初期臨床研修プログラム(平成30-31年度)

プログラムの名称

本プログラムの名称をJR東京総合病院医師卒後臨床研修プログラム(平成30-31年度)とする。

研修の理念と目的

医師の卒後臨床研修必修化に当たっては、1)医師としての人格を涵養し、2)プライマリケアの基本的な診療能力を習得するとともに、3)アルバイトせずに研修に専念できる環境を整備することを基本として制度が構築されてきた。当院での初期臨床研修においては、患者さまの病態生理に基づいて適切な治療方針を決定するという医師としての大原則を身につけるとともに、これを患者さまに説明しながら医療を進めて行くという基本姿勢を涵養する。また幅広いプライマリケアと2次救急レベルの対応能力を身につけ、各疾患の理解を深めて最善の全身管理ができるようになることを目標とする。

臨床研修病院の区分

当院は、医師法第16条の2第1項に規定される基幹型臨床研修病院として、他の病院、施設と協同して臨床研修の場を提供し、プログラムを管理する。
また、協力型臨床研修病院として、他の基幹型臨床研修病院のプログラムの研修医を受け入れる。

  1. 1当院プログラムの定員は毎年度7名である。
  2. 2東京大学医学部附属病院(東大病院)の協力型臨床研修病院として、5名を東大病院の研修プログラムより受け入れるので、実際には毎年12名で臨床研修をおこなう。

研修プログラムの内容

本プログラムは、厚生労働省:新臨床研修制度の基本設計(2002年9月4日)及び医師法第16条の2第1項に規定する臨床研修に関する省令の施行についての一部改正について(2009年5月11日)の基準に沿い、当院臨床研修管理委員会下に管理され、研修期間は2年である。

救急総合診療科

将来自分が専門とする診療科以外の知識も含めた幅広いプライマリケア、総合診療能力を習得するために内科、外科に加えて救急総合診療科の研修を必修とし実地できめの細かい教育を行い救急で入院させた症例の入院後のフォローも含めた研修をしている。これにより日当直業務に自信をもって従事できるようになることを目標とする。当院は2次救急指定病院であり、軽症から重症まで幅広い疾患を経験できる環境であり1年目は麻酔科と救急総合診療科をあわせて3か月間、2年目は救急総合診療科を2か月間研修する。

各科の研修内容:
各科の研修内容は研修医がさまざまな手技を経験し専門知識を効率よく学べるように工夫されている。また熱意と努力次第では専攻医並みの手技も上級医の見守りの下で経験することが可能である。 講義・講習会 基本的に必要となる手技・疾患の理解等に関しては、別途後述の「手技講習」「講義」を開催する。

1年次

内科6ヶ月、外科3ヶ月、救急部門(救急総合診療・麻酔)3ヶ月のすべて必修科目から構成される。
内科は、脳神経内科、糖尿病・内分泌内科、循環器内科、呼吸器内科、消化器内科、血液・腫瘍内科/リウマチ・膠原病科の6部門を6ヶ月でローテートする。
外科は、消化器外科/乳腺外科、心臓血管外科/呼吸器外科、整形外科の3部門を約1ヶ月毎に3ヶ月でローテートする。
本研修プログラムでは内科6ヶ月、外科3ヶ月の必修科目にあたる科に脳脊髄神経外科を加えたものを内科、外科と定義する。

※救急部門(救急総合診療・麻酔)での3ヶ月間では、2次救急レベルの救急対応、プライマリケア、挿管・全身管理等に関する知識と手技の修得を目的とする。
全ての時間外患者に対応できるよう、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科、泌尿器科、小児科の診察法と簡単な処置法の講習を受ける。

研修ローテーションとしては内科、外科、救急部門(麻酔・救急)をそれぞれ3ヶ月1ブロックとし、すべての研修医が研修期間の前半で必ず内科を経験できるように配置する。

【例】

グループ(A):1年次

4月-6月 7月-9月 10月-12月 1月-3月
内科 外科 内科 救急部門(麻酔・救急)

