ほくろ
皆さんも鼻の脇や眉のそばに大きな「ほくろ」がある人を見かけたことがあると思います。
私などは職業柄、簡単に綺麗に取れるのに何で取らないのだろうと思ってしまうのですが、人によってはそれが気に入っている方もいるのでしょう.。
顔面の盛り上がった大きな「ほくろ」は目立ちますから、それを取ったらイメージが大きく変わります。中には「運命が変わってしまうのでいじらない」という方もいるようです。
私は易学は信じませんが、もし取ったらその人の運勢は良い方向に変わるのではないかと思うのですが。

「ほくろ」は正式には「母斑細胞母斑」といいます。
ただし、一般に「ほくろ」と呼ばれるものには実際は母斑細胞母斑以外のものも結構あるのですが、ここでは母斑細胞母斑の治療についてお話します。

先ず、その正体なのですが、メラニンという黒い色素を作る細胞(メラノサイト/母斑細胞)の集まりなのです。
ですからほくろは黒いのです。でもほくろであっても色の違いがありますよね。
それは主に存在する色素の量と細胞の集団のいる深さで外観の色が違って見えるためです。

さて、実際の治療の話に移りましょう。
治療方法は、とりあえずは「切り取って縫う」のが基本だとお考えください。
「メスで切る」、「縫合する」と聞くと非常に抵抗を感じる方も多いと思います。特にほくろが顔にあったりすれば余計にそう感じてもおかしくありません。
巷には種々の治療方法の情報が溢れています。「切って縫われる」よりもっと簡単で綺麗に取る方法があったとすれば、それに飛びつくのもうなずけます。
例えば「レーザー」です。ほくろ除去にレーザーを使うことは多くの施設で行われています。
「レーザー」と聞くとハイテクのイメージがあって、いかにも跡形も無くほくろを消し去るかのような印象を受ける方も多いでしょう。実際にそういうイメージを狙った宣伝も目にします。
けれども残念ながらそのイメージは錯覚なのです。宣伝する方もそういうことは計算の上だと考える必要があります。

ほくろを除去するためには母斑細胞の集団を取り去らなくてはなりません。母斑細胞は真皮に存在しているのですが、母斑細胞を取り去ると真皮に欠損が生じます。
真皮に欠損が生じると言うことはすなわち「傷跡が残る」と言うことなのです。
ほくろの除去は真皮を一部取り去ることになるわけですが、その方法の違いが治療方法の違いとなるわけなのです。

メスでは文字通り刃物で切り取ることになります。それに対してレーザーは焼き払ってしまうのです。
二つの結果はどうちがうのでしょうか?
それは切り傷の跡とやけどの跡ではどちらが綺麗な傷になるかを考えてみればすぐに判断できると思います。
一見大げさに感じる切除・縫合が、結果的には皮膚にやさしい治療方法なのです。

さらにレーザーに対して切除・縫合が優れている点は、切り取った組織を検査できることです。
始めにお話しましたように「ほくろ」といっても組織学的には母斑細胞母斑以外の診断がつくことも稀ではないのです。
稀には悪性の場合もあります。悪性のほくろは「悪性黒色腫」といって非常にたちの悪い癌で命を落とすことも多い疾患です。
レーザーなどで焼き払ってしまった場合、組織の検査はできません。もちろん完全に元の組織が除去されていれば、たとえそれが悪性のものであっても大丈夫なのですが、一部にほんの少し残っていたりすれば、それこそ「命取り」です。
そもそも「悪性」とは単純には除去できないから悪性である所以ですから。
レーザーでほくろの治療をする場合、多くは傷が目立たないということをアピールしていますので、どうしても照射範囲を狭くしがちです。そうなると「取り残し」が高率に発生することになります。

私は別にレーザー治療を一方的に悪く言うつもりはありません。
メスでの切除・縫合が難しい小さなほくろがたくさんある場合などはレーザーや電気焼灼のほうが効率が良いですし、小さいものだあれば傷跡も目立ちませんのでそういったやり方もアリだと思います。(もちろんそのうちのいくつかは切り取って組織検査に出すべきですが。)

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