当社グループの強みを最大限に発揮することが重要です。

私たちの強みは、輸送サービスや生活サービス、IT・Suicaサービスなどの重層的で“リアル„なネットワーク、そして駅や駅ビルなど、ヒトが交流する拠点を多く保有している点にあります。これらを最大限に活かし、便利で安心して暮らせる日常生活や、ネットワークを通じた多様で活発な相互交流を創造していく。これらがすべての人の「心豊かな生活」の実現につながると考えています。

代表取締役社長 深澤祐二 画像

重要なのは“鉄道ありき„でものを考えるのではなく、お客さまや地域の皆さま、当社グループの社員やその家族を含めた、すべての人にとっての「豊かさ」とは何かを徹底的に考える。今なすべきことは何かを考え、「変革」に向けて行動を積み重ねていくことです。その際、自前主義にはこだわらず、大学などの研究機関や他企業の知見や技術、情報を積極的に取り込み、当社グループの強みと融合させていかなければなりません。

「ヒト(すべての人)」を起点に「安全」「生活」「社員・家族の幸福」にフォーカスし、都市と地方、そして世界を舞台に、”信頼”と”豊かさ”という価値を創造していく。 画像

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都市、地方そして世界へ

――「変革2027」では、「都市を快適に」「地方を豊かに」「世界を舞台に」の3つの視点が提示されています。まず「都市を快適に」の意味するところを聞かせてください。

首都圏の鉄道ネットワークや駅ビル、エキナカは、当社グループの屋台骨を支える非常に大きな収益源です。首都圏の人口は、今のところ微増傾向が続いていますが、いずれ減少局面に突入するのは避けられません。その中で持続的な成長を実現するためには、経営体力のある今のうちから、快適な都市空間をつくり上げるための施策を積み上げていく必要があります。

目指すべきは、移動のシームレス化と多様なサービスのワンストップ化です。お客さまが24時間、あらゆる生活シーンで、最適な手段を組み合わせて、移動や購入、決済などのサービスを利用できる環境を実現していきます。輸送サービスはもとより、「くらしづくり・まちづくり」など、あらゆる分野で新たなビジネスプラットフォームを築き上げていかなければなりません。

移動のシームレス化と多様なサービスのワンストップ化により、お客さまが24時間、あらゆる生活シーンで最適な手段を組み合わせて移動・購入・決済等のサービスを利用できる環境を実現する。 画像

――移動のシームレス化について、説明してください。

2つの意味があります。第1は、相鉄線との直通運転や羽田空港アクセス線構想の推進など、乗り換え解消や時間短縮を図ることです。第2は、「MaaS(マース*)」の観点から、鉄道のみならずバスやBRT(バス高速輸送システム)、タクシー、シェアリングカーやシェアサイクルを含めた二次交通、三次交通との一体化を図ることです。

具体的には、出発地から目的地までの移動に関する情報取得やチケットの購入、その決済等のサービスを一体的に提供する「モビリティ・リンケージ・プラットフォーム」を構築する。「シームレスな移動」を実現することにより、総移動時間の短縮や乗り継ぎに伴うストレスの低減を図っていく。これにより、人口減少の中でも、鉄道をご利用になるお客さまを増やしていくのはもちろん、お客さまや地域の皆さまの生活そのものを快適にしていきたいと思っています。

――「地方を豊かに」については、いかがでしょうか。

東北地方では2040年までに3割近くの人口減少が見込まれるなど、地方を取り巻く環境はますます厳しくなっていきます。地方を豊かにしなければ、ヒトの移動・交流は減少し、当社グループの持続的な成長は見込めません。何よりも、日本の魅力そのものが失われてしまうと思います。求められるのは、地域の皆さまと一体となって、持続可能で利便性の高い社会基盤を構築し、活発な交流を創り出していくことです。これは当社グループに課せられたミッションです。

ポイントは、ヒトとモノの交流をいかに創出していくか。これに尽きると思います。例えば、地域と一体となってプロモーション活動を展開し、訪日外国人旅行者を含めた観光交流の増加を図る。地元自治体などと連携し、秋田や新潟、青森などの地方中核駅を中心としたまちづくりを進める。当社グループだからこそできる地方創生を推進しなくてはなりません。

また、首都圏のみならず地方においても、Suicaの共通基盤化を進め、24時間いつでも、どこでも、当社グループのネットワークにつながり、多様なサービスを利用できる環境を実現していきます。それには、Suicaがまだ利用できない路線・線区への導入や、地域交通系ICカードとの連携強化、地域の小規模小売店などでも、Suica決済端末を導入できるようにするための工夫が欠かせません。こうした課題を解決すべく、現在、クラウド技術を活用したコンパクトかつ、安価なSuicaシステムの開発を進めています。つまり、Suicaを基盤として、「コンパクト&ネットワーク」化を進められるか否か。これが地方を豊かにするためのカギだと思います。

観光振興、地域活性化、輸送サービス変革、まちづくりなどにより、「コンパクト&ネットワーク」化を実現する。 画像

――地方の在来線など、生活交通ネットワークの再構築も課題になりますね。

急激な人口減少とともに、お客さまのご利用が極端に減少し、鉄道の特性を十分に発揮できない路線が増えていくことが予想されています。このような路線では、地域のニーズを十分に把握した上で、地域の皆さまと話し合いを重ねながら、バスやBRTといった他の輸送モードへの転換などを進め、利便性・持続性の高い生活交通ネットワークを再構築していく必要があると思います。

