「江戸東京たてもの園では、平成8年ころから園内の茅葺(かやぶき)屋根の建築物内で囲炉裏(いろり)の燻煙を行ってくれるボランティアを募集し始めました。ちょうどミュージアム・ボランティアという活動が一般的に知られるようになり始めた時期です。第一回目の募集では20名ほどの方が集まりました。仕事をリタイアされた年配者がほとんどで、子どものころの体験をここで再現している方が多かったですね」
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ボランティアのみなさんは、ひじろ会と呼ばれています。ひじろとは、囲炉裏を意味する多摩地方周辺の方言のこと。年度を重ねるごとに応募する人が増え、定時と団体客向けのガイドなど、活動内容も多岐に渡るようになりました。中でも注目を集めたのが『昔遊び』でした。『昔遊び』とは、名前の通り昔ながらの遊びを再現することで、風車作りやベーゴマ遊び、それ以外にも草履編みなどを子どもたちに披露したり、教えたりしたのです。 |
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「いくら貴重な建物とはいえ、見学をするだけでは飽きてしまうお子さんが多かったんですが、『昔遊び』の実演には大喜びしてくれました。作った風車を持って子どもたちが園内を歩いているだけで、他の来園者からも注目を集め、人が人を呼ぶ効果もあったようです。しばらくすると園内の空き地で、ベーゴマを始める人が集まるようになりました。こちらが組織を作ったのではなく、来園者の間で自然とコミュニティが生まれたのです。そのうちにベーゴマだけではなく、輪回しや竹馬、羽根つきなど、行われる遊びも広がりを見せ始めました。自然発生的なコミュニティでしたので、ひじろ会はあえて主導することはせずに、見守るという役割に徹していました」 |
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そうした中で、今度はその『昔遊び』に地域の子どもたちを参加させようという試みが始まりました。平成13年のことです。夏休みの間、子どもたちにボランティアという形で、『昔遊び』に参加してもらうことになったのです。当初は地元の教育委員会と連携を取って、そこから小学校を通じて募集を行っていました。
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「子どもたちには、園内にある民家の掃除と『昔遊び』の指導をお願いしました。指導というと難しそうですが、要するに率先して遊んでもらうことです。そのスタイルは現在でも変わらず、現在でも夏休みごとに小学校3年生から6年生までの子どもを60名募集しています。大人たちのひじろ会に対し、子どもたちはひじろっ子と呼ばれています」 |
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ひじろっ子のボランティアはとても人気があり、現在では期間中5日以上通える子供ならば地域を限定せずに募集を行っています。中には夏休みの間、ほぼ毎日通ってくる子や、毎年応募してくる子も増えているそうです。
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「来園するお客様に対して何かしてほしいというよりも、子どもたち自身で感じたものをひじろっ子たちには大切にしてほしいですね。ひじろっ子というボランティア体験を通して『博物館って面白いんだ』と感じたり、『いろいろと守っていかなければいけないものがあるんだ』と思ってもらえれば」
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ひじろっ子が誕生したときに活躍した子どもたちは、現在高校生や大学生になっているそうです。後輩たちの活躍ぶりが気になって、様子を見に来た子もいるそう。
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「長い目で見た人材育成も、博物館が果たさなければいけない大きな役割のひとつではないでしょうか。子どもたちは、次の時代の文化の担い手です。ひじろっ子を経験した子どもたちの中から、そうしたリーダーシップを発揮してくれる人材が育ってくれることを期待しています」
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