グループ(B):1年次

4月-6月 7月-9月 10月-12月 1月-3月
内科 救急部門(麻酔・救急) 内科 外科

グループ(C):1年次

4月-6月 7月-9月 10月-12月 1月-3月
外科 内科 救急部門(麻酔・救急) 内科

グループ(D):1年次

4月-6月 7月-9月 10月-12月 1月-3月
救急部門(麻酔・救急) 内科 外科 内科

2年次

全人的な幅広い診療能力を培い、救急プライマリケアと患者の全身管理ができるようになるという当院の初期臨床研修の理念・目的に鑑み、救急総合診療科と内科、外科(内科、外科の定義に関しては1年次参照)を中心として研修を行う。また幅広い研修を行うとの観点から1診療科を選択する期間は合計で2ヶ月までとする。
科目選択においては研修医の希望を最大限に尊重するが、研修理念に沿った研修内容になるように、また一時期に同一診療科に複数の研修医が集中しすぎないよう最終的に臨床研修管理委員会が指導、調整を行う。

必修科目:
必修科目である地域医療研修は渋谷区医師会プログラム、JR仙台病院(2名まで)、いずれか1箇所を選択して1ヶ月間行う。また、2次救急対応・プライマリケアにおける十分な知識と技術を習得するために2ヶ月間の救急総合診療科研修を行う。

選択科目:
2年間で基本的な全身管理ができるようになることを目的とし、2年次においても1年次に必修となっている内科、外科にある程度の重点を置いて研修を行うこととする。したがって、精神科、臨床検査科(病理)、皮膚科、耳鼻科、眼科、泌尿器科、放射線科、形成外科、リハビリテーション科、小児科、産婦人科の選択科目の研修期間はあわせて4ヶ月以内とする。ただし選択必修科目として小児科、産婦人科、精神科の3科のうち少なくとも1科で1ヶ月以上の研修が必要である。

研修プログラムの一環として以下の業務を行う。

  1. 1夜間および休日休診日当直:常勤医の指導下で研修医当直を行う。
  2. 2防火、防災、消防等の災害医療訓練に参加する。
  3. 3臨床研修管理委員会の指定する講演会、講習会、研修会、オリエンテーションなどに参加する。

本プログラムによる具体的到達目標

臨床研修管理委員会は、厚生労働省臨床研修病院基準に則り以下の到達目標を設定する。当院が特に重視する点は以下のとおりである。

行動目標

  1. 1患者さまに対する臨床医として必要な基本的態度とマナーの習得
    すべての患者さまに対して自分の肉親に対する気持ちで接するとともに、職業的な冷静さを失わずに行動する。また、患者さまの多くが人生の先輩であることを銘記し、しかるべきマナーをもって診療にあたり、過剰な保護者的態度は排する。医療者として常に清潔な身だしなみを保つ。
  2. 2チーム医療に参加できる適応性、協調性の習得(他の医師、看護師、技師、薬剤師、事務職員、地域の医療施設)
    公正、真摯、礼儀正しさなどの徳目を身につけ他職種に対する理解に基づいた協調能力を身につける。
  3. 3問題対応能力
    的確に問題点を把握し、それに対して指導者、上級医に質問する、文献などを調べるなどの勉強を続けて行く。このような真剣な診療を通じて問題解決能力が養われる。
  4. 4安全管理能力
    当院では医療安全管理委員会、院内感染対策委員会等の医療の安全に関連する各種委員会が組織され、院内外の情報を常に提供している。これらの情報を把握し、かつ積極的に各委員会に協力し自らも問題意識をもって日々の診療にあたることが必要である。
  5. 5医療面接
    本人、家族からの病歴や生活背景の聴取をして診療に役立てること、病態に基づいてわかりやすく病状の説明、手術や侵襲的検査前の説明と承諾の確保が行えること、さらにそれをカルテに明快に記載し、医療チーム全体の知識として共有できるようにすることが必要である。
  6. 6診療計画
    1年目の研修では上級医がどのような根拠に基づいて診療計画を決定するかを十分に学習し、各疾患の治療ガイドラインの実際の運用に習熟するとともにその実施において有効性を確認する。
    2年目の選択科目では、診療計画を自ら提案し、指導医の了承下に実施できることが必要である。
  7. 7病歴及びその他の医療に関連する文書を作成する能力
    医師の業務に付帯する公文書作成業務は、法律により医師に付与されたものである。病歴、退院時概要、診療情報提供書、種々の診断書等を正確、迅速に記載することは極めて重要である。常に公開を前提として記載する必要がある。
  8. 8医学文献の読み方と検索方法の習得及び症例や研究を発表する能力の訓練
    医学、医療の情報を正確、迅速、公正に入手するため、図書館の利用法、学会の利用法、インターネットの利用法を習得し、批判的に論文を読むための訓練を抄読会、輪読会出席を通じて学ぶ。院内のCPC、各種カンファランス、医学講演会に出席し、また指名されれば発表を行う。
  9. 9医療行政、予防医学の理解
    厚生労働省など医療行政の動向を注視するとともに予防医学についても理解を深めることが必要である。

