「元々この栃谷戸公園は、八王子ニュータウン事業の一部として周辺の住宅と一緒に開発されました。自然のままの雑木林をそのまま生かし、開けた部分には芝生が植えられていました。谷戸と底の部分には、調整池が設置されています」
そして公団主導のもと、みなみ野自然塾が発足しました。そのころから芝生だった部分を畑や田んぼへと生まれ変わらせるなど、公園内に昔ながらの里山の風景を甦らせる取り組みを行っています。発足5年後の2002年には市民団体として独立。時を同じくして任意の団体が公園の一部を活用できる公園アドプト制度が八王子市に施行され、適用第一号となりました。現在では20人ほどのスタッフと100名ほど塾生がいるそうです。参加するのは、とても簡単。掲示板やホームページを見て、活動日に現地集合して「入塾希望」を伝えるだけ。とても開かれた団体なのです。
取材の日はあいにくの雨模様でしたが、数名の方が公園で育てている枝豆の収穫を行っていました。 |
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「地元の企業にも法人会員になっていただいています。その企業にお勤めの方が、ご家族連れで芋ほりに参加されたりするんですよ」
住民と企業が、普段着で交流できる場所として、みなみ野自然塾は機能しているのです。 |
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「雑木林が昔のままの姿でしっかり残っているので、野生のウサギやタヌキ、野鳥などもやってきます。もともとこの公園を設計した公団の方たちの考え方が素晴らしかったのだと思います。ここにまた、いずれは作物を植えてもらいたいと考えていたようで、なだらかな丘ではなく段々畑のような形にして芝を植えてくださっていました。みなみ野自然塾が独立したときに、一段ずつ芝生をひっくり返し、土の改良を行い、今のような畑にしていきました。人手が増えれば、下のほうの段々も畑にしたいと思っているんですけどね。今は、公園のそばに住むスタッフがいて、その方は農家で修業をされたことがあるので、それを生かして毎日畑の世話にきてくれています。そうしたスタッフの力があって、この規模の畑をきちんと維持できているというのが現状です」 |
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畑にはトマトやナス、大きなかぼちゃのほかにサツマイモ、サトイモなどが植わっています。段々畑を降りていくと、その下には水田の中に稲穂がすくすくと育っています。
「畑と田んぼの一部は、地元の小学校が校外学習で使っています。みなみ野自然塾が管理の一部をお手伝いしていますが、それでも天候によって生育が遅れたり、不作だったりということがあります。自然を相手にすると、思った通りにならないこともあると知ることも教育の一環になっているのではないでしょうか。」 |
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今後は雑木林の手入れにも力を入れていきたいと考えているそうです。
「公園の木々はすでに萌芽(ほうが)更新の時期を過ぎてしまい高齢化しているのですが、いっぺんに萌芽更新を行ってしまって失敗をしたら取り返しがつかなくなってしまいます。50年後、100年後に雑木林を残すことが大切ですから、古くからこの里山に住んでいる経験豊富な年長者にアドバイスをいただきつつ、林の様子を見ながら慎重に作業を進めているところです。それと宇津貫(うつぬき)緑地に生息するホタルの生育数にも毎年一喜一憂しますね。何とか種を絶やさないように、知識を積み重ねて、見守っていきたいと思います」 |
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街が育っていくと、そこに住む人たちもつながり、お互いに成長をしていきます。その市民たちの手によって、公園もどんどんと進化を遂げていきます。そんな様子を見守り続けていくことこそが、みなみ野自然塾の理想なのです。 |