――「世界を舞台に」の目標について聞かせてください。

目指すのは、国際事業のビジネスモデルを確立し、アジアを中心に、より豊かなライフスタイルを提供していくことです。すでにバンコクの都市鉄道パープルラインにおける車両供給・メンテナンス事業や、英国ウェストミッドランズ旅客鉄道事業の運営などのプロジェクトを展開していますが、現在、最も力を入れているのが、インドのムンバイ〜アーメダバード間で進めている高速鉄道計画です。100名を超える当社グループの社員がデリー郊外のグルグラム(旧グルガオン)の現地事務所を拠点にコンサルティング業務を展開しており、順調に行けば、今年度に一部の工事を開始する予定です。

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海外プロジェクトへの挑戦は、社員の活躍のフィールドを拡充し、その力を伸ばすとともに、海外プロジェクトで得た経験を国内の事業・サービスにどんどん活かすことにより、さらなる「変革」につなげていくことが期待できます。今後も、車両納入やコンサルティングのみならず、オペレーションやメンテナンス、さらには生活サービス事業を含むグループの総合力を活かしたビジネスモデルを創造し、海外プロジェクトへの挑戦を加速していきたいと考えています。

対象各国のニーズに合わせて、輸送サービスと生活サービス等を組み合わせてパッケージで提供することにより、世界を舞台に、より豊かなライフスタイルを提供していく。 画像

*【MaaS】

「 Mobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)」の略語で、「移動のサービス化」を意味する。自動運転やAI、オープンデータなどを掛け合わせるとともに、従来型の交通・移動手段とシェアリングサービスなどを統合し、シームレスかつ最適な移動サービスを提供することを目指すもの。

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主役は社員

――「変革2027」では、高い数値目標を掲げています。その達成に向けたポイントを聞かせてください。

これからの10年間を見据えた変革に挑戦するために、中間点の5年後をターゲットとする数値目標を設定しました。その1番の特徴は、キャッシュ・フローの使い方にあります。安全投資を含めた維持更新投資に加え、品川開発プロジェクトなどの成長投資とイノベーション投資に重点を置き、今後5年間で3兆7,500億円の設備投資を行う計画です。

これらの投資により、当社グループの「信頼」を支える重要な基盤である鉄道を中心とした輸送サービス事業をハード・ソフト両面から質的に変革し、進化・成長させていきます。その上で、生活サービス事業やIT・Suica事業に経営資源を重点的に振り向けていきます。そして10年後には、連結営業収益をさらに伸ばすとともに、輸送サービス事業と、生活サービス事業およびIT・Suica事業の営業収益の比率を、現在の「7対3」から「6対4」にしていきます。生活サービス事業およびIT・Suica事業を新たな「成長エンジン」として確立するため、アグレッシブな挑戦を続けていきます。

鉄道を中心とした輸送サービスを質的に変革し、進化・成長させていくことが喫緊の課題である。生活サービス事業及びIT・Suica事業に経営資源を重点的に振り向け、新たな「成長エンジン」としていく。 画像

――株主還元や有利子負債に対する考え方も大きく変わりましたね。

株主還元については、これまでは総還元性向33%を目標としてきましたが、中長期的には、総還元性向は40%を目標とし、配当性向は30%を目指していきます。経営環境や業績の動向を見ながら、中長期的な目標達成に向けて取り組んでいきます。

有利子負債については、これまでは2020年代中に連結有利子負債残高を3兆円とすることを目標に毎年一定額の債務削減を続けてきましたが、今後は債務返済能力を考慮して、連結営業収益、利益に応じた連結有利子負債残高としていきます。これは、現在の変化の激しい経営環境に適したものと考えています。

――「ESG経営」にはどのように取り組んでいくのでしょうか。

私たちは、「変革2027」の達成に向け、国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」も念頭に置き、「ESG経営」を実践し、事業を通じて社会的課題の解決に取り組み、地域社会の持続的な発展に貢献していきます。これらの取組みを通じ、お客さまや地域の皆さまからの「信頼」を高め、当社グループの持続的な成長につなげていきます。

具体的には、企業統治の観点から、安全がグループの経営のトッププライオリティであることをグループ全社員の共通認識として徹底し、「究極の安全」に向けた実践的な取組みをグループ一体で推進します。また、環境変化に合わせて、継続的にリスクを抽出・評価し、対策を講じてリスクを低減するとともに、現場第一線の社員との密接な意思疎通を通じてグループ内の実態を踏まえた施策を展開することなどによりコンプライアンスの徹底を図ります。

代表取締役社長 深澤祐二 画像

その上で、様々な社会的課題の解決に向けて、鉄道の遅延防止や混雑緩和などのサービス品質改革に不断に取り組むほか、子育て支援や多様なお客さまへの対応、国際鉄道人材の育成、文化活動への支援などを推進します。そして、鉄道事業の2030年度環境目標である「エネルギー使用量25%削減」および「CO2排出量40%削減」(ともに2013年度比)の達成に向けて、「省エネ」「創エネ」の観点から新技術を導入し、地球温暖化の防止に取り組むとともに、水素エネルギーの利活用など、エネルギーの多様化を図ります。

―企業は人なりといわれます。「変革」を実践するためにも、社員の奮闘努力が欠かせませんね。

そうです。「鉄道」起点から「ヒト」起点への転換を実現するためには、主役である社員一人ひとりが「変革」のマインドを持ち、「心豊かな未来」の実現に向けた積極果敢な挑戦を続けねばなりません。そのために、社員一人ひとりに、仕事を通じ自分の夢を実現するんだという意欲を持たせられるかどうか。創意工夫を積み重ねながら、思う存分に活躍できるフィールドを拡大し、働きがいを創出できるかどうか。これは「変革」の実現に向けて、われわれマネジメント層に課せられた使命だと思います。

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