経験目標

  1. 1基礎的診療能力
    • 症候学、身体所見の取り方、病歴聴取法は医学校でも指導は受けていると考えるが、診察において最も重要な点であるが上級医を見習ったり直接指導を受けて常に向上させる必要がある。本プログラムでは、診療時に簡単な眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、婦人科、整形外科的診察を行えること、小児科の診察ができることを目標に加える。また超音波診断をすべての研修医が行えるようにする。
    • 各種臨床検査、画像診断の適応と解釈も日々勉強する必要がある。
      本プログラムでは検体(静脈血、動脈血、胸腹水、カテーテル尿、髄液、骨髄、関節液等)を確実、安全に採取できることを目標とする。
      2年目の選択科目では臓器生検、種々の血管造影法や内視鏡検査法を指導医の監督下で経験することを目標とする。
    • 基本的治療手技
      CPR、気管内挿管、人工呼吸器使用、除細動、中心静脈ルート確保、各種体腔ドレナージ、胃管及びイレウス管挿入、血液透析法、血漿交換法、輸血管理、輸液管理等を経験し、独力でも行えるようにする。また外科では開創、閉創を数例経験して、切開・排膿、皮膚縫合などの基本的外科的処置を学ぶ。救急医療に必要な整形外科的処置(整復、固定など)を経験する。
      2年目の選択科目の外科系では簡単な手術を指導医の監督下で執刀できることを目標とする。
      2年目の内科系では体外ペーシング、治療的胸腔ドレナージ、各種ステント挿入、消化管内視鏡下処置、気管支鏡検査、末梢血造血幹細胞採取などを指導医の監督下で経験することを目標とする。
    • 指導医、専門医の指導、助言を的確に要請できる能力を獲得する。
    • 疾患や病態の診断と治療計画を指導医とともに患者さま及び関係者に適切に説明し、文書で確認できるようにする。
  2. 2本プログラム中に経験すべき疾患
    上記ローテーション中に厚生労働省の定める臨床研修の到達目標で必修項目とされる症候、病態、疾患を経験する。このために担当患者さまの調整を指導医が行う。

到達目標達成のために

1年目の研修期間を通じて毎週1時間の研修時間を設け、外来または病棟で以下の初期或いは緊急の診療手技の講習を行う。また1年目で必須とされていない専門領域ではあるが当直業務に必須な診察法や簡単な処置法の講義を行う。担当診療科はカッコ内である。

手技講習

腹部超音波検査 (消化器内科、外科)
心臓、胸腔超音波検査 (循環器内科、呼吸器内科)
甲状腺、脈管超音波検査 (放射線科、心臓血管外科)
婦人科、泌尿器科超音波検査 (産婦人科、泌尿器科)
脳血管障害の画像診断 (脳神経内科、脳外科、放射線科)
気道確保、気管内挿管 (麻酔科、呼吸器内科)
人工呼吸器使用法 (麻酔科、呼吸器内科)
心マッサージ (麻酔科)
除細動 (麻酔科、循環器内科)
中心静脈穿刺法 (麻酔科)
小児の輸液ルート確保 (小児科)
胃管挿入と管理 (消化器内科、外科、呼吸器外科)
イレウス管挿入と管理 (消化器内科、外科)
導尿法 (泌尿器科、産婦人科)
血液型判定と交差適合試験 (血液・腫瘍内科)
骨折、脱臼の診断と治療 (整形外科)
局所麻酔法、消毒法、切開排膿法 (外科)
熱傷の治療 (形成外科、皮膚科)

講義

眼科的診察法 (眼科)
耳鼻咽喉科的診察法 (耳鼻科)
小児診察法 (小児科)
精神科領域のエマージェンシー (精神科)
血液領域のエマージェンシー (血液・腫瘍内科)
内分泌領域のエマージェンシー (糖尿病・内分泌内科)
皮膚科領域のエマージェンシー (皮膚科)

指導体制

臨床研修管理委員会

院長、プログラム責任者、協力型臨床研修病院及び協力施設の研修実施責任者、院長の指名する院内委員、院長の委嘱する院外委員及び事務の責任者で構成される。

研修管理委員会委員長 : 副院長 遠藤 勝久
研修管理委員会副委員長(プログラム責任者) : 副院長 杉本 耕一
プログラム副責任者 : 医師 奥山 伸彦
事務責任者 : 事務部長 岩井 稔

指導医

指導医は臨床経験7年以上で、プライマリケアの指導を充分行える能力と意欲を有する当院常勤医より、臨床研修管理委員会が任命する。また、スーパーバイザーチームは、研修が有効に行えるようチューター及び指導医に情報提供する。

研修プログラム協力施設

渋谷区医師会、およびJR仙台病院

研修の記録と評価法

臨床研修管理委員会は、指導医、研修医を対象に目標達成の成果を評価する。研修医の評価は、スーパーバイザー及び指導医の意見を重視し、各研修医の病歴概要、CPC記録、各種カンファランス記録、院外学術集会発表記録、カンファランス、セミナーの出席率を基にオンライン卒後臨床研修評価システム(「EPOC」)に記録する。

プログラム修了認定

研修医の到達度の評価に基づき、臨床研修管理委員会の承認を得て、院長がプログラム修了認定証を発行する。

研修医の処遇

JR東京総合病院の規定による報酬が支払われる。社会保険等は厚生労働省の規定による。単身者は、希望により東日本旅客鉄道株式会社の独身寮へ入居できる場合がある(但し、入寮の許可要件を満たしている場合に限る)。
研修プログラム交流のため研修協力病院で研修する期間においては、当該病院規定による報酬と処遇がなされる。

研修終了後の進路

専門診療科を目指す卒後3年以降の後期臨床修練プログラム(専攻医)への参加者募集は本研修プログラムとは別に行う。

研修医の募集と選抜

毎年募集要項と処遇を当院ホームページに公表し、また請求に応じて募集要項を郵送する。医師臨床研修マッチング協議会からも当院の情報を得ることができる。
応募者に書類審査、筆記試験、面接試験等を行い、研修医マッチング(組み合わせ決定)を通じて採用決定する。
平成30-31年度プログラムの定員数は7名で当院にて選抜採用する。

連絡先

〒151-8528 東京都渋谷区代々木2-1-3
JR東京総合病院 臨床研修管理委員会(事務部総務課内)
電話:03-3320-2204  FAX:03-3320-2265
E-mail:06jinji@jreast.co.jp